ナイフ | ナノ






不思議だった。
血だらけのおじいちゃんがモスカから崩れ落ちても、一度心臓が波打っただけで、気持ち悪い程平常心を保ってた。

不思議だった。
絶望的な顔をした沢田少年を見たときに、予想していた罪悪感が来なかった。

「誰だ?じじいを容赦なくぶん殴ったのは」
「誰だ?モスカごとじじいを真っ二つに焼き切ってたのはよぉ」

私の仕事は終わった。ザンザスはシナリオ通りに言葉を並べていく。モスカごと焼き切る…モスカに9代目を閉じ込めてた時点で問題のような気はするけど。

「9代目へのこの卑劣な仕打ちは実子であるXANXUSへの、そして崇高なるボンゴレの精神に対する挑戦と受け取った」
「っな!?」
「しらばっくれんな!9代目の胸の焼き傷が動かぬ証拠だ!ボス殺しの前にはリング争奪戦など無意味!!オレはボスである我が父のため、そしてボンゴレの未来のために、貴様を殺し、敵を討つ!」

まるで正義の味方みたいな言い草だ。真逆にもほどがあるのに。

「…XANXUS、そのリングは返してもらう。お前に9代目の後は継がせない」
「ボンゴレの歴史に刻んでやる。XANXUSに楯突いた愚かなカスがいたとな」

双方が武器を取り、臨戦体制になった。私も構えた方がいいのかと、ホルダーからナイフを触れば、チェルベッロから制止がかかる。…最終決戦は大空で。

指輪を半分器用に指で弾き、光る炎で目くらまし。どうやら機嫌の良いザンザスにまたもや運んで貰って屋敷に着いた。

「肉だ」
「フィレで宜しいですか」
「………」

無言は肯定。急いで調理室に向かい肉を調達。…何も飛んで来ない。やはり機嫌は良いらしい。

「明日で終わりだ」

幹部が集まる談話室でザンザスの声が響く。空になったグラスにウイスキーをついだ。

「全てを根絶やし、カスどもを消す」

同時に投げられた真っ白のCD。

「てめぇの仕事だ。できなきゃ、
「殺す、」
「わかってりゃあいい。下がれ」
「はい」

談話室から執務室に移動。レビィに睨まれた。私物化したソファーからパソコンを引っ張り出して、中身を確認。

「…またか」

面倒な奴らは皆殺し。また殺しの下準備係。

でも、全然心が痛まなくて、自分変わったなぁって他人事の様に思った。



「ちゃおっす」
「こんばんは、リボーン殿」

大空戦が始まり、観客は全て校舎裏の一角に集められた。今回は私もそこに居る。

「この間の続きをしに来たぞ」
「続き、ですか。しかし私にはもう話すことなどありません。もしあったとしても、あなた方に話したとあればザンザス様に殺されますから」
「俺が殺すとしてもか?」
「貴方の教え子は優しい綺麗な方ですからね、殺しを容認するとは思えません」
「…なるほどな」

モニターを見れば、銃を取り出してまるで遊んでる様子のザンザスと、手に炎を宿して懸命に戦っている沢田少年が映る。あの銃の威力を見れば、いつもの普通の弾丸がかわいく思えた。

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