餅つき


「チャオっす!よく来たな。」

「よく来たなって…そっちが私達を呼び出したんじゃないの。面倒くさい。」


あぁ…帰りたい。
何で新年早々リボーン達と関わらなくちゃいけないのか意味が分からない。しかも私だけが巻き込まれるのならばまだ許せるけど、今回は藤組を巻き込んだものだから非常に大迷惑だ。


「んで、あいつらは全員妖怪なのか?」

「…そうよ、今は人間に変化してるから妖怪には見えないだろうけど。」


リボーンが目を向けた先には、藤組の組員が50人くらいいる。女の人から男の人まで様々だが、人間に見える彼らは実際全員が妖怪である。


「妖怪の姿の方が面白ぇのに。」

「ふざけんなガキ。人間に変化してもらうのに、こっちがどれだけ苦労したと思ってんのよ。」


リボーンとイライラしてるお母さんのやりとりを見ていれば、沢田とディーノさんが私のところにやってきた。新年の挨拶を交わしながらも、お互いの顔に浮かぶのは苦笑い。2人もリボーンの急な命令に振り回されたのだろう。
…それにしても、何で沢田のボンゴレチームには京子ちゃんとハルちゃんがいるんだ。別にいいけど、マフィアのこと2人とも全然知らないじゃん。そしてディーノさんのチームは『何で全員で来るんだよ』とツッコみたくなるほどの人員で来ている。少しは減らしてこいよ。

そんなことを内心呟いていれば、藤組の人員を見て沢田がへぇーと声を漏らす。


「にしても…意外だな。ヤクザってもっと厳つくて怖いのかと思ってたけど、ぱっと見普通の人と何も変わらないね。」

『まぁ…そうね。』


そりゃあ…普通っぽい人達を選んできたからねぇ。今はぱっと見普通の人と何ら変わらないかもしれないけど、真の姿は普通の人じゃないどころか…人間の姿すらしてないからね?


「ハハッ、人は見かけによらねぇもんな。菜也のママンも全然極道一家をやってるようには見えねぇし。」

『…そう言うディーノさんも全くマフィアのボスには見えませんけどね。』

「うっ、痛ぇところついてくるな…。」


沢田やディーノさん、リボーン、などと新年の挨拶を交わした後、ようやくゲームの始まりの合図が鳴る。
ルールは簡単だ。
これから色んなミニゲームをやってポイントを稼いでいくのだが、合計でポイントが1番高いチームが勝つ。


「ビリは1億円。2位は5千万円罰として払って貰うぞ。」


その言葉に沢田は無理だと叫び、ディーノさんはやれやれと諦めモード。ちなみにうちの組は…


「鯉菜様、いかが致しましょう。(コソッ)」

「偽札を用意しときなさい。(ボソッ)」


ある意味で準備万端である。

そしていよいよ始まった謎の新年のゲーム。

最初はおみくじでバトルだった。
これでどうだーと叫びながら大量のおみくじを一斉に引いた笹川良平により、ボンゴレチームは一気に-17点にまで落ちた。全部凶か大凶って…あまりのくじ運の悪さに最早笑ってしまう。
ちなみにキャバッローネチームは一枚引いて1点ゲットしている。うちの組も普通に一枚だけ引いて、1点ゲット。
やっぱ普通が1番だよね。

こんな感じで、その後も羽子板バトルやらすごろくバトル、福笑いバトルなど行われたのだが…


「どうしよーっ!このままじゃ1億円借金だー!」

『(沢田のチーム…酷すぎる)』


沢田チームはメンバーが悪い。勝負して負ける、というよりも、勝ち負けがつく前に勝手に自滅していってるのだ。


「まともに勝負できてるのって…うちとおたくの組だけじゃないの。」

「はは…まぁ…よく考えたら、オレ達が大人なのに対してあいつらは全員子供だからな。」

『(何かお母さんとディーノさんがお茶呑んで寛いでるーっ!!?)』


わぁわぁと喚く沢田に、のほほんとする母とディーノさん。そんなカオスな状況を見て、リボーンがまたもやふざけたことを言う。


「じゃあ今までのはチャラってことで。かったりーから次で勝ったチームが優勝な。そのかわり負けたら10億払えよ。2位は5億だ。」


マジでか。
この台詞に沢田は無茶言うなと怒るが、ディーノは「言い出したらきかねー」と既に諦めモード。
さすがに10億か5億はやばくね?
そう思って我が母に目配せすると…
「大丈夫!うちには偽札が軽く50億分あるから。」
と、逆に不安な返事が返ってきた。むしろ何でそんなに偽札があるのさ。今度からお金使うときは一応本物かどうかチェックしよう。

それはさておき、最後の勝負は餅つきに決定。
リボーンに美味しいあんころ餅を食べさせた方が勝ちらしい。


「ふっふっふっ…この勝負、藤組の勝ちね!」

「ですね。キャバッローネチームは餅つきを知らないようですし。」

「ボンゴレも子供だけですし、大したものはつくれないでしょう。」


お母さんや陽炎達はもう勝つ気満々。てか最早勝った気でいるようだ。何やかんやで楽しそうにしてるお母さん達を見てホッとする。

そして何やかんや作り終わったあんころ餅を手に、各チームの代表がリボーンにそれを差し出しに行く。


「パサパサしてまずいな。」

「ちぇっ。」


ディーノさん達が作ったあんころ餅は、外見からして最早酷かった。そして試食したリボーンも不味いと不満げな顔をする。


「次、ボンゴレだぞ。」

「うん、これ…って……嘘ぉ!
ポイズンクッキングー!!?」


次に沢田が持ってきたあんころ餅は、虫が入った紫色のグロテスク餅だった。変な煙を上げてて明らかに食べたら危険だと分かる。
勿論それを見た沢田は負けたと嘆くが、毒餅を作った張本人であるビアンキは「どーして負けになるのよ」と反論しながらリボーンにそれを差し出した。


「料理は愛よ。愛があれば毒くらい中和されるわよ。どうぞリボーン。」

「え、まじで?」

「食うのかリボーン!?」

『(流石のリボーンでも食べたら死ぬんじゃ…)』

「…………」


女性に優しいリボーンはどうやってこの場を凌ぐのか。興味津々で事の流れを見守っていると、クピピピーッと鼻提灯を3つも出して寝始めたリボーン。
凄いな、強制終了したよ。しかも鼻提灯3つって…かつてないほど爆睡してるよ。


「仕方ないわね。あなたたちで確かめなさい。
遠慮せずに、さぁどうぞ。」

「なぁっ!?」

「来るなぁー!!」

「…菜也、何をぼさっとしてるの。あなたも食べるのよ。」

『えっ、い、いらな……
ちょっ、来ないでええええええっっ!!』



そしてリボーンの代わりに選ばれた各チームの代表者…
毒餅を持って私、沢田、ディーノさんを追い掛けてくるビアンキさんは、今まで生きてきた中で1番怖かった。

結局、リボーンは寝て、各チーム代表者の逃亡によりこの新年試合は引き分けで幕を閉めたのだった。






(『お、お母さん…ただいま…』)
(「あら。よく無事に逃げ切ったわね!お帰りなさい。ディーノさんも沢田君も逃げ切れたの?」)
(『……ディーノさんは逃げ切れたけど、沢田はビアンキの手に落ちてた。』)
(「……菜也も大変ねぇ。」)

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