4−3
ホープにも逃けられてしまってはもう絶望しか残らない

「おい…」

また後ろからホープではない怒気をはらった声が聞こえた

「リっ…リグディさん!」

レイの顔色が明らかに変わった

「お前何をしている…」

「何って…ファロンさんと…」

「俺がそんなウソにだまされると思うか!行くぞファロン」

リグディが私の手を思いっきり引っ張りレイから遠ざける

圧迫されていた肺に空気が流れ込んだ事で私は大きく咳き込む

助かった…

そして私にジャケットをかぶせると先ほどホープが乗っていったエレベーターに私を誘導した。

「歩けるか?」

いつもいるルームにこもり内側から鍵をかけた所で私は力なくへたり込んだ

「大丈夫か?あいつ、まさかあそこまでするとは…

ホープが顔色を変えて出て行ったからもしかしてと思ってきてみたら案の上この様だ。

もっと早く気付いてやればよかった」

「いや…お前が来てくれて助かった。でも…」

「ホープか…」

私はリグディの言葉にうつむいた。

リグディのおかげで難を逃れたが、ホープは明らかに怒っていた。

「やばそうだったな。とりあえず、あの家にはもう戻るな。

あそこは危険だ。嫌な事思い出すだろう。

後でなんとかするから、今日はこの部屋で寝とけ。

幸いこの部屋はシャワーとかもあるし。

セキュリティーもなかなかだ。その格好をなんとかしてからホープに電話でもするんだな。」

「…すまない」

リグディが気を使ってか、部屋を出て行く。
私はすぐさまシャワー室に向かってシャワーをこれでもかというほど浴びた。

以前にもこんな事があったと思い出す。

気持ち悪さは拭えない。それ以上に心がいたい。

ホープに嫌われたらどうしようという考えが頭をよぎる。

でももしかしたらホープなら事情を聞いてくれて許してくれるかも知れない。

そんな希望だけを頼りにだるい体をうごかす。


シャワー室から出るとドアの向こうから声がした。

「訓練生の者ですが、リグディ准将から頼まれて荷物を届けにきました。」

声が女だったので私はドアを開けた

訓練生の女の人が持っていたのは私の荷物だった

「すみません、リグディ准将がおっしゃったとはいえ、ファロン少佐のお宅に勝手にお邪魔するのは気が引けたんですが…

言われた通り衣類等とコミュニケーターと食料を持って来ました。」

衣類面を考慮して女を取りに向かわせたのだと理解した。

なかなかに気がまわる発想だ

「かまわない。すまないな。」

「では私はこれで、失礼します」

訓練生は私に一礼した後で去って行った。



誰も居なくなった部屋にただ一人私はコミュニケーターを手に取った。

ホープの声が聞きたい。事情を説明して、許して欲しい。

こんな私でも嫌わないで欲しい

ホープならどんな時も見方でいてくれる―


もしかしたら電話にすら出てくれないかと思ったが、待っていても状況はよくはならないと思い、思い切ってダイヤルボタンを押した


長いコール音の後にホープの声が聞こえて、無視は去れなかったと安堵する

「ホープ…」

『何の用ですか?僕に』

いきなり冷たい言葉が返ってきて私はまた暗い闇に引き戻されたような感覚を覚えた


心のどこかで、優しい声を期待していたのかも知れない。

「聞いてくれ…さっきのは…」

『…もういいですよ。』

「そうじゃなくて…許して…くれないかも知れないが、誤解を解きたくて…」

やはり…と私は悲しみに目眩すら覚えた

『許せないとか誤解という以前に、あれが本心なんでしょう?

僕が触れた時は優しい言葉で断ったじゃないですか…なのにあの人にはあそこまでさらけ出していた。』

「違うっ!そうじゃない!」

『もういいじゃないですか!気を使って優しくしないでくださいよ!

あなたはあなたの好きな人と幸せになってください。

その為だったら僕は身を引きますから。でも、そうだったのなら最初から断ってくれた方が良かった。

なんであなたはあんなウソを言ってまで僕に優しくするんですか?

…もう何がなんだか分かりませんよ!』

「違うんだ!聞いてくれ!ホープっ!!」

『聞きたくありません!あなた優しいウソなんて…信じていたのに…

…もう、僕なんかに電話しなでください。』

プツっと途切れた電話の音が聞こえた

心をつなぐ糸もまた。

すぐに切り返してコールするも何回かけてもホープは応えてくれなかった


こんな風になりたくて電話したんじゃない。
ホープなら訳を聞いて優しく

大丈夫ってなぐさめてくれると心のどこかで思ってた。

こんな私でも、信じて話を聞いてくれると思ってた。

まぁ無理も無いか。あんな姿であんな状況になって。

何も思わないほうがおかしい。

それに私は話も聞いてもらえないほどホープに軽蔑されてしまったのだ




「っ…」

ずっと我慢していた涙が頬を伝う

どうしてこんな事に…

私が注意していればこんな事にはならなかった

もっと早く薬から目を覚ませていたら、もっと私が強ければ。

もっとしっかりしていれば

もっと素直であったなら

こんな風にはならなかった?




涙はとまらなくて、足元にしみを作っていく。

みんな居なくなってしまう。

父さんも母さんもセラも、ヴァニラやファングも。

私の周りからは大切な人がみんないなくなってしまう。

一人は嫌で、ホープだけは離したくなかった。なのにまた一人になってしまう。


誤解されたままでホープに軽蔑されてしまう。


ホープを失ってしまえばもう、私に希望は無い。


心が痛い。

私はこれからどうすれば…


いつもこんな見た目のせいで嫌な事ばかり起きる。

それ以前に私の中身すら問題なのではないだろうか

もう自分が嫌いだ。


恋人にすら信じてもらえず軽蔑される。


信じて話を聞いて欲しかった

傷ついたところをなぐさめて欲しかった
居なくならないで欲しかった。


それすらも、私は望んではいけなかったのか。


周りの人を傷つけるだけの自分なんて生きている価値がないのかも知れない


私は眠ることも食べる事も出来ずにただ涙だけを流して唇をかみ締めていた



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