再び
『ふわぁ……眠い……』
「おはよう、門井さん!
……何だか随分と眠そうだね?」
『……おはよう。』
学校への道を歩くのは、最近よく見慣れた2人の姿。眠た気な凛と、眠そうにはしてないが目の下に薄らとクマを作ったリクオが並んで歩いている。
『あ。そうだ…これ、あげる。』
「……へっ? クッキー!?」
『うん…昨日お世話になったから。家族皆で食べて。…と言っても、屋敷にいる全員分はないけれど。』
「ありがとう! 皆喜ぶよ!!」
『…一応味見したから大丈夫…とは思う。でも不味かったらごめん…。』
「……これ手作り!? 凄っ!!」
可愛くラッピングされた袋の中には、熊や兎の形をしたクッキーがたくさん入っていた。どうやらチョコとバニラ味があるようで、茶色と白の2色ある。
「本当お菓子好きなんだね〜。昨日、帰った後にわざわざ作ってくれたの?」
『うん…暇だったから。』
リクオは嬉しそうにクッキーの入った袋を見つめながら歩き、凛は少し照れ臭そうに余所を見ながら歩く。
2人の関係を知らない人はその様子を見て、2人を微笑ましく見ているが…本人達は気付くよしもない。
そんなどこかホッとするような朝だったが…それは教室に着くや否や崩れ去ることとなる。
「おいっ見たか今朝のニュース!?」
「見た見た! また例の連続事件でしょ!?」
「またいつも通り木になってたんだってよ!」
「しかも浮世絵町で起きてたし…」
「こわい…早く犯人捕まらないかな…」
ザワザワと不穏な空気が流れる教室に、凛は不思議そうにするも、リクオは直ぐに何の事かを察知して難しい顔になる。
「昨日、やっぱり門井さんを送って正解だったよ。」
『? どうして?』
「門井さんを送った2時間後ぐらいに、今度は浮世絵町で事件が起きたんだよ。
見廻りしてたのに…未然に防げなかった。」
『…だからか。』
「え?」
『…目の下、クマ、できてる。』
「…あはは…あんま寝られなくって。」
実は凛を送った後、リクオ達は見廻りに出ていた。今まで事件が起きた周辺を手分けして探り、怪しい者がいないかを見廻りしていたのだが…それが徒になったのかもしれない。
浮世絵町ではまだ起きていなかった故に、浮世絵町の見張りは手薄だったのだ。
「…早く何とかしないと…」
『………無理しないでね』
「……うん、ありがとう。」
凛の言葉に一瞬目を驚くリクオだが、直ぐに嬉しそうにお礼を言った。
最初の頃の彼女ならきっとそんな優しい言葉なんか口にしなかったであろう。それが今は、間はあるものの、彼女の口から出ているのだ。
「(門井さん…少し変わってきたなぁ。)」
良い方向に変わってきた彼女に、リクオは喜びを隠しきれないようで…
『…何にやついてるの?』
「え、あ、いや、何でもないよ!!」
人の感情に鈍感な凛にすら、ツッコまれる程であった。
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