原因
「ごめん…門井さん…
オレのせいで…」
『…別に。
確かに毎朝毎朝、学校に来て最初にすることが掃除なのはキツイ…。
でもそれはあなたがしたことじゃない。』
「でも…オレが門井さんに告白したから、何人かの女子が君をいじめてるんだろ?」
皆様こんにちは、及川氷麗です!
門井凛へのいじめが始まって今日で三日目。
そして只今放課後なのですが…わたくし氷麗、凄い場面に遭遇しているなうです!!
『…イジメ? …違う、ただの嫌がらせ。
イジメは、被害者がそれを〈イジメ〉だと認識した時点でイジメになる。』
「…強がってるだけで、本当は傷付いてんじゃ…? だってあんなのが毎日続いてたら、やっぱ悲しいじゃん…」
『悲しくない。……掃除が疲れるだけ。』
成程、あのイジメはこの男子生徒の告白が原因だったのね! 確かにこの男、女子から人気でよく告白されてるのを見かけるわ…。
……こんな男よりもリクオ様の方がもっと素晴らしいのに…皆、目が節穴ね。
いや、リクオ様が素晴らし過ぎるから…分かる人にしか分からないんだわ!
「オレがあの時告白しなければ…」
…それにしても、随分となよなよした男ね。どうせ彼女なんて全く傷付いてないのだから、放っておけばいいのに。
『…ふーん…
……君の〈好き〉って愛情はたったこれだけの事で諦められる程弱かったんだね。』
「な、そ、そんなわけないじゃないか! こうなるって分かってたとしても、オレは君に告白してた!」
『…ふーん…
……私の幸せよりも、自分の気持ちを伝えて楽になる事を優先するんだ。』
「違っ…
……って、えぇ!? じゃあどっちなら良かったんだよ!?」
……この女…やるわね。
告白しても、しなくても、どちらにせよ…あの男の愛はそれっぽっちだったという結果になる。
『……どっちなら良かったか?
…知らない、そんなの自分で考えれば。
でも私…君のこれからの最良な選択がどれかは知ってる。』
「! …何すればいいんだ?」
『至極簡単。
私にもう関わらないこと。
それだけ……じゃあね。』
…効果音を付けるなら《ガーン…》かしら。
漫画みたいに「ショック…!」という顔をして立ち竦む男に対し、彼女はスタスタとその場を去る。
なんというか……
「相変わらず…よく分からない娘だわ。」
「へぇ〜、あーれがリクオの言ってた例の凛ちゃんかぃ?」
「そうです…本当、読めない女で…
…って、えぇっ!? 二代目ぇ!!? 」
突如背後から聴こえた声に、びくりとして振り返ると、そこにいらしたのは二代目の鯉伴様だった。
「お疲れさん。
にしても…覗き見はよくないねぇ?」
「に、二代目だって! 今私を覗き見してたじゃないですかーっ!!」
自分のことを棚に上げてニヤニヤとする二代目に文句を言うが…いかんせん、首無でも勝てない二代目に私が勝てる筈がない。
「ククッ、悪ぃ悪ぃ! いや…リクオを悩ませる女の子がどんな娘なのか、つい顔を拝みたくなってねぇ。」
「つい、じゃありませんよ! 護衛もつけてないですし! 首無に怒られますよ!?」
「そう怒んなよ、可愛い子ちゃんには笑顔が一番だぜ?」
「っ〜、からかわないで下さーいっ!!」
二代目を見ていつも思う…
リクオ様は基本若菜様に似ていると。夜のリクオ様はまた少し怪しいけれど…でも二代目ほど口がまわらない。
「氷麗ー、そっち終わっ…
げっ! 何で父さんがいるの!?」
「おい、何だよ今の…げっ! て酷くないかい?」
「もうっ、学校には来るなって言ったでしょ!!」
あぁ、リクオ様…今日もお疲れ様です。
怒るリクオ様をヘラヘラと躱す二代目はやはり総大将の子です。
心の中でリクオ様を労りつつも、私の頭は先程得た情報のこと。イジメの原因が分かったことをリクオ様に後でご報告しなくてはいけない。
でも、取り敢えずは……
「!
そうだ、どうせなら父さんも花壇の手入れ手伝ってってよ。」
「……何でオレがンなこと…」
「あ、じゃあよろしくお願いします二代目! 氷麗はもう晩御飯を作りに帰らないといけない時間ですので…先においとましますね!!」
「え、ちょ…」
「気を付けて帰ってね、氷麗。
じゃあ頑張ろっか! 父さん☆」
「……マジかよ(来るんじゃなかった)…」
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