12-7



     6年後



「ママぁ!ママどこ!?」

広い平原に降り注ぐ日光を跳ね返すほどの銀髪少女が走る。

繋いだ手の向こうには3年前に生まれた弟の手を引いている。

「ママはあっちでお昼の支度をしているよ。行こう」

3歳になった息子を抱え僕は妻の待つ木陰に向かう

「なんだ、遊びつかれたか?丁度いい、昼ごはんだ」

シートの上に並べられたサンドウィッチをルナとレンは頬張る

「おいしいよ!パパも食べて!」

「ありがとう、ルナ」

僕は今、幸せだ。これ以上の幸せなんてこの世に存在するのだろうか…

昔より今、昨日より今日、今日より明日、と幸せが大きくなっていくかのように思える。

「ママとパパはどうして結婚したの?」

子供の無邪気な質問に僕とライトさんは顔を見合わせた

「それは…」

僕は急に照れくさくなって頬っぺたを掻いた

「好きだからだよ、ルナ。お前にも好きな人がいるだろう?」

「うん!カイルも好き!セラおばさんとスノウも好き!幼稚園のお友達も好き!」

「えっ!?パパは?僕は入ってないの?」

「パパとママとレンは大好きっ!えへへ」

腹ごしらえをしてまた向こうにかけていく子供達。

その隣で目を細くして笑みを浮かべながら小さな背中を追う最愛の人。

小さな子供達はその体に太陽の光を沢山浴び輝いている。



僕達の宝物



2人の愛を紡ぐ 大切な光。




これから何年後も 何十年後も 成長するその姿を見守り続けたい。

愛するあなたと一緒に。



  

   それからまた10年後

「父さん、ここの問題教えてくれない?」

14才の少年が僕の隣に座っている

「ああ、これはこういう風に見せかけて…実はこういう風に…」

顔は笑っちゃうくらい幼い頃の僕にそっくり。

少し癖っ毛のピンクブロンドの髪

「ああ!そうか…ってことはこっちは…こういうこと?」

「ん…そう。正解」

頭脳は母親になのか成績優秀。

年齢のわりに落ち着いていて、3歳上の姉とのやりとりを見ているとどちらが年上だか分からなくなるくらいだ。

「レン、受験勉強もいいけど、頑張りすぎると良くないよ」

レンは、僕の母校であるレベルの高いハイスクールを目指して勉強中だ

「…そうだね。少し休憩する事にするよ」



「きゃぁ!?」

「どうした!ルナ!」

キッチンから妻と娘の声がする

「ルナと母さんはさっきから何をやってるの?随分騒いでるみたいだけど。」

「ああ、さっき行ったら追い出されちゃったよ。

バレンタインだーってルナが騒いでたよ。」

「今日は14日か…あー。姉さん、好きな人いるらしいじゃん。

多分そいつにあげるやつだな。相手お気の毒に…」

レンは含み笑いをする。

「うんうん…って、ルナに好きな人ぉ!?」

「あれ、父さん聞いてないの?同じ学校の先輩だって。」

「うそ…小さい頃はパパのお嫁さんになるぅ〜ってあんなに…」

「はっ…まぁ、娘も成長するよ。その気になれば結婚だって出来る年じゃん。

父さんは年をとるわけ……

姉さん!母さん!チョコはそのまま火にかけんな!!」

「えっ!?っそ…そんなの分かってるわよ!ああ!」

「…ったく。」

誰に似たのか息子は少々毒舌

…もしかしたら、僕に似て少し黒いところがあるのと、ライトさんに似て少し気の強い所がまじってこういう風になったのかもしれない。

「そういうレンは、好きな子いないの?」

「僕は…別に。」

僕は知っている。昨日学校帰りに持ちきれないくらいチョコを抱えて帰ってきて、みんなに隠れて部屋に隠した事を。

それでもルナに見つかっていじめられてたけど。

「どうだか…でもそうだな、僕がライトさんに始めて会ったのは今のレン位の時だよ。」

「へぇ…それは面白い。」

「そうだな、僕が14の時で母さんと始めて会った時はレンをもっと弱くした感じの、

細っこくて弱い子供だった。そこから大分鍛えられたんだ。

いつからだか、母さんの事が好きになってたんだ。

考えられるか?7才差だ。いろいろあって今は実質3才差だけど。」

「いろいろって、小さい頃に聞いたあの話?」

「そうだ。奇跡みたいだろ?

…奇跡はうちらの得意技だ!ってソータのママの口癖だったな。」

「ファングさん、たしかにいつもそんな事言ってる気がする。」

レンが思い出したように笑う。

「リグディさんとファングさんは…」

14才になった息子に 自分が14才だった時の思い出話をする。

一つ一つ、思い出すように、大切に思い出思い返して

「…へぇ…じゃあリグディさんって凄い人だったんだね。

ファングさんと…ヴァニラさんはもっと凄い…」

おとぎ話のような話を 頭の良い息子はすぐに理解するように頷いて聞いてくれる

「ライトさんを何年間も思い続けて 壁を乗り越えたから 今の幸せがある。」

「本当に奇跡。」

息子は妻と同じように大きな目を細めて笑った。



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