リング争奪戦、終結。


死んだと思われていたスクアーロは、実はあの日、ディーノさんらによって助けられていたらしい。なんと山本が負けることを想定し、水の中にディーノさんの部下をコッソリスタンバイさせていたとのこと。

山本どんまい…
負けると思われていたみたいだよ、君。


『あ、そうだ。リング戦が終わったら、傷…治してあげようか?』

「ぁあ"? 余計なお世話だぁ。」

『は? 人がせっかく善意で言ってんのに、なにキレてんだよ。もう一回鮫に喰われてこい。』

「キレてねぇ! 3枚に卸すぞガキぃ!!」


沢田達からしたら、スクアーロは一応敵だ。そんなスクアーロも観覧席に入り、沢田側の陣営と一緒にバトルの行方を見守っているなぅ。
…え? バトルに参加しないのかって?
そりゃ無理ですよ。途中参加なんてそんなの、後だしジャンケンみたいなものだし。

そんなわけで、今は大人しく観戦しているのだが…


「いいぞぉ…その怒りがお前を強くする。
その怒りこそが、お前の野望を現実にする力だ。
その怒りに、オレは憧れついてきた…。」


画面に映った怒るザンザスを見て、静かに呟くスクアーロ。はっきり言って理解できない…怒りに憧れるって、どういう感覚してんだろう。

スクアーロはそんな様子のザンザスの勝ちを疑いもしていないけど…


「零地点突破 初代エディション」


ボンゴレの初代が生み出した奥義を使い、ザンザスを氷漬けにする沢田。リボーン曰く、その技は死ぬ気の炎を封じるためにあみだされたようなものらしい。

ぶっちゃけ『そもそも死ぬ気の炎って何?』『炎なのに凍らせられんの?』とか色々思うことはあるけれど、それは突っ込んだ方が負けな気がする。
なんていうの?
こう…首無に『何で首がないのに食事とれるの?どうやって声だしてんの?』って聞くのと同じレベルな気がするのだ。


「もうこれが溶けることはない」

「! ではこの勝負…」

「あぁ、ツナの勝ちだな。
ザンザスは冷凍仮死状態だ…おそらく、"揺りかご"の後、8年間眠っていたのと同じようにな。」

「…話して貰うぞスクアーロ。8年前の揺りかごであったことを…」

「…お前らの想像通りだ。
9代目に奴は凍らされた…それだけだぁ。」


つまりー、
ザンザスの顔に浮かぶ古傷は、8年前の揺りかご事件で、零地点突破の技をうけて凍らされた時にできたもの。そして、それをやったのが9代目ってことだ。
…あれ? でも、まだ根本的なことが分かってない…


『…そもそもさ、揺りかごのきっかけって何?』

「それは、ザンザスがクーデターを起こし…」

『違うよ、バジル君。
それは結果みたいなものでしょ?
私が聞いてるのは、原因。何でザンザスはクーデターを起こそうと思ったのかってところ。』

「それは…、…拙者も知りません…」


バジル君は、沢田の父の弟子みたいなものだ。
実質ボンゴレNo.2の沢田父の弟子である彼が知らないってことは…それは機密事項とされているからか。それとも、その理由を誰も知らないから?

だがこの後…
その理由は予期せぬ形で知ることとなる。


「ボスは再び復活する。
何故リングを半分ずつ保管するのか…そしてボンゴレの正統後継者にしか授与されないのか分かるかい? それはリング自身にも秘められた力があるからさ。」

ボウッ

『熱っ…! …くない…?』

「リングから炎が!!」


大空以外の全てのリングを持って現れたマーモンとベル。沢田が大空のリングに死ぬ気の炎を灯すと、まるで連鎖したかのように、守護者のリングからも死ぬ気炎が出てきた。それは私の持つ夕闇のリングにも影響あるようで、リングからは夕闇の炎が出ている。
そして…


「おかえりボス!」

「……リングを……よこせ……」


リングの炎によって氷は溶け、解放されたザンザスに7つ全部のリングを渡すマーモン達。最後にザンザスの指に、ベルが大空のリングをはめると…


「…これは…力だ!!
とめどなく力があふれやがる! これがボンゴレ後継者の証! ついに、ついに叶ったぞ! これでオレはボンゴレの10代目に…、
ッ!! がはぁっ!!」

「ボス!?」

「どーしたんだ!? ボス!!」

「……リングが…ザンザスの血を拒んだんだ…」

「ムム! お前何か知っているな? リングが血を拒んだとはどういうことだ!?」


全身から血を吹き出してザンザスは地に倒れ…
その様子に何かを察したような沢田。


「ぐっ…! さぞ…かし…いい気味だろうな!
……そうだ、オレと老いぼれは、血なんて繋がっちゃいねぇ!!」

「ザンザス……」

「同情すんな、カスが!!」

「…オレには分かるぞぉ…
お前の裏切られた恨みや悔しさが…オレには分かる…」

「!
…生きてやがったのか…カスザメ…」


チェルベッロの計らいによって、観覧席にいるスクアーロの声がスピーカーで響き渡る。


「…わかる…だと…
てめーにオレの何がわかる…
知ったような口を…きくんじゃねぇ…」

「いいや分かる! 知っているぞぉ!!」

「なら言ってみろ! オレの何を知っている!!
ああ? 言えねーのか!!」


口外しても良いものなのか。
ザンザスのプライドや傷を考慮して、スクアーロはきっと悩んだのだろう。迷うように言い淀んだ。
でも、ここで言わなければむしろ逆効果だ。
知らないくせに、テキトーに知ったようなフリをしたと勘違いされるのは勿論。同情された、とザンザスのプライドは更に傷つくだろう。

