活動開始

「…送って良かったかも。あんなに騒ぎになってるのにあの事件を知らないなんて。」

「ニュースとか見ないんでしょうね…全く、無用心なんだから。」



門井さんを送った後、氷麗と青田坊に挟まれながら帰路を辿るリクオ。マンションの立派さにも驚いていたが、情報の疎さにも驚きを隠せないようだ。


「にしても、やっぱり妖怪の仕業なんですかねぇ」

「…どう考えても人間には無理よ、あんな殺し方。」


青と氷麗がそう議論するのを耳にしながら、リクオは今回の一連の事件について考えた。

〈人間業とは思えない殺害方法〉…

それは、あまりに奇妙だったのだ。
何をどうやったのかは分からないが、なくなった人は皆〈木〉になっていたのだ。

一見ただの枯れ木に見える。
だがよくよく見ると…まるで木に取り込まれたように、人が幹の中にいるのだ。そしてその木の周辺には真っ赤な葉が散り積もっている。

人を木から取り出すことも不可能。
尚且つ、その葉の成分を調べてみれば、幹の中に取り込まれている人間の血と同じデータだとのこと。



「新しい情報は他にないんだよね?」

「はい、今のところはそれだけです!」


鴉天狗や三羽鴉、河童など、情報収集に長けた者に集めさせた警察の調査から分かったことは、それだけだった。あとは…警察の進み具合はあまり良くないとのこと。



「…早く何とかしないと、益々被害が増えてしまう。氷麗! 青田坊!」


自分達の名を呼ぶ主に、氷麗と青田坊が振り向けば…


「被害が広がってるんだ…これ以上、奴さんの好きにはさせねぇ。オレ達も本腰を入れるぞ!」

「「はい! / へい!」」


いつの間にやら妖怪姿へと変えたリクオ。
赤い目を鋭くさせてそう言うリクオに、氷麗と青田坊は奴良組も本気でこの事件に関わるのだと察する。

今まで、自分達が妖怪であることから人間界の事件に介入することを避けていたが…人間ではないなら、むしろそれは自分達の出番だ。


「さっさと敵の尻尾を掴むぞ!」


人間ではないと高確率で分かった今、もう遠慮をする必要はない。
そう言わんばかりに、羽織り物を翻しながら歩むリクオを筆頭に、彼らは夜の闇へと姿をくらました。



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