8−6 (マキヴァニ)
Side:lightning

起きるとホープの機嫌がすごく良かった。

―何か良いことでもあったのだろうか?

鼻歌まじりにご機嫌で朝食を作っている。

私はコーヒーの香りを楽しみつつ熱い液体を

寝ぼけた頭を覚醒すべく口内に流し込んだ

砂糖は入れずにミルクだけをプラスしたコーヒーは不思議と

ホープが私の好む味をキャッチしていて、

毎朝のこれが楽しみでもあり、日課になりつつある。

無造作につけられたテレビではいつものようにさまざまな情報が流れている。

情報を入手するならばインターネットという

手もあるが、朝のニュース番組は見ているだ

けでいいので、私はいつもこうしているのだ。

―続いて次のニュースです

続けてコーヒーを一口口に入れるも

このテレビのせいで思いっきりふき出してしまう

『おめでたいニュースです。

今朝、リグディ代表が一般女性と婚約を発表しました。

昨日、レストランで仲むつまじい姿も目撃されています。

お幸せになってほしいものですね!』

私はせきをしながらもその事をホープにも伝えた

「なぁホープ、面白い話があるぞ」

「ライトさんがそんなこというなんてめずらしいですね。

なんですか?」

「リグディとファングが婚約だとよ。今ニュースで…」

言いかけてホープの声に遮られた。

「ええーーーっ!本当ですか!?これは先越されちゃいましたね…

というか、すっごくめでたい事なんじゃないですか!?」

「…? ああ。私も驚いた」

「って事は今頃ヴァニラさん…」

ホープも私と同じ考えにたどり着いたようだ。

「それでねーそれでねー!ファングったらねー」

ノラのカフェに居座っていた。

「まぁ、めでてぇ事なんじゃないか!ははっ!まぁかあいつがなぁ」

ヴァニラの相手をしているのはスノウ。

なんだか寂しくなってノラのカフェに行ったら案の定スノウがいた。

「だってさー…ぐすん。ファングがデートに行ったと思ったらさ、

朝帰ってきて男ができたぜ!

って自慢して来るんだよ!?

しかも結婚とか噂されてるしさ、

ホープもライトとくっ付いちゃってるしさ、

スノウだってセラと結婚してさ…

私だけ寂しいの!しかもね!

パルスからもってきたバクティも調子が悪いし…うわーん!」

「泣くなよ…俺に言われたって困るよ…

あ、ジュース飲むか?甘くってここらの女子に人気なんだ」

「ほんと!?」

立ち直り早っ!とスノウは心の中で苦笑した

「ああ。呼んでくるよ?」

スノウは女を泣かせた感じになっての周りからの冷たい目線を避けるべく、

逃げるようにその場を去った



ああ…私ってどうしてこんなに寂しいんだろう…

クリスタルから覚めたら絶対幸せになってやるぅ!って思ってたのにぃ…

考えたらまたウルっときてだらしなく涙を流した

寂しいよ…

どうしてこんな時にバクティ壊れてるのよ!

もうっ!

寂しさを紛らわせるために持ってきたバクティを砂浜に置いた。

うぇーん(泣)バクティー


「あの…どうかしたんっスか?」

バカみたいに一人で泣いてると一人の青年が声を掛けてきた

「ううん。なんでもないの」

涙を拭って答えると青年はバクティに興味を持っているようだった

「これ、なんなんスか?」

「それはね、バクティって言ってね、私の友達。

調子悪くって動かないの」

「…俺、直せるかも知れないっス。こういうの得意なんで。

やりましょうか?」

何っ!パルスのものを直せるような技術者がこんな所に…

「いいの!?はい。すぐそこに作業所あるんで、時間はかからないと思うんですけど」

私はその少年にくっ付いて歩いてすぐの作業所らしきところに入った

油のような匂いが立ち込めている。

そういえば、パルスの列車が通ったあともこんな感じだったな、

と懐かしさをこめて

その空気を吸い込んだ。不快感はない

青年はあらら…とバクティを開いて声をあげた

「中の部品が合ってないっス。これで動いてたのがキセキ!しかも錆びてる」

そういえば修理したのサッズだし…長い事パルスに放置してたもんなぁ

「でも、大丈夫。30分くらいかかっちゃいますけど」

私はそれを聞いてありがとう、と告げるとまた辺りを見渡した

自転車やなんの部品かも分からないもの、

エアーバイクが数台などと本当にいろいろな物がある。

「ねぇ、ここって何やってるところなの?」

「機械とかの修理っス!ほら、

あっちにノラのカフェがあったじゃないですか、

そことあわせてノラの活動資金稼ぐためのバイトみたいなもんっスね。人助けもかねて」

「すごいね!…でも、私お金持ってない…

この変なカードみたいのならあるけど…これでいいの?」

私がリグディに持たされた、前にファングといじったことのあるカードを出した。

コクーンではお金の代わりらしい

「変なカード?代金なんていいっすよー。」

「でも…」

「あんなところで、風邪ひいてもおかしくないし。

カワイイ子はナンパとか狙われやすいから…

それに、困ってる人は助ける。それがノラっス!」

この人…いい人…優しい人

また前を向いて部品をカチャカチャとはめ込んでバクティを機動させた

『シュウリ シテクレテ アリガトウ』

モニターにはそう写っている

「凄いッすねこの機械!見たことないっす」

そりゃパルスのものだもん…

「あ!ちょっと買い物行くって言ってそれカフェに届けてなかった…ヤバ!」

青年はすくっと立って外にかけて行った。

「それ、もう大丈夫だと思うっス、気をつけて帰ってください!」

「ええっ!?ねぇ!ちょっと待ってよ!」

行っちゃった…


いい人…


家に戻るとなんだか心が晴れ渡っていた


「お、ヴァニラご機嫌だな」

「まぁね♪フフ〜ン♪」

「なんだぁ?」

あ、でも私…今日会った人の名前聞いてない…

「ああーーーっ!」

「ああん!?なんだよいきなり」

ズゴーン…

「浮き沈みの激しいやつだな…

あ、今夜出かける。帰りは朝になる…と思う」

出かける…ってあのリグディって人のところに…



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