邪魔

1人、2人、3人……
日本に引っ越してきて、これで何人目かな。


「?
誰だよ、お前。」


1本の電話からきた指令。
今日のターゲットはこの男。


『…青木保孝、34歳。
Desynaの独り占め、および、Desynaの支払い料金を滞納。』

「…何だ? もしかしてお前もコレが欲…」

『審判は下された。
お前は…私が責任を持って排除する。』

「……はぁ?」


あぁ…面倒くさい。
雨が降りそうだし、さっさと終わらせよう。


「なっ…!? ば、化け物!??」


右手を前に出して掌を上に向ければ、1本の木が生えて成長し始めた。
小さい頃からあったこの力。
私としては既に見慣れているけれど、普通の人からしては有り得ない光景。
化け物だなんて、もう言われ慣れている。


「うわああっっ!!!」

『…逃げないで。面倒。』


弓を形成したら、次は矢を。
先程と同じように掌から生えてくる木が、立派な弓矢を作り上げた。

そしてポツポツと降り始めた雨。


『…早く帰ろ。』


雨が降って面倒なのもあるけど、
何よりも…


『嫌な予感がする…』


完成した弓矢を手に、逃げた男を追う。
弓矢を構えて矢を放つと、それは男の脚に命中した。騒がれるのも面倒だし、次の矢で終わりにしよう。そう思い、2本目の矢ができた直後、すぐにそれを放った。
なのにー


『……(妖怪?)』


邪魔してきたのは、白い髪色をしたロン毛の男。
妖気がすることから妖怪なのは伺えるが…もしこれが奴良君ところの妖怪だったら非常に面倒なことになる。
奴良君には…私がこんな事してるの、バレたくない。
……どうする?
この妖怪も、ここで消してしまう?


「あっ、おい!」


本日の3本目の矢を形成しながら考えていたら、白髪の男が叫ぶ。
何だと前を向くと、青木が血を流しながら逃げていた。……あぁ、青木もこの白髪の男も、面倒くさい。
取り敢えず、ターゲットの青木を先に始末しよう。
そう思って追い掛けようとすれば、目の前に立ち塞がるのは白髪頭の妖怪。


『邪魔しないで。』

「…なっ……、え……?」

『これ以上邪魔するなら、貴方から先に殺す。』


何をそんなに驚いているのか分からない。
今は青木の始末が最優先だ。

構えていた矢をギリリッと音を立てながら、妖怪へと矛先を向ける。
…何でかな、相手の妖怪は初対面な筈なのに、何故か懐かしく感じる。
雰囲気が? 声が? 目が?
一体何処の誰と似てるの?
…分からない。


『さようなら。』


これ以上考えては駄目だ。
そう脳が警戒を出すため、私は矢から手を離した。
風を切り、妖怪へと飛び去ってく矢。だが、命中すると思ったその矢はあっさりと妖怪の手におさまる。


「…お前なのか…ここ最近騒ぎの犯人は。」

『かもね。』

「…どうして殺した。」

『仕事だから。』

「さっきの力はな……」

『ねぇ、邪魔なんだけど。』


一本ずつ矢を射っても、きっとまた避けられる。
ならば…


『剣樹地獄』

「…おいおい…随分とおっかねぇ技だな。」


辺り一面に広がるのは、樹、草、花、実…
けれど全てが剣の如く鋭いため、迂闊に近付いてはその身を切り裂いてしまう。


『自業自得。
私の邪魔しなかったら、死ぬことはなかったのに。…精々あなたの血でこの子達を潤してあげてね。』

「……ちっ」


刀を引き抜き、それを構えるリクオ。
雨は止むどころか、酷くなるばかりだった。



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