見えなきゃいないのと同じ

『………ねぇ、』

「なんだいなんだい!? 質問ならなんでも聞いてくれたまえ!!」

『……帰ってもいい?』

「……………えええっっ!!? まだ来て10分も経ってないのにかい!?」



時は放課後。
用がない人はもう家に帰ってる時間であり、部活に入ってる人は各々の部活動に励んでいる時間帯だ。

「何が気に食わなかったのかね!?」

浮世絵高校も勿論色んな部活があるが、その中でも〈変な部〉として知られているものがある。
それはー

「清十字団に入れることほど誇らしいものはないぞ!?」

《清十字団》。妖怪を研究したり、妖怪で困っている人を助けたりする部活である。

いち早く転校生の話を聞きつけた部長である清継が、早速凛を勧誘して部室に招待したのが事のきっかけ。ちなみに、凛は行くともスンとも言わない内に、清継によって部室へ強制連行されたのである。

「いいじゃん、どうせ本人の意思確認取らずに連れてきたんでしょう?」
「嫌がってるのに無理矢理入部させるのはちょっと…」
「門井さんももしかしたら他の部活に興味あるかもしれないし…」

そして現在、
部員である巻紗織や鳥居夏実、家長カナたちが清継を制しているところである。


「何を言ってんだね君達は! 甘いぞ!!
妖怪の恐ろしさと素晴らしさを伝えるのが僕達の仕事だろう!?
ねぇ、奴良君!!?」
「え、ええっ!? ど、どどどうだろう!?」
「やめんかい!」
「イだっ!? 何をするんだ巻くん!!」


清十字団の皆はリクオが妖怪任侠一家の主であり、4分の1妖怪の血を継いでいることを知っている。そしてリクオがそれを隠していることも知っているため…このように、事あるごとにリクオに話を振る清継は部員達(主に巻)によって絞められる。

『……帰る』

「ま、待ちたまえ!!」

『……なに?』

本格的に帰ろうとする凛を、巻に絞められつつも止める清継。その呼びかけに凛は応えるものの…やはり何を考えているのか読めない顔をして振り返る。

「君は妖怪の存在を信じるかい?」

『………』

清十字団ではもうお馴染みの質問だ。
もしNOと答えれば、清継が「妖怪は実在するんだよ」と熱く力説してくる。一方、YESと答えれば今度は「妖怪は好きかい?」という質問に移り…妖怪話に花が咲くことになる。
要はどちらにせよ清継が長話をし始めるということだ。
それを知ってる皆は「きたよコレ…」と諦めと同情の目を凛へ向けるが、転校生である彼女がそんな事に気付くわけがない。
そして質問された本人はー…


『……別に。』

「別に…って、それは信じてないということなのか、信じてるってことなのか…
どっちなんだい!?」


清継の言うことは最もである。周りも口には出さないものの「確かに」と思っているのだろう…清継を静止するわけでもなく、凛の答えをただ黙って待つ。


『……信じてもないし、信じてなくもない。』

「…ん? よく分からないんだが……」

『…人間や動物、植物…色んなものが生きてて、でも滅びもしてきた。だから、妖怪とか霊とかもいてもおかしくはない…。』

「じゃあ信じてるってこ……」

『でも、いくら「いる」って信じてても…見えなきゃそこにいないのと一緒。…だから、見えてない人にとっては存在しない、見えてる人には存在している。「信じる」「信じない」の問題じゃないと思う…。
………それだけ、帰る。』


まだ会って間もない彼等だが、凛が物凄く静かな人間だということは誰もが直ぐに理解した。騒がないし、あまり喋りもしない人だろうと思われていたそんな彼女が…今目の前で長々と自分の考えを話したのだ。

そんな様子に一同ぽかーんと驚き固まり、そしてその隙にと言わんばかりに…彼女は清十字団の部室を去ったのだった。



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