微妙な変化

「それにしても、本当、嫌がらせが終わって良かったよ! 良かったね、門井さん!」

『うん、朝から掃除しなくていい。楽。』


猫の騒動があった日から早くも一週間。
あれから嫌がらせはパタリとなくなった。動物をあのように使って嫌がらせをしたことに、流石の周りも「酷い」と口々に言ったからだろう…。嫌がらせの犯人は未だに謎のままだが、首謀者も周りの反応を見て自重したようだ。


「っクシ!!」

「あら、風邪ですか!? リクオ様!」

「いや、多分猫の毛だと思う…」

『…猫、飼ってたんだ。』

「いや、最近飼い始めたんだけど…ミケって名前でね、警戒心が高いんだよ〜可愛いけど。」

『ふーん…』


苦笑いしながらもどこか楽しそうに話すリクオ。そしてそれをどうでも良さそうに適当に相槌を打ちながら、お昼のパンを食べる凛。


「やぁやぁ! やはりここにいたのだね、門井くん! 今日こそ妖怪について語り合おうではないか!!」

『うるさい。』

「君は妖怪の主が誰か知って…」

『うるさい。』

「聞いてくれたまえ! 清十字団に入ったからにはボクの言…」

『うるさい。』

「…キーッ!! 奴良君! 彼女、妖怪のことをバカにしてるよ、いいのかい!?」

「えっ!? えぇ〜と、まぁ…いいんじゃない?(バカにされてるのは清継君の方な気がするけど…)」

「そんなぁ〜!!!」

「「『うるさい。』」」


そして…
いつの間にやら清十字団の一員に(清継の中で)なっていた凛は、妖怪について語りたいがために清継に追い掛け回されており…


「やった! 今完璧にハモったね!」

「最近ますます門井ちゃんの真似が上手くなってきた気がするわ〜!」

『………………。』


何故か巻と鳥居の間では、凛の真似をすることが流行っている。
仲良く、とは言い難いかもしれない…
けれどー


「門井さん、また今日もそれだけ?
野菜もちゃんと摂らないとダメだよ!
ほら、これ食べて!!」

『い、要らない…』

「ダメ! いつか体調崩しちゃうよ!?」

『ンぐっ…!』

「いいなー。カナー、私も頂戴!」


普通に接してきてくれるリクオ達や清十字団のメンバーによって、



『………美味しい…
…ありがとう……』

「!!
(あれ…今笑った!?)

……どういたしまして!」



本人も知らないうちに…
ちょっとずつ、ちょっとずつ、
彼女は変わっていっていた。



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