今日から2年生
『行ってきまーす!』
「いってらっしゃーい!」
「「「「いってらっしゃいませー!!」」」」
桜舞うこの時期、私は早くも2年生になった。
今日は始業式で、今日から1年間新しいクラスメートと過ごすこととなる。
だから…
『京子ちゃんと花とは同じクラスになれますよーに…そして沢田達とは違うクラスになってリボーンからの干渉も消えますよーに…!』
クラス替えというのは本当にハラハラドキドキな大事な行事の1つであり、
またー
「朝から余裕だな。死にてーのか?」
こういうことは気を付けて発言しなければならない。でないと、リボーンのようにカチャッと最近聞き慣れた音で牽制してくることがあるからだ。
『いえいえ滅相もございませんオホホホホー』
「その棒読みが逆にうぜぇな。やっぱ死ぬか?」
『やめて、私後悔をしない毎日を生きてるから。だから沢田のように後悔をしてパンツ一丁で生き返ったりしないの。確実に死ぬから。』
私の肩に乗ったリボーンと話しながらも、クラス替えの結果が貼られているところへと向かう。そして高鳴る心臓を押さえながら自分の名を探していけばー
『…あった! またA組だ!
…しかも…京子ちゃんと花も一緒のクラスだ!
やったー♪』
「ちなみにツナと山本、獄寺も一緒だぞ。よかったな。」
『…………………………小細工した?』
「何の事だ?」
『したよね? 絶っ対にしたよね、その笑顔。』
もうこの1年どうなるか…だいたい予想が付いた。きっと昨年と同じようにリボーンに脅されて面倒事に巻き込まれていくんだろうなぁ、面倒くさい。
『…てか何よこの花の飾りは。
内藤ロンシャン? ハーフかな…』
名前順で書き出されてるこの一覧表だが、私の名前の2つ上の者には何故か花の飾りで囲まれていた。誰かの悪戯だろうか…よく分からないけど。
そんなことを考えていると、リボーンが横でサラッと爆弾発言をした。
「そいつはトマゾファミリーの8代目ボスだぞ。」
『よく分かんないけど、関わらないに越したことはないということは分かった。』
何? 何ファミリー? トマト?
トマトでも作ってんのかコノヤロウ。
…まぁ、どうせマフィア関係の事だろうから全力で避けよう。沢田とか山本タイプならいいけど、もし獄寺タイプの奴だったらこの上なくウザいだろうし。
それにこれ以上面倒くさいのは御免だ。
『んじゃ、私はもう行くから。じゃね。』
「チャオチャオ」
そんなこんなでリボーンと別れ、新しい2年A組へと向かう。部屋に入れば京子ちゃんと花は既にいて、また同じクラスになれて良かったとほのぼのとお話をした。そして残念なことに同じクラスになった沢田、山本、獄寺とも適当に挨拶を交わし…ついで自分の席へと座る。
「だからオレ将来マフィアのボスなんだって!」
『……ん?』
何を公言してんだ沢田は。ていうかお前は「マフィアになんかならない」っていつも言ってんじゃん、急にどうした。
何事だろうと前方から聞こえる声の主に顔を向けると、そこにいたのは机に座り、他の男子生徒と話をしているチャラチャラした男。
『(2つ前の席…名前順からして、あいつが内藤ロンシャンか。マフィア公言してるし。)』
獄寺以上にチャラチャラしている。けれど獄寺のように顔は険しくないし、むしろ…沢田のように頭が悪そうな顔をしている。
なんか鬱陶しそうだし関わりたくないなぁなんて嫌な顔をしていると…ホームルームの時間がやって来たのだろう、先生が入ってきた。
「さぁ席に着けよ。
今日は担任に不幸があったので、代理のリボ山です。早速だが今日はクラスの学級委員長を決めるぞ、誰かいねーか。」
……リボーンだ。
リボーンが先生コスプレして出てきた。
実はリボーンことリボ山が出てきたのは今日が初めてではない。昨年の授業参観の時になんやかんやで現れたのだが…まぁ、その時の話はまた機会がある時にしよう。
それにしても、何でリボーンのコスプレにいつも皆気付かないんだろう。気付くのはいつも沢田と私だけだ。後の皆はあっさりと騙されている…眼科と脳外科に行った方がいいんじゃないかな。
そしてそんな事をぼんやりと考えていれば、いつの間にやら推薦により学級委員長の候補に沢田と内藤ロンシャンがあがっていた。
