ボンゴレ・ミーツ・ヨウカイ
「そういえば…奴良の親はオレたちボンゴレのこと知ってるのか?」
『知ってるよ。何なら家に…
いや、実家の方に来る?』
「へ? 実家?」
『うん、私が今いる家はいわば藤組の家。奴良組本家は別にあるんだけど…来る?』
きっかけは何気ない会話だった。
未来の戦いから帰って、何となく妖怪の話をしてた。そしてあることに気付いたのだ。私はまだ、彼等に"妖怪"をちゃんと見せていない。
「よ、妖怪…! 10代目、是非行きましょう!!」
「う、うーん…でも未来で何となく見てたしなぁ…」
『未来で見てたのは本の極一部でしょ? あの時ツナが見たほとんどは人間の血を持つ者だよ。だから生粋の妖怪はまだちゃんと見てないんじゃない?』
「いいじゃねぇか、ツナ。せっかく奴良が招いてんだから行こうぜ♪」
そんなわけで、奴良組本家にボンゴレで行くことが決定。「ボンゴレで」と言っても…メンバーはツナ、山本、獄寺、了平さん、リボーンだ。京子ちゃんやハルちゃん、その他はまた別の機会の時に家に連れてこよう。
お母さんに許可貰い、いざ、朧車で奴良組本家へ。ドキドキと緊張している彼らが面白くて…つい『侍ヘアーしないと襲い掛かってくる落武者妖怪がいるから気を付けてね』と嘘ついた自分にはグッジョブと褒め称えてやりたい。皆一斉に頭をちょんまげにして最高だった。
後々獄寺に散々言われたけどね。
"お帰りなさいませ〜!!"
『はーい、ただいまー』
「流石は日本のヤクザだな。お出迎えがマフィアより丁寧だぞ。」
「こ、これが妖怪任侠…! 成る程…!!」
「「「………」」」
皆にお出迎えされて、中へと入る。
さて…まずは最初の関門〈弱小妖怪の強気〉だ!
「んん〜? 何だコイツらは…人間かぁ?」
「10…10代目、見てください! 本物の小鬼ッスよ…!!」
「何じゃお前…軟弱そうじゃのぅ、喰ってやろうか? ゲヘヘヘヘ…」
「ひっ! ひいぃぃぃっ!? ごめんなさいおやめめくださいオレは不味いんでー!!」
「お、おいっ!? ツナ!?」
「沢田!? 何処へ行く!?」
「やっぱダメツナだな。」
『……弱っ』
人間が入ってきた時の弱小妖怪による一番最初の仕事。威嚇して、追い払うものだ。まぁ…追い払うと言っても彼らは怯えているのを見てからかっているだけなのだが。
それにしてもこの段階でこれだけビビるとは…
流石はツナだ。
「10代目ー! 何処ですかー!?」
「見当たらねぇな…」
ぎゃあああああああああ!!!!
『……あっちだね。』
悲鳴の聞こえた方へ向かえば、案の定ツナが倒れていた。見事に泡を吹いている…凄い。上の方は漏れてたけど、下の方は漏らしてなくて良かった。彼のプライドのためにも。
それにしても…
「な、何だありゃあっ!? り、りり、臨・兵・闘・者!!」
「お、おい…それ効くのか獄寺?」
「極限に変なお化けがいるぞぉっ!!」
『邪魅…何かごめんね?』
「…………」
獄寺は邪魅を退治しようとするは、了平さんはお化け扱いするは…邪魅さんマジごめん。
そんなこんなでしばらくは大騒ぎだった。
その後、まず気絶している沢田を部屋で寝かせた。それから獄寺は、目を輝かせて屋敷を探検した。眼鏡をかけて謎のメモを取っているし…中でも印象に残ったのは首無とのやり取りだ。
「首がない…なのに何故食事や息ができる!?」
「そ、それは……妖怪だからということで…」
「いや、これは…物理だ。高次元空間だ!
首のところに何らかの力が働き…」
「あ、あの…?」
「…いや、待てよ……そもそも首が浮いているということは重力がかかってないということか!? 重力の法則を無視するほどの力が首に…いや、頭にかかっていると考えれば…!」
「……あの、菜也様…助けてください……」
『ごめん、無理だわ。』
高速で何かをガリガリと書き始めたり、スマホで何かを調べたり…獄寺はもう妖怪に夢中だった。
一方、山本と了平さんは微笑ましい反応を見せた。山本は野球を教えたり、弱小妖怪と遊んだり…了平さんは青田坊に何故かボクシングを教えている。
『怖がってたのも最初だけだったなぁ…』
「う、ううーん……」
『あ、やっと起きた?』
「ぅん…? 奴良…あれ、オレ……」
起き上がったツナはしばらくボーッとしていたが、自分が妖怪を見て倒れたことを思い出したらしい。怖いお化けを見たと報告してきた。
『あれは邪魅っていう妖怪なの。あまり喋らない男だけど、義理堅いいいやつだよ。』
「そ、そうなんだ…なんか悪いことしちゃったな。」
『大丈夫大丈夫、邪魅には言っておいたし。普通の人間の10倍くらい怖がりなやつだから許してあげてって。』
「オレ超カッコ悪ぅーー!!」
ガーンとショックを受けているツナはもう元気が戻っているように見える。これならまた外に出ても大丈夫だろう。ツナに獄寺達の反応を教えながら、部屋を出た。そして愕然、何このカオスな状態。
「行くぞ〜 納豆攻撃、ドゥバー!!」
「うおっと! アッブネ!」
「ぬあっ!? かかってしまっ……臭っ!!
