メモ4

「どこかに行こうよ」
エアコンを消した私に、明日は雨が降るよと、見てもいない天気予報を語り出した。少し強くなった風がカーテンを揺らした。十一月の冷たさが好きだった。一人でも生きていけると思わせてくれる冷たさが。
自分を愛せない人間の、他の人間に向けた愛が不完全なものであると同じように、ちゃんと一人で生きていけない人間が、どうして二人でちゃんと生きていけるのだろう。
思考を溶かしきってしまうような、夏の暑さが少し、怖い。
「こんな風の強い日に、一体どこへ行くと言うんだ」
夏に触れれば火傷してしまいそうな、この男の体温を、溶かしてしまいたくなかった。
「全然オッケー、雨でも風でも大丈夫」
誰もいない、どこか遠いところへ行こう。
夏が、私たちの輪郭を溶かしきってしまう前に。

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