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Side:Hope

浅い眠りからふと覚めてコミュニケーターを開く

交通情報を確認すると電車が間もなく運行開始するという事だった。

ちょうどいい。今日はこれに乗ってもどろう。

急いで支度をすませると家を飛び出した。



駅に着くと丁度運行が再会した様子でみるみる人が減っていく。

僕もその人混みに紛れて満員列車に乗り込んだ。

ぎゅうぎゅうの車内の中を乗り切って駅に着くとどっと人が流れていく

早く家に帰ろうと改札へ急ぐ。

でも改札にもかなりの列ができている

僕はコミュニケーターでライトさんに電話をかける。

もうすぐで家に着きます。と報告したくて


だけど…


呼び出し音が鳴り続けるままで応答はなかった

めずらしいな…もう寝てしまったのだろうか…

なんだか凄く嫌な予感がする。


「すいません!通してください」

思い立った頃には行動を起していた

一番すいている駅員さんの前の改札を急いで通ると傘も差さずに家に急ぐ

寒さも靴の中に入ってくる水も気にせず走る
僕は心配性だろうか?

でも嫌な予感がするんだ…


家に着くと明かりはついていない

「ただいま…」

やっぱり寝ているだけ…?

少し安堵する。

こんな急いで走ってバカみたいなんて思いつつ寝室を覗くと

ライトニングの姿がなかった

「ライトさん?」

そのままリビングへ向かう

暗闇の中で苦しそうな吐息が聞こえる

急いで電気を付けるとテーブルの近くでライトニングは倒れていた

「ライトさん!?」

「うっ…く…ホー…プ?」

「ライトさん!?どうしたんですか!」

「お腹が…痛っ…」

「救急車呼びますから待っていてください!」

僕は急いで救急車を呼ぶ

その間ライトニングをソファーに運び

学校で習ったありったけの痛みを除く方法を施してみる

「ライトさん!しっかりして!ライトさん!」

「……っ…う…」

急いでも焦ってもこの交通状況ではなかなか救急車の音が聞こえてこない

「ライトさん!もう少しだから…もう少しっ!」

ライトニングは痛みで気絶をし、また痛みで目を覚ます事を何度か繰り返していた

やがて救急車が到着し病院に緊急搬送



後は病院に任せて僕は待合室で待つだけとなった。


薄暗い待合室。

カチカチと時計の針の進む音がする。

扉の向こうからは苦しそうなライトさんの声。

聞こえない産声

「ライトさん…頑張って」

祈る事しかできない僕。

カチ…カチ…とゆっくりと時計がすすむ。

こんなに時間の流れとは遅いものだったっけ?

「ライトさん!」

不安で不安で押しつぶされそう。

しっかりしなきゃ…しっかり…

突然なったコミュニケーターに僕は電話室まで走り応答する

「スノウ?ゴメン今大変だからまた後で」

「病院から電話が来た。話は聞いた。今どんな状況だ?」

「まだ生まれてない。僕…不安でっ」

「お前がしっかりしなくてどうする。義姉さんなら大丈夫だ」

「でも…ライトさんはまだ妊娠8ヶ月で…」

「セラの時は9ヶ月とちょいだったけど元気に生まれた。

今は願え。な?

俺達も雪がやみ次第そっちに向かうから。」

「う…ん」

「命を生み出すってことは大変な事なんだ。

義姉さんならやってくれる。

元気な子を産んでくれるさ」

「うん…ありがとう。」

電話を切るとまた待合室に戻る

スノウの言葉は経験者だからか心に響いた
ライトさんならきっと大丈夫。

「母は強し…」

昔何度も聞いた言葉を思い浮かべる

ライトさん…




「もう少しです!頑張って…」


「先生!頭が見えてきました!」


「ラストせーのでいきんでください!」



苦しそうな声のなか



中から医者の声が聞こえ僕は立ち上がる


やっと…やっと僕達の子が…



「生まれました!」





その声に僕はなんともいえない喜びがこみ上げてきた。


生まれた…

僕達の子…

ライトさんと、僕の…




でも…次の声で地獄に落とされた気分におちる

「赤ちゃんが泣きません!」

「心拍数低下です、エストハイムさん!聞こえますか!?」


「母子ともに危険な状態です!

子供は隣の新生児処置室に運んで処置を、

急いで!」

声と共に扉が開きシーツに包まった赤ちゃんの入った箱を抱えた医者が出てきた

「先生!」

「非常に危険な状況です。

処置しますからもう少しだけ待っていてください」

「そんな!先生っ!」

話をする暇もなく赤ちゃんは隣の処置室に入っていった。

我が子に伸ばした右手が行方を見失い宙に舞う。

ライトさんが…赤ちゃんが…

どっちも危ない…

そんな…僕は…どうすれば・・・




神様お願い、どうか2人を助けて…

ライトさんは誰よりも家庭を持つ事にあこがれてたんだ!

いままで辛い思いを沢山してきた。

やっと願いが叶いそうなのに





2人をつれていかないで!!





それまで途切れ途切れだった電子音が一つにつながる




低いとも高いとも言えない電子音


「心肺停止っ…マッサージを…」


僕の脳内で何かが切れた気がした。





真っ暗な何もない世界の渦の中に落ちていくようで…



僕の心臓音だけが耳に届く



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