お誕生日のできごと。



「みっちゃん、お誕生日おめでとう!」

「ありがとう、たっくん!」


それは幼い時の思い出だった。
今日は私の誕生日で、彼はいつも一番最初に私の誕生日を祝ってくれる相手だった。
なのに。
どうして・・・?

私と彼はいつも朝一緒に登校している。
いつも話す言葉はおはようだけど、この日だけは違うのだ。
「おはよう!」
飛びっきりの笑顔で、そう言った。
すると彼は、
「おはよう。朝からご機嫌だね。何か良い事でもあった?」
そう言ってきたのだ。
それを言われた途端私の顔から笑顔は一瞬にして真顔になった。そして、なんでもない顔で
「なんでもない、よ」
といった。
これほど胸が痛くなった事はない。
この日は唯一の楽しみで、好きな人からおめでとうって言ってもらえる唯一の日なのに。
どうして・・・?
そしてその後学校に行っても、彼は私の特別の日の事なんか忘れているように過ごしていた。
その日一日、気が気ではなかった。
放課後になった。
私と彼は日直の仕事が丁度重なっていて、二人で教室に残っていた。
私がクラス日誌を書いている時だった。
「ねぇ、」
そう彼が話してきた。
私は何?と短く返した。
そうすると私が一番今日気にかけていた話をし始めた。
「今日、俺が誕生日祝わなかった事、怒ってる?」
「・・・うん。」
力のない声で、本音を言った。
「・・・ごめん。」
「・・・え・・・」
なんで謝ったのかがよくわからなかった。
「ごめん、昨日はちゃんと覚えてたんだけど、今日忘れてて・・・」
「・・・しょうがないよ、もう過ぎちゃったんだから。」
そう言った。結構哀しかったけど、ちゃんと謝ってくれたんだから、それだけで嬉しい。
「ごめん・・・。」
何度も彼が謝ってくるので、こんな話をした。
「じゃあさ、
私欲しい物があるんだ。それくれたら許してあげる。」
ちょっと意地悪かな?とも思ったけど、とりあえず言ってみたかった。
「何?俺が叶えられるんだったらいいけど・・・」
「うん。貴方じゃなきゃ、できないの。
・・・聞いてくれる?」
「うん!何何?」
無邪気に聞く姿はまるで子供のようで。とても可愛い。
「えっと、それはね―――
私の、彼氏になって下さい!」
朝と同じ飛びっきりの笑顔で。
すると彼は
「・・・朝俺が言おうと思ってた事言われた・・・」
とボソっと言った。
私はびっくりしながら恐る恐る聞いてみた。
「じゃあ――――」
「うん。俺でいいなら。」
「やった!ありがとう。―――拓人。」
「こちらこそ。―――みかん」
「大好き」
「俺も」
そして、二人はこの誰もいない教室で誓いのキスを交わしたのであった。





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