極限に納豆臭いぞ!?」
「んー…リンクもう少し狭めるか? もしくは妨害として雪だるまを置くか…」
目の前に広がる庭の光景。
いつもなら生い茂る木や草花が見える筈なのに…今は氷のリンク上でスケートをするバカ達の姿しか見えない。しかも数名は納豆まみれ。
「バカツナ。お前も加われ。」
バキッ!
「ぎゃっ! …イテテ…何すんだリボーン!」
「おっ、ツナじゃん。おっはー!」
「え? あ…と、凍夜さん!?
もしかしてこの氷のリンクも凍夜さんの自作ー!?」
「そうそう、楽しいだろ? 滑ってみ?」
…あ、納豆ちゃんがツナを狙ってる。しかもツナは気付いてないし、絶対にくらうな。
……あーぁ、やっぱり。納豆小僧によって、ツナは起きて早々納豆まみれになった。相変わらず可哀想なやつ、臭そう。
『つぅか何やってんの、凍夜兄ちゃんは。』
「何やってるって…見れば分かるだろ? オレ特製のスケートリンクで皆で仲良くスケートしてんだよ。」
『納豆は?』
「普通にスケートやっちゃあつまらねーからな。ハラハラドキドキする仕掛けとして、納豆小僧氏に協力を頼んだのであーる。オレ天才!」
「凍夜隊長かっけー!!」
『……バカばっかり。』
ツナも了平さんも、山本も納豆まみれ。勿論一緒に遊んでいる妖怪達も納豆まみれだ。これは洗濯が大変だぞ。
「菜也様ぁー!」
「この声……」
「獄寺くん…だよね。」
「そういえばタコヘッドは何処にいるのだ?」
『さっき首無に遊んでもらってた筈ですが…
でもアイツが私を様付けで呼ぶわけないわ。』
そう、そんなこと有りうる筈がないのだ。にも関わらず、獄寺の声は徐々に近付いてくる。
そして…
「菜也様! お帰りになられてたんですね!」
「ひぃっ! ご、獄寺くん!?」
「ほ、本当に獄寺なのか…?」
「今までで極限に不気味だぞ……!!」
『ブハハハハハッ!! に、似合わねーっ!!』
姿を見せたのは、ニコニコとオカッパヘアーをした獄寺だった。ツナと山本、了平さんは獄寺の信じられない姿に顔を真っ青にし…リボーンはと言えば、ボソッと「気持ち悪ぃーな」と呟いている。
うん、確かに気持ち悪い!
『いやー…あまりのキモさに笑った笑った!
久しぶりだね、コケちゃん。』
「はいっ! お久しぶりです! しばらく見ない間にまた一段とお綺麗になられて…」
『そうかなぁ? …それより、いつもの始めよっか♪』
「はいっ! それでは、スタートです!」
「(いつもの…?)」
手を鳴らして、獄寺ことコケちゃんは去っていく。
そんな彼女の後ろ姿は楽しそうで…見てるコッチも何だかつられて楽しくなってきた。
「あの、いつものって何? 奴良」
「何だか気味の悪いタコヘッドだったな…」
「さっきの獄寺だけど、獄寺じゃねーのな。」
『うん、山本の言う通り。獄寺だけど、獄寺じゃない。本物の獄寺はこけしになってこの屋敷の何処かにいるはずだよ。』
「こ、こけしーっ!??」
よく遊んだものだ。
こけしの妖怪である、通称コケちゃん。
こけしである彼女の身体を持ち上げて目があった人は、強制的に彼女と精神が入れ替わってしまう。それを解くには、彼女と入れ替わりでこけしに変貌したものを探さなくてはならない。
『ホラホラ! 今頃獄寺はこけしとなって泣いてるかもよ? 早く皆で探してあげなきゃ。』
「ガーン…絶対楽しんでる…!!」
『何いってんの。妖怪は基本、人に構って欲しくて、遊ぶのが大好きな奴等だよ。どんな時でも遊び心を忘れずに楽しむのが粋ってもんさ。』
「成る程…何でも極限にということだな!?」
「いいな、それ。せっかくだし楽しみながら獄寺を探そうぜ!」
こうして、獄寺のこけしver.を探すことに。
勿論簡単には見付からず…道中色んな妖怪に会った。その度に皆驚いたり、怖がってたりしていたけれど…
「なんか…妖怪と言っても、見た目が怖いだけで良いやつが多いんだな。オレ知らなかったよ。」
「だな。」
『それは奴良組だからだよ。外で野良の妖怪に遭遇したら気を付けなよ、一概に皆良いやつとは言えないから。』
「極限! その時はこの拳で倒ーす!!」
『(……その前に何故か了平さんには妖怪も幽霊も近付かない気がする。)』
途中から皆、妖怪には馴れてきたようだ。特にツナは逃げたり隠れたり気絶しなくなったから、大進歩と言えよう。
皆に会った当初はあんなに妖怪のことを隠していたけれど…こうして今は打ち明けられて本当に良かったと思う。そして、ここに彼らを連れてこれて本当に良かった!
(「あ! こけし! 奴良、これは?」)
(『んー、ハズレ。ただのこけしだね。』)
(「なぁ奴良! あれは? 獄寺に似てね?」)
(『…獄寺と同じくらい目付きの悪いただのこけし。』)
(「…む! これはどーだ!?」)
(『違いますね。はずれ。』)
(「…ん? おい、菜也。こっから声が聞こえるぞ。」)
(『…これは、』)
(「獄寺君の声だ!」)
(「こっちだな!」)
(「…お、おぉ…! あのこけしの髪型は!」)
(『紛れもなく、獄寺だね。みーつけた。』)
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