ナイフ | ナノ


VIII



特別処置だなって改めて思った。作戦はもう立ててあって、道具を用意してあって、あとは微調整して本番。何と言うお膳立て。これは成功させなければ私が死ぬ。

嵐の争奪戦はベルフェゴールが勝った。傷だらけだったが指輪は離さなかったとか、執念だ。

今夜は雨。スクアーロだ。あの人が来ると絨毯がワインで汚れるという方程式があるから面倒なんだよね。とか思いつつモスカの調整を行う。…この中に9代目とか言う人がいる。顔を知らなくてよかった。きっと知ってたら、これは出来なかった。

今回はモスカに乗って初観戦。え、学校でやんの?え、鮫?どうしよう、意味がわからない。つーか校舎に水?雨だから?馬鹿なの?

仕方ないから豪勢な椅子に座るザンザスの後ろで待機。つーか会場が学校ってことは学校破壊しろレベルで暴走させろって?…じゃああのプログラムじゃ駄目じゃん。もう少し派手にしないと…対戦者じゃない10代目候補を引きずり出さなきゃいけないんだから。

スクアーロは負けた。彼らしい死に方らしい。付き合いは短いからよくはわからないが、幹部の中では一番話したっけ。嬉しそうなレビィと違い、少し、前が霞んだ。

「真鶴さん!!」
「…沢田殿」

次のカードが発表され、そろそろ帰る雰囲気になったので、ヴァリアークオリティーなんて持ってないから急いでモスカの元に行ったら呼び止められた。

姿勢を正して彼を見れば、罪悪感で押し潰されそうになった。私は彼を嵌める。このきらきらした汚れのない少年を、嵌める。

ゆっくりと自分の手を見れば、霞んで汚く見えた。駄目だ。綺麗過ぎる。私は、こんなにも、汚れてる。

「俺、あのあと考えて…やっぱり真鶴さんが悪い人に思えなくて、だから!」

ズガンッ!!

そこまで言って弾丸が沢田綱吉の足元にめり込んだ。そして次の瞬間、私はザンザスに担がれ並盛をあとにした。



雑な動作で部屋に放り込まれ、受け身を取るヒマもなく背中から打った。

「…った」
「悪い人に見えねぇ、か。傑作だなあのカスは!疑うことを知らねぇ…あの胸糞わりぃジジイと同じだ」

常備されたウィスキーを一気に煽ってこちらを見る。

「犬」
「、はい」
「明後日だ」
「…はい。準備は、滞りなく…」
「下がれ」
「はい」

失礼しますと部屋を出た。死ぬかと思った。10代目候補と話したから、計画がばれたのかと思った。計画がばれたら…失敗したら、死ぬ。

もう一度己の手を見た。頭に10代目候補を思い浮かべれば、どんどん惨めになった。

「お、ワンコ生きてんじゃん」
「しかも無傷だね」
「くそっ悪運の強い奴め…」
「…これはベルフェゴール様、マーモン様、レビィ様」

てめぇら死んで欲しかったのか。いや前二人はただ感心してるだけっぽい。レビィは心底悔しがってんな。

「そういえば君、明日僕の試合見るなら僕の口座にSランク報酬3倍ね。観戦料徴収するから」

Sランク報酬3倍…?今まで雑用しかしてないのにそんな金あるわけねぇだろ。だいたい給料貰ったことねぇよ。

「せっかくのお誘いですが、観戦料がお支払いできませんのでご遠慮します」
「ム、素直なのは良いことだよ」

失礼しますと仰々しく礼をして執務室に戻った。ザンザスはもう居なかった。定位置のソファーで丸くなる。自然と目から涙が出てた。

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