2−1
Side: Hope


頑張れよ?そんな事言われたら頑張らずにはいられなくなっちゃうじゃないですか…


ライトニングの薔薇の香りが鼻孔をかすめた

と思ったらもう歯止めがきかなくて

僕はライトさんを抱きしめていた。



ライトさんが抵抗したらすぐにでも離れられるようにすごく弱く。

でも、彼女は抵抗しなかった


もしかしたらこれが彼女に避けられる原因になるかもしれない。

4年間ずっと待っていた彼女に触れられるのも、

顔を見ることも、言葉を交わすことも出来なくなるかもしれない。

もし彼女に嫌われてしまったら…なんて考えると考えるほど心がひどく痛む。



それでも僕は―


「どうしてあなたは…僕の気持ちに気付いてくれないんですか…?

僕は4年間ずっとあなたを待ってました。

それが何を意味するか分かりますか?」

そう、ずっと待ってた。こうやって触れることを夢見ていた。

他の女の子からどんなに愛を求められても、

どんな言葉をかけられても、

町でどんなに美しい人を見かけても



あなたが欠けた心の隙間にどんなに優しくされても

僕の心はあなたから反れる事は無かった。

壊れそうな心の隙間に優しい思い出を閉じ込めて、

冷たいクリスタルの前で、あなたがいないこの世界でずっと待っていた。


「僕が…どんな思いで…今まであなたに接してきたか…

ずっと言えなかったけれど、今なら言えます。」

自分ではどうする事もできない位に

「あなたが好きだと…ずっと好きでした。今も。」

最初は確かに憧れだった。

でもライトニングを知るたびに、どんどん好きになっていって…




1秒、2秒 時間がゆっくりと過ぎていく。

心臓はこれでもか、という位に激しく騒いでいて自分の心臓の音が自分の耳に入る

「………」

長い間沈黙が続く

当たって砕けるとはこういうことか…

でも後悔はしてない。

やっと気持ちを伝えられたから。


気が抜けたような悲しいような複雑な気持ちに支配され涙がこぼれそうになる。

絶対人前では泣かない僕なのにこの人の前ではどうも我慢できなくなる。

こんな時に男泣きなんてしてもカッコ悪いだけなので我慢してこらえる。


「僕はあなたが好きなんです。いきなりこんな事…言ってすいません…」

ライトニングを腕から開放する。

顔を見ることができなくてそのまま立ち上がり部屋をでようとする。

でもシャツの裾が何かに引っかかって前に進めない

僕はそれを確認しようとして後ろを振り返ろうとする

「振り向くな!」

後ろは見えないが、僕のシャツの裾をつかむ手は見える

シャツの裾をを引っ張っていたのはライトニングだった。

「私なんて…好きになっても良い事ないのに…」

「大有りですよ!僕はあなたがいるだけで嬉しいんです。

あなたが目覚めた時、どんなに嬉しかったか…」

「……っ…」

「って今の僕、調子に乗りすぎですよね…すいません…

少し頭を冷やしたいので離してくれませんか?」

せめてこの場から逃れて一旦冷静に考えたい。

「嫌だ。」


背中に柔らかい感触を感じてからそれがライトニングだと気付くまでに時間はかからなかった。

「お前が私の事を…4年間も待っててくれたのか…?」

後ろから抱きつかれては身動きがとれずにただ心臓だけがバクバクと音を立てている

僕は首を縦にふって頷いた

そして静かに彼女の言葉を待った

「私は…お前に期待に答えられるか分からない…

実を言うとお前の事が男として好きなのかそうでないのかよく分からないんだ…

今までそう言う経験を1度もした事がないから…」

背後でライトさんの細い声が聞こえる

いかにもライトさんらしい答えだと僕は思う。

拒否はされなかったという安心感に包まれる
がこの状況ではきっと断られる事は分かっている。

ライトさんから見れば僕はあの頃の子供として見られているかも知れないし

僕自身がライトさんにつりあうほどの男ではないのかも知れない。

そもそもライトさんはその手の事に興味が無さそうだし…

激しく動く心臓とは対照的に頭は冷静に動く。

僕はライトさんの言葉を目を閉じて待った。

「…少しだけ…お前に甘えてもいいか?考えてみる」

僕の考えていた答えとは全然違う答えが返ってくる。

僕は彼女が止めるのも聞かずに顔を覗き込む

ライトニングは僕以上に真っ赤だった

それをも隠すくらいに今度は強くライトニングを抱きしめた。

失ってしまわないように。






追い続けていた


真紅の薔薇の如く綺麗で

どの花弁ほどに儚く

クリスタルよりも美しい


僕の宝物…



「………っ…ホープ…いい加減離してくれないか…?

頭に血が上りすぎて死にそうだ…」

僕ははっと我に返り彼女を解放した

「すいません…つい…」

「自分の気持ちがはっきりと分かるまで、こういうのは待っててくれないか?

