急な来客


『た、ただいま〜…』

「おかえりなさーい!
…って、あら?」

「お邪魔しまーす!」

「と、突然すみません…!」

「……………」


夕方頃、
ドアの開く音がしたから玄関へと向かえば…


『ごめん…その、お友達、呼んで来ちゃった…』

「…いらっしゃい♪
散らかってるけど、どうぞあがってって!」


菜也が友達を何人か連れてきた。

……いや、別に良いけどね?
友達呼ぶのはいいんだけど…呼ぶなら事前にそれを知らせて欲しかったな!
なにせ…


「かげろうー!!
お客さんが来たから猛ダッシュで部屋片付けてー!!」

「畏まりました。」


部屋はそこまで散らかってないけれど、我が家にいる妖怪に全力で隠れて貰わなくちゃならないからだ。
あ、ちなみに陽炎(かげろう)とは私の部下です。男だけど家事を何でも熟すオトメンです。更に言うと陽炎も半妖です。


「ごめんなさいね!
それにしても…菜也がお友達を家に連れてくるなんて何年ぶりかしら。今お茶菓子用意してくるわね!」


ささっとスリッパを人数分出し、慌ててリビングへと向かう。
…うん、妖怪なし! ゴミなし!! 完璧だ!!


「鯉菜様、お茶菓子の準備もできました。後はどう致しましょうか?」

「あら、お茶菓子まで用意してくれたの?
ありがとう、助かるわ。あとは…そうねぇ、妖怪達が菜也のお友達の前に現れないよう見張っててくれる?」

「は、お任せ下さい。」


できる男の陽炎にお礼を言い終わるや否や、菜也達がリビングへと入ってくる。
一人は小柄な男の子。薄茶色の髪型で、何故か小動物のようにオドオドとしている。
二人目は黒髪で背が高い、爽やか少年。挨拶もハキハキしてて物凄く好感がよい。
三人目は明らかに不良な銀髪少年。チャラチャラとしていて態度も悪い。正直この男の子が何故他の2人と仲が良いのか理解できない。

てゆうか、この3人って…確か菜也がよく話している男の子達じゃない?
パンツ一丁になって急に暴れ出すパンツマンに、自殺未遂の野球少年、そして最後にヘビースモーカー。


『(…あれ…何だろう…
やっぱり私、この子達のことを…知ってる…?)』


実を言うと、体育祭や学校見学しに行った時にも感じていた…どこか懐かしい感じ。一方的に見かけてはいたけれど、話したことは一度もない。
にも関わらず、何かを思い出せそうなこの感じ。


『(…何かを忘れてる…? でも、何を?)』

「チャオっす!」

『……ぇ、…あ………え??』


物思いにふけっていると、突如私の視界に現れたのは…真っ黒いスーツに身を包み、赤ん坊にも関わらず二本足で堂々と立つ男の子。大きな目とクリンとした独特のもみあげに、私の記憶の欠片がピッタリと合わさるのを感じた。

そうだ、この赤ん坊の名はー


「初めましてだな、菜也のママン。
オレはそこにいるダメツナの家庭教師、リボーンだ。よろしくな。」

『リボーン……』


アルコバレーノの内の一人、殺し屋のリボーンだ。この赤ん坊もここにいる3人の男の子達も、皆『家庭教師ヒットマン リボーン』という漫画のメインキャラクターじゃないか。
前世で読んでいたのに…あまりに年月が経ちすぎて気付かなかった。いや、むしろ『ぬらりひょんの孫』の世界に生まれた私だからこそ…そんな可能性が全く頭をよぎらなかったのだ。


「…初めまして、いつも娘がお世話になっています。菜也の母の鯉菜と言います。
ちょっとぬけてる所がある娘だけど、仲良くしてあげてね!」

『ちょっ、やめてよお母さん! 恥ずかしい!』


混乱状態の頭を何とかフル回転させ、取り敢えず冷静に挨拶をした。
変な反応は命取りになりかねないのだ。
この殺し屋である赤ん坊は実に鋭くて面倒で、(本当かどうかは知らないけれど)確か読心術ができたような気がする。
お父さんやお爺ちゃんも確かに鋭いけれど、鋭さの種類が全く違う。


「ママンはツナの母親と被るからな…鯉菜って呼ばせて貰うぞ?」

『えぇ、好きなように呼んで貰って構わないわ。私は君のことなんて呼べばいい?』

「好きなように呼んでいいぞ。」


お父さん達の鋭さは、モノの本心を見抜こうとするものだ。何を考えているのか、狙いは何なのか…それを探って核心を突くやり方だ。
一方のリボーンのやり方は、確かにお父さん達のように探りはするけれど…もう少しドストレートだった気がする。例えば、隠し事や企みを察知したら、直ぐに「何を企んでいる」と銃を向けるのだ。探るよりも本人に直接聞く(吐かせる)タイプだと行っても過言ではないだろう。


「ありがとう、よろしくねリボーン君。」

「よろしくな。
それで、早速だが…」

「ん?」

「悪ぃな、さっき何やかんやで桃巨会を壊滅させたぞ。」

「………はあああぁぁぁぁ!!??
いや、別に良いけどさぁっ!!」

『「いいのかよっ!! …あ…」』

『……真似しないでよ沢田。』

「えーっ!? 真似してないよー!?」

「テメェが10代目の真似してんだろーが!!」

『うるさいよ忠犬。』

「てめっ……!!」

「まぁまぁ、仲良くていんじゃねーの?」


トラブルをよく意図的に起こすのは知っていたが…本当、悪びれずに頻繁に問題を起こすのはやめて欲しいものだ。
やって来た急な来客、しかもリボーンの主人公達に、私は平穏な日常が崩れ去るのを感じたのだった。

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