歪んだ優しさ

「なぁんか面白いことでも起こらないかね〜
……ん? ありゃあ…」


ふらふらと学校の校内を歩いていれば、グラウンドに一人の女の子を見つけた。
アレは確か…リクオが気にかけてる門井凛ちゃんだ。何やってるんだろうかと、興味本位でコッソリ後ろから近づいて見るとー


『何が「普通」かなんて…もう分からないよ。』


小さな声で独り言を呟きながら、地面に穴を掘っている。その傍らには、息を引き取ったのだろう…横たわっている猫の体があった。
何の話かなんて全く想像がつかないけれど、ひたすら土を掘り返す彼女のその横顔は…少し悲しげに見える。


「にゃー!」

『………猫…』


そこで現れたのは一匹の子猫。
息をしていない猫をみて鳴くその姿はまるで…
ー 生きてるの?
ー 大丈夫?
ー 死なないで
と言っているようだ。
にゃーにゃーと鳴き続ける声は次第に大きくなり、横になっているその体へと歩み寄る子猫。


「(そうか…もしかしてありゃあ…親子か)」


母親猫だったのかもしれない…
二匹並んでみると、その子猫は亡くなったその猫にそっくりであり…仕切りに鳴いているその様子からもそう思わざるを得なかった。


「…フーッ!!!」

『…母親だったの? …可哀想。』


凛ちゃんが殺したと思っているのだろうその子猫は、母親を庇うように背にし…小さな身体を逆立て彼女を威嚇する。そんな子猫を追い払うでも宥めるでもなく、ただただジーッと見つめる凛ちゃん。
だが次の瞬間…


『…大切な人を亡くして辛いなら、楽にしてあげようか?』

「(おいおいおいおい…)」


彼女を中心に、辺りの空気がガラリと変わる。

ーこれは殺気だ。

怯え竦んでいる子猫の首へスッと手を伸ばす彼女…そんな彼女の手首をオレは慌てて掴んだ。


「お嬢さん…そりゃあちょっとないんじゃないかい?」

『……あなた、誰?』


急に現れたオレの存在に一瞬驚いたような顔を見せたものの…直ぐに面倒臭そうな顔をしてそう問うてきた。


「…そうだねぇ…
愛息子と可愛い嫁さんを持つイケメン育児パパ、とか?」



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