XII
絶叫と共にザンザスは氷漬けにされた。隣のスクアーロはここから出せと騒いでる。私はもう、放心状態でただ立ってることしか出来なかった。
でもまだ終わってはいないらしい。ベルフェゴールとマーモンが全ての指輪を揃え、ザンザスの氷を溶かした。虚ろな目で指輪を求めるその姿に鳥肌が立つ。
これで、ザンザスの、ヴァリアーの、私達の勝…
「がはッ!!!」
え…?
指輪をはめて、血を吐いた。指輪がザンザスの血を拒んだ…?何それ…
「俺は老いぼれと血なんか繋がっちゃいねぇ」
そこから語られる事実。スラム街、ゆりかご、養子…ザンザスに関する事がスクアーロ、沢田の少年から語られる。マフィアに血の繋がりが必要…?なんで、なんでよ…マフィアなんてたかが人殺し集団でしょう?認めるとか認めないとか、そんなの…
「9代目が…裏切られてもお前を殺さなかったのは、最後までお前を受け入れようとしてたからじゃないのか…?9代目は血も掟も関係なく、誰よりお前を認めていたはずだよ。9代目はお前のことを本当の子供のように…、」
「っるせぇ!!気色の悪い無償の愛などクソの役にも立つか!!俺が欲しいのはボスの座だけだ!カスは俺を崇めてりゃいい!!俺を讃えてりゃいいんだ!!」
その言葉に、その声に、冷めていた身体が、また熱を帯びる。
「叶わねぇなら道連れだ!!どいつもぶっ殺してやる!!」
「XANXUS様!」
「大さんせーだボス、やろーぜ」
「当初の予定通りだよ」
ベルフェゴールとマーモンがそれぞれ臨戦体制に入る。…そうだ、シナリオは少しズレたが私は私に課せられた仕事をしないと…まだ終わりじゃない。
「てめぇ見えてねぇのか?2対5だ!!分が悪いのはそっちだぜ?」
さりげなく、気配を断って、
「2対5?何の事だい?君達の相手はこの何十倍もの戦力だ。総勢50名の生えぬきのヴァリアー隊がまもなくここに到着するのさ」
「!? 何を言っている!」
普段しない腕時計をいじる。外のダイヤルを回して、デジタル画面に…"ON"の文字が映る。
「ボスは勝利後に連中の関わりある者全て片付ける要員を向かわせておいたんだ。僕らの次に戦闘力の高い精鋭をね」
観覧席は皆画面に夢中だ。腕時計から出る妨害波で赤外線を突破する。少しずつ、少しずつ…スクアーロが気付いた。でも周りは気付いてない。
「お、お待ちください!!対戦中の外部からの干渉はみとめる訳には…、
「うるせぇよ」
私が檻から出たと同時に、ベルフェゴールがチェルベッロを一人殺った。
「待て!そっちがその気なら俺達がツナ側で応戦するぜ!ここから出せコラ!」
「この場合文句はないはずだ!」
ああまずい。急がないと。今度は逆方向にダイヤルを回す。デジタル画面には"髑髏"が浮かんだ。横のボタンを押す。
「…分かりました。それでは、ヴァリアー側を失格とし観覧席の赤外線を解除します」
「いくぜコラ!」
「…待て、解除されてねーぞ」
「ウイルスで、プログラムを破壊しましたから、出れませんよ」
「なっ!!」
「…意外とちゃっかりしてんな、おめぇ」
赤ん坊は赤外線スコープをつけたままこちらを見る。私が外に居ることに気付いたんだろう。横目でこちらを見ているスクアーロに会釈をして走り出した。
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