それが分からない程、スクアーロはバカな男ではない。
ゆえに、スクアーロは語り始めた。

ザンザスは下町で生まれ、生まれながらに炎を宿していたこと。ザンザスの母親はその炎を見て、ザンザスが9代目との間にできた子だという妄想にとりつかれたこと。9代目はザンザスを息子として引き取られたこと。


「9代目の実子であると疑わなかったお前は、ある日全てを知ってしまったんだぁ。お前はボンゴレとは何の血の繋がりもないことを…しかも、"ボンゴレの血"なくしては、後継者として認められぬ掟を。」


9代目はただ、ザンザスを本当の息子として受け入れていたのだろう。だが、ザンザスはそれを受け入れられず、「裏切られた」と怒りに身を任せた。
そしてその怒りが、8年前の"揺りかご"に繋がるのだ。


「まだまだ青いねぇ…」

『青い? …って、何でお母さんがここにいるの!? いつから!?』

「実を言うと最初から。クライマックスが見たくって潜んでました、てへぺろ。」

『クライマックスって…』


呆れた目でお母さんを見るも、お母さんはスクリーンに映るザンザスに目が釘付け。ちなみに、スクリーンにはまたも怒っているザンザスが映っている。どうやら沢田の言葉が気に食わなかったようで、「気色の悪い無償の愛などクソの役にも立つか!オレが欲しいのはボスの座だけだ!」って怒っている。


『…血の繋がりってそんなに大事なのかなぁ…』

「…彼の場合、ボンゴレボスの息子だっていうプライドが強過ぎたのかもね。"オレは9代目の息子だから偉い"って思って育ってきた場合、スゴくショックだと思うよ。"今までの自分はなんだったんだ"ってなるし…」

『…でも、9代目は血の繋がりとか関係なく息子として…』

「うん、だからこそ、青いのよ。
9代目が愛を込めて水をあげたことで、ザンザスは立派な大きな木に育った。でも、木を支える根っ子は全て"血の繋がり"というプライドでできていたの。もし、木の根が全て消えたらどうなる?」

『…木が枯れる?』

「そう。いくら水をやろうと、その水を吸収する根がないのだから枯れちゃうわね。
…血の繋がりがなくても愛してくれた9代目の存在、血の繋がりがなくても着いてきてくれる仲間の存在…そんな有り難さに早く気付けるといいけどねぇ…。そしたらまた根が自然と生えてくるよ。今度はもっと、逞しくて強い根にね。」


ニコッとお母さんが笑い、私の頭を撫でる。
それだけで胸の内が温かくなり、ザンザスはきっと今…根を失って枯渇してる状態なんだろうなぁと思った。


「それで、どうするの?」

『………』

「どっちでも良いよ。菜也の好きになさい?」


スクリーンには、沢田側の勝利を宣言するチェルベッロの姿が。ザンザスは意識を手放し、沢田もホッとしたようで気絶している。
皆、身体中に怪我を負っていてボロボロだ。


『…もうバレてるし、治すよ。』

「そっか…じゃあ、お母さんも菜也のために一肌脱ごっかな!」


車椅子に乗ったスクアーロと共に、皆が集まってるグラウンドへ向かう。お母さんはいつの間にやら姿を変え、私も姿を変え、沢田達とヴァリアーの皆の傷を治した。
傷が癒えても体力は回復しないため、気絶した沢田もザンザスも目を覚まさないけれど…


「傷が…!」

「…あり? 傷が消えた…」

『…皆お疲れ様。
…ベルもマーモンもスクアーロも…短い間だったけど楽しかったよ、じゃあね。』

「「「………」」」


傷が癒えたことに驚き騒ぐ並盛メンバーと、
リング戦に負けたからか…黙りして暗い表情のヴァリアーにお別れを言った。
帰ろう。
元の姿に戻り、ふらつく体をお母さんに支えて貰いながら歩きだす。頑張ったね、修行の成果が出たね、ってお母さんに褒められて少し嬉しい。


「お待ち下さい」

『…チェルベッロ』

「夕闇の守護者である貴女は、常に、夕闇のリングをお持ちください。」

『そんで、沢田を支えろって?』

「…それは貴女次第です。勘違いしているようなので言わせていただきますが、夕闇のリングは大空のリングと対等です。沢田綱吉の守護者とはまた違います。」


言いたいことはそれだけです。
そう言うと、チェルベッロは姿を消した。
何が言いたかったのか…よく分からないけれど、これにて取り敢えずは一件落着。

ちょっとの距離なのに、校門まで迎えに来てくれた一旦木綿に乗って家に帰った。

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