きらきら光るお星様

人は死んでも星にはならない。
土に埋めれば養分になるだろうし、火で燃やせば灰になるだろうし、それを海にばら撒いたところで塵としていずれかは誰も見たことのない海底に沈むかするだろうし、そういえば煙草も燃やせば灰になるのであった。

「私も死んだら灰になるのかしら」
ふとそんなことをボヤけば、彼は向かっていた執務室の書類机から視線だけを上げた。
「なんの話だ」
「空の星になってみたかったなあ、って話」
人生で一度でいいから、どこぞのファンタジックな映画に出てくるみたいに、あいつは死んで空の星になったんだよ、とか言われたみたい。人生で一度というか、それは本当に人生で一度きりしかできないのだけど。
「…なんだ、お前、意外とロマンチックなんだな」
なんとも言い難そうな顔をして、土方は手をつけていた書類に目を戻す。
「女の子だからねえ」
ロマンチスト、本当にロマンチストなのだろうか。死んだら空の星になって、好きな人が空を見上げるたびに私のことを思い出してくれたらと思うのは、ロマンチストだからなのだろうか。
七夕の織姫と彦星のように、好きな人と二人揃って星になれるというのはひょっとして、とんでもなく幸運なことではないだろうか。
「私と一緒に星にならないと、土方さんが死んでも思い出してあげないよ」
「別に構わねェよ」
今度は視線を上げることもなく言い切った彼に、もはや私は何も言えなくなってしまうのだ。
私をロマンチストだと言うなら、彼のいわゆる現実主義者なところも含めて好きになってしまっているから、完全に私の負けである。
これ以上、仕事をしている彼の周りで星だの灰だのなんだの語っていたところで何の意味もなく、むしろお邪魔虫であり、今日はこれまでかと私は腰を上げるのだ。

「…お前が俺のことを覚えてようが、忘れようがどうでもいい」
相変わらず書類机に向かった姿勢を崩さないまま、何かを少し考えたように土方は続けた。
「俺がお前のことを覚えてる」
それで十分だろ、となんてことないように言う彼が、心底惚れた女を忘れられない男だというのは最初から分かりきっていたことであった。
「毎日ニコチン吸ってる土方さんに、私より長生きは無理」
「言ってろ」

当分死にそうにない顔で、彼がまた新しい煙草に手をつけるものだから私はなんだか星だの灰だの、どうでもよくなってしまったのだ。



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