沢田を推したのは言うまでもなく獄寺。一方、内藤ロンシャンを推したのは…彼の部下の1人でであるマングスタというおっさん。何故この中2のクラスに学生として混ざっているのか、そして何故周りの者はオッサンが混ざっていることに疑問を抱かないのか…。
もしかしたら…首無が首無いのにも関わらず食事を普通にしているという妖怪不思議クオリティがあるように、マフィアの世界にもマフィアクオリティがあるのやもしれん。
「簡単なルールだぞ。推薦者と代表者でいいところをアピールして、多くの賛同を得た方が学級委員だ。」
「てことはあれだよね! 沢田ちゃんとオレの自慢大会〜〜〜!! さぁ盛り上がってまいりましたーわっしょいわっしょい!!」
リボ山のルール説明を聞き、1人盛り上がる内藤ロンシャン。ハッキリ言って、ウザいし暑苦しい。
「ではオレからいかせていただきます! オレの自慢は赤点しか取らないことです!!」
『(それ自慢か?)』
「ツナもだぞ。」
『(何だお前ら。)』
低レベルの自慢から始まった2人に、当たり前だがクラスの皆は早速ブーイングを入れている。そしてそんなクラスメイトを落ち着けるため、内藤ロンシャンが何故か彼の彼女を紹介すると言い出した。
お口直しに彼女を見せるって…女の私からしたら誰得って話だけどね。
「ほらテルミ! 照れてないでその扉から飛び出しておいで!!」
パアン!!
「TELLME! TELUMI!! 超カワイー!!」
「……………バカ」
どすん…どすん……どすん…………
「えー帰っちゃうの!? もう、この照れ屋さん!」
……な、内藤ロンシャン……
彼は何者なんだろう…彼が「彼女」と言って召喚したのは、とても人間離れした女だった。身体がデカく、眉毛は繋がっていて、侍みたいな頭をしていて…妖気は感じられなかったが外見は妖怪だった。
クラスの皆もリアクションに困っている…。
そして続けて行われる低レベルの自慢大会で「内藤ロンシャンに一票入れるのはヤバいかも」という空気が流れ出した時、それは起きた。
ズガン!!
「あー! 死ぬ気弾だ、撃っちゃったよ!!」
『!! (死ぬ気弾…!? でもリボーンは撃つ動作を見せてないし…あ、あのマングスタという男か。)』
突如頭を撃たれて倒れた内藤ロンシャン。沢田のように急に服を脱ぎ、死ぬ気で何かをするのだろうと思いきや…
「ぐすっ
もうお先真っ暗コゲ。過去も真っ暗コゲ。」
「脱いだ!」
「あのロンシャンが泣いてるぞ…」
ロンシャンの様子に戸惑う沢田に、リボ山は小声で説明をする。
リボ山曰く、ロンシャンがマングスタに撃たれたのはトマゾファミリーの秘弾「嘆き弾」というものらしい。撃たれた者は1度死んでから、自分を嘆きながら生き返るとのこと。
そしてそれは確かなようで…内藤ロンシャンは体育座りで涙を流しながら語り続ける。
「うすうす感づいてるさ。オレの周り舌打ち多いって。でもね、でもね、こんなオレにも親友はいてさ…何でも話せる最高の理解者だった……。
でも去年、そんなポチも散歩中に他界。」
『…クスッ…(犬かい。てか内藤ロンシャン、嘆きモードになってる方が面白いじゃん。)』
笑いそう…でも笑えない。
皆かなり同情して気分が重苦しいもの。そして同情した皆は…
「あいつ……実は寂しーやつなんだな。」
「なんかロンシャンかわいそー。」
「学級委員くらいやらせてやろうぜ」
などと、ロンシャンに1票を入れ始めた。
どうやらこれが嘆き弾の威力らしい。
嘆き弾はその悲しみ故に、周りの人間を同情させることができるようだ。
そんなこんなで学級委員は内藤ロンシャンに決まり…ロンシャンの部下と思われる人2名が加わって、マングスタ含む3人によるロンシャンの胴上げが行われたのだった。
おまけ
『…………』
「菜也、あんたあーゆーの嫌いでしょ。」
『むっ…そう言う花も嫌いでしょう? あーゆーうるさいの。』
「私は同学年の男子は全員猿に見えるから嫌いよ。」
『私より質悪いじゃん。』
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