牛乳に導かれて
「はいこれ。牛乳、1本あげるわ!」
『え、でも…』
「いいのいいの! どうせまた明日買い物来るし、気にしないで!」
『あ…ありがとう、ございます。』
とある日の夕方のこと。
多くの主婦が集まるスーパーの一角には、若々しく可愛いらしい女性と凛が会話をしていた。
「実を言うと…前からあなたとお話ししたかったのよね。その制服、浮世絵高校でしょ? 私の息子もそこに通ってるの!」
『そうですか…』
「そうなの!
でも、あなた偉いわねぇ。よくここに買い物に来てるけど、おつかいかしら? 親孝行ね!」
『いえ…ただ自分が食べたい物を買ってるだけ、です。一人暮らしだから…おつかいじゃありません。』
凛の言葉に、その女性は一瞬驚いたようにキョトンとする。だが直ぐに、パンと音を立てて両手を合わせると、満面の笑みを浮かべながら口を開いた。
「良いこと思いついたわ!
今夜うちの家で夜ご飯、ご一緒しましょう!」
結局、
スーパーで出会った女性に「遠慮しないで」と最早強引に連れて来られた凛。目の前に広がる大きな日本屋敷みたいな家に、流石の彼女も驚きの表情を見せる。
そして
「ちょっとここで待っててくれる?」
と言って凛を残し…中に先に入っていった彼女は、前方にいる者に少し慌てた様子で話し掛けた。
「首無君!」
「お帰りなさいませ、若菜様。そんなに急がれて…何かあったのですか?」
「うん、あのね、お客さん呼んじゃったから、悪いんだけど…皆に隠れて貰うように言ってくれないかな?」
凛が出会った女性の名は、奴良若菜。
2代目奴良鯉伴の妻であり…
浮世絵高校に通う3代目奴良リクオの母である。
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