その…慣れないというか…心臓が耐え切れなさそうだ…」

恥ずかしそうにつぶやく彼女が愛しくてたまらなくなった

でも

「分かりました。あなたがそれを許して、望んでくれるまで何もしませんよ」

彼女の意見を尊重してあげたい。

それが本当に大切にするという事だと思うから…







Side:Lightning

朝起きればリビングにはホープがいておはようと温かく声を掛けてくれる

そんなホープが学校から帰ってくるのを私は温かく迎える。

父が死んで母も死んでセラも嫁に行ってしまった今では私は一人だ。

そんな中で居場所を見つけた


心地よくて、安らげる場所。

これが恋なのか?と聞かれれば正直分からないが、

ホープは私にとって無くてはならない存在だった。

それでも浮かび上がるのは罪悪感。

ホープの過去を縛り付けてしまったのは自分だ。

もしこの先もホープといるならまたホープを縛り付けてしまう事になりかけねい。

私のせいでホープの将来が変わるかもしれないのだ。

もし私がクリスタルから目覚めて居なければホープは同年代の子に心惹かれ、

愛し合ったかも知れない…

本当に良いのだろうか…このままで



罪悪感と自分の気持ちとで整理がつかずに考えれば考えるほど混乱する。

自分の気持ちだけ言ってしまえば、このまま流されてしまいたいのだが


私もしっかりしないと…


そんな時に家のチャイムがなった

ホープは留守にしているが、一応と思い玄関に向かう

「はい…」

ガチャリとドアを開けると見覚えのある顔の男が立っていた

「よう!ファロン殿!」

「何でお前がここに…?」

その男とはかつて騎兵隊を率いていたリグディであった

何のようでここに?

「話がある。入れろ。」

「ここは私の家じゃない。勝手な行動は出来ない。」

泊まらしてもらっている身分だ、そんな勝手な事ができる訳もない

「なら近くのカフェかどっかで…」

リグディはあれから随分と身分が高くなっているはずだ。

最近ニュースなどでも名前を目にするようになった。

そんな人がわざわざ出向くとは何か理由があるのだろうと思い要求を受け入れる

「分かった。ちょっと待っていてくれ」

軽く準備を済ませて家からさほど遠くないカフェに落ち着いた


「で?話とは…」

「まぁ焦るな…あっ!そこの姉ちゃん!コーヒー1つね!お前は…?」

「私は結構だ」

コーヒーが出てくるのを待ってリグディは話始めた

「単刀直入に言う。お前軍に戻る気はないか?」

「は…?」

私は1度は軍を退職した身だ。

それに兵士を何人も傷つけた 

いまさら…

「4年間探していた。どこにいたかは知らないが最近になってあの家に出入りしているとの情報をつかんでな。」

それじゃあまるでストーカー…

「今やお前はコクーンを救った英雄だ。

混乱するこの社会の中で俺は先端に立とうと思っている。
レインズは今だに回復中だ。死んではいない。

そこでだ、腕の立つお前を近くに置いてだな…」

「断る」

「まぁ、そう言いなさるな。

護衛役と言っては何だが、お前の経歴を見れば学力、戦力、戦闘能力には申し分ない程度に優れている。

それに人前に出たらその外見で存在感がある。

お前ほどの人材はめったにいないんだ」

だから私は…そういいかけてまたも遮られる

「答えはすぐにとは言わない。あと特典で引き受けてくれたら給料は今までの5倍以上。

そんでもって軍関係者用にエデンに作られた新築の高級マンション。

1室はお前の物だ。もちろん無料だ。

少々仕事自体はきついかもしれないが悪い話ではないだろう…?」

仕事と住む場所を探している私にとってみればむしろ好都合な話だが

「考えてみる」

決めるにはまだ早すぎる

「いい結果を待っている。あっ、これ俺の連絡先ね。

いつでも電話してね♪できれば急ぎで。

あっ、ちなみに断っても何回も来るぞ?それほどお前が必要なんだ。」

リグディは長めの髪をかき上げてカードで支払いを済まし出て行った。

それに続いて私も店を出てホープの家に向かう




「ただ今…」

玄関にホープの靴を見つける。

すでに帰っているという事を察しリビングに向かう

「あっ…ライトさん。お帰りなさい。」

ああ。と返事を返しリビングのソファーに座る。

仕事…か。

私には剣を振り回すような仕事がやっぱり適切なのかもしれない。

それに軍のマンションに住める。

住む所も仕事も簡単に決まるし、どちらも私的には有利だ。

軍への復帰に対しての抵抗感は少しあるのだが…

「ライトさん?」

深く考え込んでいて

気付いたときにはホープの顔が目の前にあった

「どうかしましたか?何か悩みでも…?」

私が何も言ってないというのになぜそんな事が分かるのか不思議だ

「ああ。少し…な。」

私がそう答えると間髪いれずにリグディさんとの事ですか?と聞かれて私は眉をひそめる

「見てたのか?」

さっきのカフェでの事だろう。

「学校帰りに通りかかった時に見かけたんです。

なにか難しい話をしている様子だっので」

「そうか…」

「……」

「実は、仕事のオファーが来た。」

「そうなんですか!良かったですね。でも…リグディさんがらみって事は…」

「ああ。軍の復帰だ」

私がそう言うとホープの表情が曇り始めた

「軍って…また危険な仕事に…」

「私は大丈夫だ。」

腕に自身が無い訳でもない

「あなたなら大丈夫だと思うんですけど、僕的には心配なんです…」

「…すまない。でも私は復帰を考えている。」

「あなたが決めたことなら止めはしませんけど…住む所は…?」

心配そうな顔を向けてくる

「軍のマンションだ」

そういうともっとホープの顔が曇った

「ここにはいなくなるんですか?」

「ああ。世話になったな。礼をいう」

「………」

がっくりと首を落とすホープに、暇な時遊びに来てもいいぞ 

と声を掛ければ子犬のように目を輝かせた。

そんなに嬉しいのだろうか?高級マンションが…

この家の方が立派だと思うのだがな…


「絶対に行きます!あなたに会いに。」

真っ直ぐ見つめられれば鼓動が激しくなる。


こんな風にしてたら何故か離れられなくなるような気がする…


この温かさに慣れたら。



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