6月の花嫁


「菜也、お手紙が届いてるわよ。あなた宛に。」

『私…? 何だろう…
…って、ええっ!? 結婚招待状!?』

「あら、誰の?」

『リボーンとビアンキ…
って言っても、お母さんビアンキのこと知らないか。』

「知ってるわよ? お正月のゲームの時に毒料理を作ってた綺麗な人よね。」

『(記憶力いいな…)』


びっくり。
まさか家に帰ったらこんな手紙が届いていようとは…。てゆうかあの2人が結婚…いや、リボーンが結婚することなんてあり得ない。だって、あのリボーンだぞ。愛人を何人も赤ちゃんの分際で作るあのリボーンが、だぞ。


『絶対に裏に何かある……。』

「まぁまぁ、取り敢えずドレスは用意したげるから! いってらっしゃいな。」

『お母さんは来ないの?』

「お母さんはいいわ。羽衣狐さんとのお茶会があるし♪」

『いいなー』


私もお茶会の方に参加したい。けれど、招待状が送られていたのにも関わらずもし結婚式に参加しなかったら…私は高確率でビアンキかリボーンによって殺されるだろう。そんなのは御免だ。

ってことでー
やってきた結婚式場。新婦控え室に行けば、ウエディングドレスを着た綺麗なビアンキさんがいた。


「私…6月の花嫁に憧れてて、リボーンにお願いしたら何度も頷いてくれて……」

「ジューンブライドいいですーっ!!」

「私も憧れるーっ」

『(何で雨が多くてジメジメした6月がいいのか…私には訳分からん)』


招待状が届いていたハルと京子ちゃんも6月の花嫁に憧れているようだが…いかんせん、女子力の低い母から産まれた私には全く理解できない。
そしてキャピキャピはしゃぎだした女3人に女子力が欠けた私は耐えきれず、リボーンのいる隣の控え室へとこっそり移動した。


『チャオっす…結婚おめでとう。』

「…………」

『? (え、無視?)
…てか赤ちゃんのくせにませやがって。』

「…………」


…おかしい、何故一言も話さない。
いや、話さないどころか、瞬き1つしないし生気も感じられない。
どういうこと?


コンコン

「リボーン? って、奴良さんも来てたんだ!
おっ! こっちも決まってるー!!」


入ってきたのはスーツを着た沢田で、リボーンを見て嬉しそうに話し掛けている。


「馬子にも衣装ってやつだな! つーか一言くらい言ってくれりゃーいいのに! 
まっ、でも……おめでと!」 

パキッ

「『パキ?』」


ポンとリボーンの肩に手を置けば、何やら怪しげな音が鳴り響く。ついで「もげー!!」という変な雄叫びをあげる沢田に、何なんだとリボーンを覗き込めば…


『腕がもげてる……人形?』

「誰だっ!!?
…何だ、ツナと菜也か。」

「ディーノさん! リボーンが…リボーンの腕が!!」


腕がもげたリボーンと沢田を見て、ホッとするディーノさん。
どうやらこれは…一悶着ありそうだ。そして私の想像通り、信じられないトラブルが発生していた。それは、「この結婚式はビアンキの勘違い」というものだ。
ディーノさん曰く、
ビアンキさんはリボーンがコクコクと居眠りをしているのに気付かずに結婚を申し出たらしい。そしてコクコクと(居眠りで)頷くリボーンに、OKが出されたとビアンキは勘違いをしたようだ。勿論何も知らないリボーンは、勝手に進んでいた結婚話から逃げるわけでー


『ビアンキさんのことだし、リボーンが逃げたと知ったら…』

「あぁ、ブチ切れてここの人間を皆殺しにしかねん。中止もまたしかりだ…。リボーンもそれを見越して身代わりを置いていったんだろう。」

『でもディーノさん…人形ならすぐにバレちゃうんじゃ…』

「いや、こいつはボンゴレの最新技術でつくった囮用の人形だそうだ。だからこのリモコンで簡単な動作と片言の言葉を話せる。
まぁ…本物のリボーンはオレの部下に捜索させてるし、今はこの人形に頼るしかねーってのが正直なところだ。」

「動くとウリ二つだけど…大丈夫かな…」


というわけで、ミッション「リボーン人形で何とか結婚式を乗り越えよう」が始まった。

披露宴の会場に集まれば、結構多くの人がいた。獄寺や山本の他にも、中にはDr.シャマルやランキング王子の風太、京子ちゃんの兄の了平さんまでも来ていた。後は知らない人ばかり。
だが誰もリボーン人形に違和感を感じていないようで…案外いけるかもとそう思った時、


