黒子のバスケ | ナノ
もし


桃黒寄りです。かなり雑。



「もしボクがイケメンで存在感があって女の子にモテモテだったら、桃井さんはどうしたんですか」

それは、いつも冷静な黒子らしかぬ発言であった。
これには流石の桃井も面食らったようで、きょとんとして少し首を傾げてしまった。

「テツ君、それどういうこと?」

言うや否や、桃井にはある核心めいた推論が頭をよぎった。
ああ、これはきっと皮肉だ。
桃井は以前、黒子に自分のことがなぜ好きなのか問われたことがある。
この系統の質問は多いから、皆に答えたように、さりげなく優しいからと答えたけど、まさかその返答がこんな歪んだかたちで自分に帰ってくるなんて。
彼は、全く分かってなかったのだ。
彼女の気持ちを。

「……ねぇテツくん。例えば、テツ君がよく行くマジバってあるじゃん?
あれが高級な感じのお店になっちゃったらどうする?勿論中身とかは全部元のままでだよ」

黒子は桃井の意図の分からない質問に少し困惑した。
それに自分の質問が無視されてしまったように感じたので、むっとした表情で答えた。

「そりゃ、行きにくくはなりますけど……それでもマジバなので好きだと思いますよ。
バニラシェイクもあるんですし」
「それと一緒だよ」
「?」

桃井は、まるで我が子を見つめる母のような柔らかで暖かい微笑を浮かべた。

「テツ君はテツ君だよ。芸能人でも人気者でも、女の子でも犬でも猫でも宇宙人でも。
テツ君がテツ君なら、私はずっと好きだと思うな」

黒子は、桃井が先程そうだったようにきょとんとすると、ようやく言われた意味を理解したのか今度は耳まで夕焼け色に染めた。
聞いたことをうつむきながら後悔すると、黒子は諦めたようにため息をついた。

「よく、分かりましたけど……」

――ボクはどのように応えればいいのでしょうか。

1週間前からやっと付き合い始めた彼女の可愛い笑顔を見ながら、黒子は嬉しさともどかしさで窒息しそうになった。

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