黒子のバスケ | ナノ
しあわせの魔法使い


「ねぇ大ちゃん」
「何だよさつき」
「魔法使いってどうやったらなれるのかな」
「30歳まで大切なものを守りきれたらなれるらしいぜ」
「何言ってるの、私は女の子だよ」
「あ、知ってるんだお前知ってんのかマジかよ」

「もー。私が言ってるのは普通に火を出したり透明になったり嫌なひとをカエルに変えたりできる魔法使いだよ。ちょうどヴォルデモート卿みたいな」
「そこは素直にハリーポッターって言おうな」
「うーん本当にどうなんだろう……どこの専門学校に行けばいいのかな」
「話聞けそして授業で魔法を修得できるのはお話の世界だけだ」
「中学生だし夢を見ようよ、大ちゃん」
「お前は現実を見ろ」
「酷い……もし私が魔法使えるようになったら大ちゃんは色々と便利になると思うよ?ほら、料理って火使うじゃん」
「てめぇの怪しい魔法を使うくらいならガスコンロに頼るわ」
「あとー……空飛べるよ!箒とかでさ」
「お前ん家の箒、先週ゴキブリ叩いたって聞いたけど」

「それとかあれだよ!人間を違うものに変え薬とか。ジーキル博士みたいに豹変できるかも」
「あれって結局戻れなくなったんだよな。まぁさつきの場合、料理とかで変身させるどころかそのまま死なせちゃったり……」
「ん、料理が何て?」
「え、いやー……黄瀬あたりがこの前手料理が食べたいって言ってたなーって……」
「そうなんだ!明日にでもきーちゃんにレモンの蜂蜜漬け持ってってあげようかな」
「(黄瀬スマン……!)」
「あ、もちろん大ちゃんにもあげるよ」
「ッいやそこは黄瀬に悪いだろ!!」
「そーなのかな。まぁ頑張って作るね」
「危ねぇ……」

「てか話が逸れちゃったね。結局どうやったら魔法使いになれるのかなぁ」
「頑張るしかねぇんじゃねぇの。というかお前は何で魔法使いになんかなりたいんだよ」
「あーそれはね……やっぱさ、みんなの役に立ちたいじゃん」
「は?」
「私ってマネージャーでしょ?みんな頑張ってるのに何もできないのが辛いの。魔法使いだったら魔法で何でもできるかなって」
「…………」
「?大ちゃん?」
「バカかよ……!」
「ばっ、ばかって!」
「お前はいるだけでいいんだよ!何か特別なことができなくたってな。料理ができなくてもいい、俺がいるから、とにかく今まで通りやってればいいんだ」
「大ちゃん……」
「だからあんまり変なこと考えるなよ。俺を心配させるな」
「……うん」
「ったく、さつきは」
「ごめんね。明日も部活頑張ろう?」
「当然だ。休むなよ」
「あはは、大ちゃんこそね」



「……つきちゃん、さつきちゃん!」
「っえ?」
「どうしたのぼーっとして。あたし心配しちゃったよ」
「ごめん。昔を思い出しちゃってさ」
「そうなんだ、びっくりしたよ」
「で、どうしたの?」
「あーなんか国語の宿題でなりたいもの書いてこいってあったじゃん。あれ何書くのかなって」
「なりたいもの……?」
「そー!あたしは看護婦とか書こうと思ったけどさーやっぱありきたりだし意見を聞こうかなって思って」
「…………い」
「え?」
「――魔法使いになりたい」


(そうしたら私は何でもできるよね?)

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