母は強し

『……美味しい…』

「だろ? 若菜の手料理ほど美味しい物はねぇ!」

「あら、もう〜鯉伴さんったら、大袈裟よ!」

「……ごめん、うちの両親バカップルなんだ。」


ほのぼのと食卓を囲む奴良家族。
いつもの光景…に凛がプラスされているため、周りの妖怪達もそわそわとしている。


「若のアレ…ですかね?」

「いや、あの様子じゃあ友人だろ。」

「にしても何者だ? 妖怪が見えるらしいが」

「でもあの人、最近若が気にかけてた人じゃね? 虐められてるっていう…」


陰でコソコソと野次馬根性を丸出しにしている小妖怪を追い払い、そして時々バカップル両親に突っ込みを入れるリクオはかなり大忙しだ。


「本当ごめん…皆騒がしくて…」

『…別に。むしろいいんじゃない? 楽しそう。』


恥ずかしそうに謝ったリクオだが、ふと門井さんが一人暮らしなのを思い出して罪悪感に駆られる。


「…そういえば門井さん、一人暮らしなんだよね。…寂しくない?」


賑やかな我が家を見て、彼女は遠く離れた家族を思い出すのでは…? 寂しくなるのでは…?
そう心配したもののー


『…寂しいってどういう感情なのか分からない…だから寂しくないんだと思う。』

「そ、そっか…」


…帰ってきた答えに少しホッとした。


「(いや待て待て待て、これは果たしてOKなのか!? 寂しい感情が分からないって…スルーしていいのかこれ!??)」


前言撤回。
ホッとするどころか余計混乱に陥るリクオ。
だが対して凛は何も思ってないようで、箸を止めることなくご飯を食べ続けている。


結局、
若菜と凛の出会いや鯉伴と凛の出会いなどを話のネタに、いつもより少し賑やかな夕食はあっという間に終わった。
そのため、そろそろ帰ろうとする凛だったが…


「そうだわ! 今日はもう遅いし、明日は土曜日だし、今夜うちに泊まっていきなさないよ♪」

『さ、流石にそれは…』

「いいじゃない〜! あっ、そうだわ、そういえばお風呂が沸いてるから、女同士一緒に入りましょう!」

『え、いや、え…』

「(門井さんって…以外と押しに弱い!?)」


ニコニコと話をどんどん進める若菜に、彼女も珍しくもたじたじになる。そしてそんな彼女の様子にリクオも驚きを隠しきれないようで…


「母さんって……凄いな……」

「若菜は強えぞ、色んな意味で。」


若干引き笑いするリクオの肩に、ポンと手を乗せ…鯉伴は頷いたのだった。



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