沢田綱吉 VS XANXUS
学校サボるの、今日で何日目だろう。
ヴァリアーにいた時からずっと、学校を休んでいる。そして今日も、行く気力がでない。
その理由を、私は分かっている。
「じゃあ…皆の前で変化して、そのまま帰ってきたの?」
『…うん』
「そう…いつか話せるといいね。ゆっくりと、菜也のペースでいいから…焦らなくてもいいんだよ。」
『…うん…ありがとう、お母さん。
…私、行ってくるね、きっと今日が最後になると思う。』
「うん…いってらっしゃい…!」
今日は、大空の対戦。沢田とザンザスが戦う日だ。
どうやら本人らだけでなく守護者全員も呼び出されているようで、学校には既に全員集まっていた。
「…遅かったな。」
『………ごめん。』
沢田達の視線に気付かないようにしながら、リボーンに返事をした。遅れたことに対する謝罪か、昨日の態度に対しての謝罪か、はたまた両方か…自分でもよく分からない。
「…お待ちしておりました。
強制収集をかけたのは他でもありません。大空戦では6つのリングと守護者の命をかけていただくからです。」
「そ、そんな…ランボはまだ意識を取り戻したばかりなんだぞ!」
試合のルールを説明するチェルベッロの腕の中には、酸素ボンベで息をする昏睡状態のランボ。昼に一度目を覚ましたらしいが、まだ安静にしておく必要があるらしい。
だからこそ沢田は怒って抗議しているのだが…
生憎、その意見は通らないだろう。
何せ超重体なルッスーリアでさえ、ここに運ばれているのだから。
そんなこんなで、大空戦は急速に始まった。
フィールドは並盛中学全域。守護者全員もバトルに参加する制度…ただし、それは解毒して動けるようになってからの話だ。今、両チームの守護者は毒が注入されて身動きとれない状態にあるのだ。
『(仲間を解毒しながら戦う…集団戦だな。)』
私はと言えば…
中立の立場である"夕闇"なので、試合には参加できない。皆と一緒に回覧スペースで対戦を観ている。ちなみに"皆"とは、リボーン、コロネロ、バジル君、シャマル、犬と千種…全員沢田側の人間だ。
「菜也、お前のおかげで9代目は無事だぞ。今日、早くも目を覚まして、お前に伝言を頼まれた。」
『(…9代目から伝言?)』
「"ありがとう"…あと、"君は君のままでいい"だとさ。」
リボーンの言葉を聞きながら、回覧スペースに設けられた画面を見る。ザンザスと沢田の対戦は今、飛び道具の銃をもったザンザスの有利だ。
ザンザスのおかげで、ベルとレヴィも解毒済み。沢田の方の守護者が殺される、もしくは、毒で死に至るのも時間の問題だ。
『…皆を助けながらザンザスを相手にするなんて、無理ゲーじゃん。』
「まぁ、見てろ。」
沢田のピンチには間違いないのに、リボーンは全く動じることがない。何か策があるのかなぁなんて思っていれば、画面にベルと対峙する雲雀の姿が映った。
雲雀は毒で動けない筈なのに、自由に動き回っている…何故?
「何者にも捕らわれず、独自の立場からファミリーを守る孤高の浮雲。それが雲雀だ。
アイツは毒にも負けず、自力で解毒したんだ。」
『ふぅーん… あ、ベルのリングを弾き飛ばした…』
「上手く行けば、あれで獄寺も解毒できるだろ。」
そう、解毒するには各守護者のリングが必要なのだ。例えば、獄寺なら嵐のリングでしか解毒できない。集団行動嫌いなくせに、こういう時には雲雀もちゃんと皆を助けるんだなぁ。感心。
だが、守護者のピンチは免れても、沢田がやられては意味がない。
「…ツナの奴、スピードが落ち始めてるぜ」
「違ぇな、XANXUSが徐々にスピードを上げてるんだ。」
殴られて、吹き飛ばされて、沢田の怪我はみるみる 増えている。一方のザンザスはまだ余裕そう。
『…1つ、聞いていい?』
「何だ?」
『沢田が負けた場合、ザンザスは私達を皆殺しにするつもりなんだよね。』
「だろうな。その中にお前が含まれてるのかは知らないけどな。」
『……その時は、私ももう勝手にさせてもらうから。奴良組…いや、藤組として、好きにさせて貰う。指輪も、いらない。』
「……そうか。」
喉をごくりと鳴らして、吐き出したその言葉。
リボーンに怒られるかもしれないと思ってたのに、帰ってきたのはたったの3文字だけ。
何を考えてるのか分からない…
でも、
敢えて何も言ってこなかったのが逆に、怖かった。
それでも、戦いは止まることなく進み…
「死ぬ気の零地点突破・改」
「なるひど、だから"改"なんだな。
ツナのやつ、ザンザスの炎を吸収するだけでなく、今度はそれを自分の力に変えてんだ。」
沢田の新技である零地点突破により、形成は逆転。
あんなに余裕だったザンザスを、今は沢田が追い詰めているのだ。
そして、そんな事実を許せないのが当の本人のザンザスであり…
「ハァ…ハァ…… おの…れ…
このオレが、あんなカスごときに…くそが…くそが!
ド畜生がぁ!!
許さねぇ…ぶっ殺す!!」
ザンザスの怒りが頂点に達したことで、
ここにきてなお、増幅した炎。それと同時に、ザンザスの顔や手に、謎の古傷が浮かび上がった。
「あれは怒りだぁ………」
その様子を画面越しに観ていると、聞こえてきた第3者の声。それは、もう死んだと思われていた人のものだった。
『スクアーロ!』
車椅子に乗って現れたのは、
身体全体に包帯が巻かれたスクアーロだった。
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