12-1
「妊娠…本当に…?」

「ええ!」

単純に考えたら嬉しい!でも…

ホープはまだ学生だぞ?

こんな事が知れたらホープは学校を辞めて働きます、

とか言い出しそうだ…

いや、絶対にそう言うはずだ…

今まで私が散々ホープの未来を縛ってきた。

ホープには夢があると、以前私に語ってくれた事がある。

その時のホープの顔はどこか大人げで、本当に夢をもった顔をしていた。

このことがホープに知れたらその夢を壊してしまうかもしれない。

私はそれが一番嫌だ。

そんな事、絶対にしてはならない。

でも…私は…


その後急ぎすぎてどう家に戻ったかも覚えていない。

今日は検診が終わったらホープの家にいく予定がある。

ちょうどいい。その時に…

うきうきしながらホープの家に向かう。


早くホープに知らせたい。

早くホープに会いたい

この子は正真正銘ホープとの間に出来た子。

チャイムを鳴らすとすぐに玄関の扉が開いて体を中に引きずりこまれた。

3ヶ月の間離れていたぬくもりが一気に体に戻り私は胸の高鳴りを覚える。

「ライトさん…会いたかった…」

この声の主は勿論

「私もだ、ホープ…」

「くるしいぞ」

「すいません・・・つい…」

部屋に入るとすぐに

ホープがコーヒーを入れようとキッチンに向かった

「ライトさんはやっぱりミルクだけでいいんですか?」

「ああ。」

なんて言おうか…

「なぁホープ」

何の前触れもなく質問してみる

ホープはコーヒーを入れながら答えた

「どうしましたか?」

「話がある。」

「改まってどうしましたか?悩み事ですか?」

2つコーヒーを持って隣り合って座る。




苦さも甘さも丁度いいホープのコーヒーを一口口に含んで話をきりだした。

「その…」

「ライトさん?」

「……子供ができた…みたいなんだ…」

そう言うとホープは表情を変えた。

「本当ですか!おめでたい。

凄いですねセラさんとスノウ2人目ですか?

今度は男の子と女の子どっちでしょうか…」

「違う。セラじゃない」

「えっ?じゃあもしかしてファングさんですか?」

「違う…」

「じゃあ誰ですか?他に結婚されてる方いましたっけ…?」

ホープは頭にクエスチョンマークを浮かべた。

「………」

今になって不安になってきた。

私達は結婚しているわけじゃない。

ホープがそれを望んでいる訳でもない。

私の仕事上産んで育てて生活できるだけの資金は十分にあるとしても

ホープ自身の気持ちがある…

私がいくら産みたいと思ってもホープが拒めばこの子は…

「でも良いですよね。」

ホープはコーヒーを飲み干してカチャっと音をたててカップを置いた

「いつか僕もライトさんとの子供が欲しいです。なんて」

ホープが優しく微笑んだ

「…ホープ」

そんな風に思ってくれるなら…

「………ライトさん…子供が出来たって…」

「…私だ。」

ホープは一瞬止まってから絵に描いたように目を丸くした

「……そ…んな…」

「ホープ?」

私は恐る恐るホープの顔を覗きこんだ

「……僕…」

『っ!やったぁー!嬉しいです!凄く嬉しいです!』

まるでプレゼントでももらった子供のようにホープははしゃいでいる。

「産んでください…

僕、頑張ってあなたと僕達の子を養います!」

「私は産みたいと思っている。

だがお前は学生だろう?大変な時期に…」

「…学校を辞めて働いても良いです。

そのくらいの覚悟はあります。」

言うと思った。

「それはダメだ。学校はちゃんと卒業しろ。

お前は前に夢があると言っていただろう?叶えろ。」

じゃなきゃ、きっと私は自分を一生責めてしまう。

「私はそうして欲しい。」

自分の意思をホープは受け入れてくれたようだった。




ホープはいきなり私の体を抱しめた

まるでガラスでも扱うように優しく 温かく

「ライトさん…産んでください。僕達の子を。」

「ああ。」

「本当はもっとちゃんと言いたかったセリフなんですけど…

絶対に幸せにします。だから、僕と結婚してください。」

私はホープを抱く腕にちからをこめる

「ああ。結婚しよう」





それからはゆったりとした毎日だった。

セラに2番目に報告に行った時にはセラが

顔を崩して大泣きしていたのを覚えている。

「おねぇぢゃぁぁん!」

って凄い勢いで私に抱きついていた。

スノウもスノウでやったな!とか言って

式場はノラのカフェがいいとかあーだこーだホープと騒いでいた。



私がリグディに報告した時は凄い勢いで帰らされた。

「お前が無事に子供を産むまで任務は与えん!」

とか言って。


それから「そうか…俺も頑張るぜ!俺はいつでも元気だ!ファングー」

なんて訳の分からない事を叫んでいた。



ヴァニラとファングに報告した時は

「ええっ〜〜〜!?」「あ゛ーーーん?」

と声をはもらせて驚いていた。

特にヴァニラは「本当!?男の子?女の子?服買ってこなきゃ!」

って自分の事のように嬉しがっていた。


そしてもう一つ


「それじゃあ行きますか。」

「ああ。」

旧ボーダムの小高い丘の上を私とホープは目指していた。

ここには沢山の思い出がある。





―昔

「やだぁ!ママぁ!ママ!嫌だぁぁ!」

母親のお骨にしがみつき泣き叫ぶ小さいセラがいた

「セラ!落ち着いてよ!もうお母さんは…」

「やだぁぁ!ママと一緒にいる!」

母親が死んで ここにお骨を埋めるとき 

セラは凄く泣いた。


ここに墓を立てたのは生前の母の望みでもあった。

私が死んだら丘の上の父の墓の隣に埋めて と。

―そうだ。私はここで、本名を捨てた。

それからはただひたすらに頑張って。

もう泣かなくて良いくらい、早く大人になりたくて。

何度もここに通った。

桜の咲く春の日も暑い夏の日も 

雨が降り続く日も 雪の振る寒い日も

いつかここに来たらひょっこりお母さんが現れる気がして。




「ライトさん、足元に気をつけて」

広い丘の上は白やピンクなど色とりどりの花が咲いている。

その上を手を取り合って進んでいく 



―お母さんは戻ってこなくても、私にはホープがいる。


「あっちだ。」

「久しぶり。お母さん、お父さん」

「始めまして。ホープ.エストハイムと言います。」

両親の元へのあいさつ

「なぁお母さん、私はセラを守ったぞ。

今はセラも旦那と子供と幸せにやっている。

私にも家族ができた。

ここにいるホープと結婚しようと思っている。

子供を産んで2人で育てようと思う。

姉としてではなく一人の人間として、

私もそろそろ、幸せになっていいだろうか?」

ふわりと温かい風が吹く。

ふいにホープが私の頭を撫でた。


−そうだ、私は小さい頃、こうやって母親に頭をなでられる事が大好きだった。


「ライトさんを生んでくれてありがとうございます。

僕が絶対に幸せにします。

だから…娘さんを僕にください。」

またふわりと温かい風が吹いた。

「…ありがとう」

「ライトさん・・・」



母さん、私は今凄く幸せだ。



←戻る
1/7
 next→
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -