「まぁまぁ!いらっしゃい、凛ちゃん。久しぶりね〜元気してた?」

『ご無沙汰してます…』


リクオの母・若菜にペコッとお辞儀をする凛。彼女は今、リクオ達によって強制的に奴良組本家に来ている。


「ご飯食べてくでしょ?ちょっと待っててね、もう直ぐ準備できるから♪」

『…ありがとう、ございます』


彼女はお礼を言い、リクオに連れられ客間へと向かった。そして部屋に入れば、凛を囲むようにしてリクオと氷麗は畳に座る。


「このアザ…一体どうしたのよ。」

「話してくれないかな、門井さん。」

『……………』


湿布をはり、氷を当てて治療をする氷麗。眉を寄せて真剣な眼差しを向けるリクオ。転んだという嘘が通じないと分かっている今…凛は嘘を言うわけでもなく、ただただ黙りと口を閉ざしていた。
結局、
「ご飯の御用意ができましたよ。」
ーと、真意を問えないまま夕食の知らせが来、この話は一旦終わることとなった。


「おぉ、凛ちゃんじゃねぇか。息災かぃ?」

『……お邪魔、してます…。』


何処かへ出掛けていたのだろう。
途中帰宅した鯉伴も食卓に加わり、何気ない話でほのぼのとした時間が流れる。勉強やテレビの話などたわいない話をしながらご飯を食べ、あっという間に過ぎる夕食の時。


『(…やっぱり…奴良組はまだ、昨日の事を知らない…)』


最後までいつも通りの雰囲気だったことから、凛も昨日の件がバレてないのだと確信を持ち始める。
だが、疑問は残る。
例えば、何故あの男は彼女の事を奴良組に伝えなかったのか。あの男はもしや奴良組の妖怪ではなかったのか。
色々と疑問が湧くも、それを聞いてしまえば自ら明かしているのと同じだから聞けない。

そんな事を悶々と頭の中で考えている凛に、可愛らしい声が聞こえてきた。


「凛ちゃん! お風呂わいたから、せっかくだし入らない?」

『…い、いただきます…。』

「はいどーぞ! ごゆっくり〜。」

「…………。」


若菜さんの手の中にあるバスタオルと寝着セット。一応質問はしているが、入らないという選択肢はないと暗示しているその姿に、凛はおずおずとそれらを受け取る。
「今なら誰もいないと思うわよ、一番乗りね!」
その言葉に不信にもホッとする凛の姿を、こっそりと影で見ている者がいることに…彼女はまだ気付いていない。



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