XI
「カスは俺を崇めてりゃあいい!!」
「施しだ!!!」
「これが大空だ!!」
圧倒的なカリスマ性を、ザンザスは持っている。帝王、とでも言うのだろうか。あぁ、誰もこの人には敵わない。
「沢田殿!!!」
でも、
「…なんだ、あの炎は?」
「ツナのやつ、やる気だな」
沢田少年の、あの目は何?なんでそんなにキラキラしてるの?怖くないの?巨大な悪魔が目の前に居るのに、どうして命ごいしないの?
「…っ」
左手にしている腕時計を、右手で握り締めた。
私はこんなにも、汚れているのに。自分の命が惜しくて、もう戻れないとこまで来てるのに。
どうして君は、そんなにも輝いているの?
少年に降り注ぐザンザスの怒涛の攻撃に、少し心が和らいだ。
「この俺がまがいものの零地点突破ごときに…あんなカスごときに…くそが…ド畜生がぁ!!!」
圧倒的な存在感。そしてザンザスの顔に、火傷の古傷が浮かび上がる。ゆりかご事件?8年前?そんな単語が聞こえる。でも、知らない。私はただ、平然を装い…立っているだけ。
「あれは怒りだぁ…」
そして聞き覚えのある声が聞こえた。
「これはスクアーロ様、ご無事だったんですね」
「犬か、てめぇも来てるとはなぁ…」
赤外線の檻に車椅子で登場したボロボロのスクアーロ。頭にはキャバッローネの部下達によって拳銃が突き付けられていた。
「いいぞぉ…その怒りがお前を強くする。その怒りこそがお前の野望を現実にする力だ。その怒りに、オレは憧れついてきた」
怒りに憧れる。この間までの私にはわからない感情だ。…でも、今なら、わかる気がする。
少年達は真っ直ぐだ。皆がみな、汚れを知らない、真っ白だ。もし、私が落ちたのが少年達の方なら、まず間違いなく私は真っ当で平凡な人生を歩めただろう。でも私を拾ったのは暗殺部隊のボス。人の命がちっぽけなものに感じてしまうくらい、ゴミの様に人が死んでいく日常。生き抜くことに必死だった。生きる為なら何でもやった。書類上で死んでいく人、目の前で命ごいをする使用人、制裁で殺された一般隊員。全てを見殺しにし、生き抜いていく。
気が狂う暇さえない日常のお陰で、私は今、イキテイル。あの人の絶対的なカリスマが、私を生かしてる。
「俺は名にXの称号を二つもつ男XANXUS!!てめぇごときに屈すると思うか!?勝つのは、ボンゴレ10代目は…このオレだッ!!」
「…いくぞ、死ぬ気の零地点突破Tエディション」
私はまた腕時計を握り締めた。
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