「あら、リボーン飲まないの?」

「いらねーぞ」

「そう言わずに、はい」

「しゃ…しゃなななななななななななななななななななななななななななななな」


ビアンキが無理矢理リボーン人形にシャンパンを飲ませたことで、バグってしまったリボーン人形。勿論ビアンキも「リボーンじゃない…リボーンはどこ!? 誰が隠したの!?」と銃を2丁構えて騒ぎ出した。


『…取ってくる!!』

「え…奴良さん!?」


慌ててコソッとビアンキさんの元へ行き、リボーン人形を取って戻る。そしてディーノさんにコソッと渡せば、少し手直ししてテーブルの上に出した。


「な、何言ってんだよビアンキ!?」

「なんたって結婚式だぜ! さすがのこいつも緊張してんのさ!」

「緊張…!!
そうね私…リボーンの気持ちを無視してたわ。愛が足りなかった、許してリボーン。」

『(な、何とか乗り切った…!!)』


その後、タイミングよく新郎新婦のお色直しが入ったため、リボーン人形の調整をしに控え室へと出向く。
だがそこで「やっぱりニセモノだったんスね」と獄寺が入ってきた。姉の結婚式にロボットで代用しているのだ…いくら姉嫌いの獄寺でも怒るだろう。
…そう思っていたのだが、


「オレにも協力させてください10代目! 
リモコンを貸せ!コレは10代目の右腕の仕事だ!」


怒るどころか協力姿勢。ディーノさんからリモコンを奪い取る程やる気満々なのは良いことだ。しかし、相手は獄寺だ…安心するどころか余計に不安。
更にー


「それおもちゃかなーおもちゃだなー
ランボさんもスイッチをポチッと押してみたいんだなー、ちょっとでもいいんだけどなー」


面倒な阿呆牛にもバレてしまった。
…これはもう、


『つんだわね。』

「え"っ」

「んなー!? 諦めたー!??」


諦めモードでふうと溜め息をつく私に、沢田が何諦めてんだよと喚く。そしてそんな沢田を止めて、


「まー諦めるのは早ぇって!
もう少し頑張ってみようぜ?」


私の頭にポンと手を置いて、ニカッと笑うイケメンのディーノさん。


『…や、止めてください。惚れちゃうじゃないですか!』

「えーっ!? 奴良さんも惚れたりするの!?」


どういう意味だろう、沢田は。この世から消え去りたいのかな。


「ハハッ、こんな可愛い子に惚れられたらオレも惚れちゃいそうだな!」


ディーノさん…あなた本当に私を惚れさせる気ですか!! 最早リボーン人形とかビアンキさんとかどうでもよくなってきたわ。
まぁ、そんなことは口には出さないけれど。

結局、ランボと獄寺にバレたことで、その後のケーキ入刀で早速バカ2人がミスをしてしまうのだが…そこはディーノさんと沢田の作り話で何とか乗り越えることができた。
だが残念なことに、最後のキャンドルサービスでまたもや獄寺が失敗をした。しかも今度は、部下がいないと運動音痴になるディーノさんによりリモコン自体が壊れてしまう。そのため、上手く言い逃れも何もできない状態なのだ。

勿論、慌ててディーノさんがフォローしようとするものの…


「お、落ち着け毒サソリ!」

「何コレ。何なのコレ…?」

「いかん!! 怒りで我を忘れている!!」


ビアンキさんは完璧にバーサク状態に入っていた。しかも何故か彼女が触れている部分が次々とポイズンクッキングのお菓子になっていくのだ。
このままでは式場全部がポイズンクッキングになってしまうー
そう危惧した時、


「それがポイズンクッキングの究極料理<千紫毒万紅(センシドクバンコウ)>だ。よく到達したな、ビアンキ。」


今度こそ本物のリボーンが現れたことでビアンキの暴走はおさまった。そして、何処に行ってたのかと問う彼女に、リボーンは「これを買ってたんだぞ」とある物を渡す。


『…結婚指輪?』

「いいのかよリボーン! 結婚指輪なんか渡して!!」

「ちげぇぞ、結婚指輪じゃねぇ。あれはピアノ線が出る武器だ。」


…どうやらリボーンはビアンキと結婚するつもりはないが、ビアンキを怒らせるのはやはり避けたいらしい。


『…なんか…結婚式っていうか、ビアンキの戦闘能力を抜群に飛躍させた式って感じだね。』

「…だな。
ハハッ、協力ありがとうな! 菜也」

『い、いえ…また何か手伝えることがあったら言ってください!』


そしてこの日を境に、何となく私はディーノさんを気にかけるようになってしまったのだった。

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