見逃す
「ふぁ〜あ…」
『……また欠伸。寝てない?』
「うん…あれから1週間経ったけど、まだ犯人捕まってないし。また起きないとは限らないからね。」
『……そっか、大変だね。』
お昼休み。
いつものように屋上でお昼ごはんを食べていたら、門井さんに睡眠不足なことを指摘された。
浮世絵町で被害者が出て1週間…
あれを最後に、まだ次の被害者は出ていない。
「もうそろそろ、また事件が起きるんじゃ…って思うとジッとしていられなくて…」
『…手掛かり、何もないの?』
手掛かり…か。
ないような、あるような…微妙なところだ。
あまり頼りにならない情報に溜息が出そうになるのを何とか抑え、何気なしに、聞いてみた。
「<デザイナ>って知ってる?」
『…デザイナ?』
だが、やはり答えは予想した通りのもので…
『…ごめん。何も知らない。』
「そう、だよね…ごめんね、変なこと聞いて!」
お父さんから受け取った<デザイナ>という粉の情報。これがどれだけ確かな情報なのかは分からないけれど、なかなか手に入らない証拠にボクは確かに疲れていた。
だからこそー
「リクオ様…」
「ん? 何? 氷麗。」
「…お昼休みの時、門井さん…何だか少し変じゃありませんでしたか?」
「…そう? 気にし過ぎじゃない?」
帰宅後、氷麗に言われたその言葉。
氷麗でさえ気付いた彼女の違和感に、その時のボクは気付くことができなかったのだ。
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