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ようやく桃巨会のアジトに着いた私とディーノさんと沢田。怖じ気づく沢田に安心しろと言うディーノさんはとても優男だと思う。
つうか王子みたいなイケメンぶりに優男って勝ち組じゃん。
「そういやぁ…菜也は怖くねぇのか?」
『んー…逃げ足にはまぁ自信あるし?』
「逃げること前提!?」
沢田にだけは突っ込まれたくない。お前の方が逃げ腰半端ないからね!?
そんなことを話していれば、遂にある部屋に辿り着く。ドアの前に山本達の鞄があることから、この部屋にいるのは違いないだろう。
そのままガチャッとドアを開けると…
『……全然大丈夫そうじゃん。』
「な…ヤクザを締め上げてるー!?」
「! 10代目!!」
「なんだ、元気そうだな!」
ヤクザにやられるどころか、ヤクザをフルボッコにしてる2人の姿があった。お互いにホッとする沢田達だったが、奥から組長らしき者が仲間を連れて出てきた。今まで獄寺達が倒したのはきっと下っ端だろう…雰囲気が全く違うのが分かる。
何やってんだてめーら?
そう聞いてくる組長に獄寺が食いかかろうとするが、それはイケメン王子ことディーノさんによって止められた。
「オレはキャバッローネファミリー10代目のディーノだ。今回の件はこちら側のミスだ、悪かった。お詫びに、怪我人全員分の慰謝料はもちろん、部屋の弁償もしよう。それで引いてくれないか。」
「ファミリー? 何言ってんだコイツ。ここは日本だぞ。金はいただくが、お前達は帰さねぇぜ。」
あーあ。
ディーノさんはマフィアなのに…こいつバカだな。
相手の返答に対し、交渉決裂だな、と言いながらディーノさんは鞭を構える。どうやらディーノさんの武器は鞭なようだ。
巻き込まれないように一歩後ろにさがるや否や、鋭い音を立てながら動き出す鞭。
だがそれはー
ベチッ!!
「うがっ!!」
バチッ!!
「うわっ!!」
ガスッ!!
「だっ!!」
『……は?』
敵にではなく、何故か獄寺、山本、そして鞭をふるった本人のディーノさん自身に当たってしまった。しかも3人ともそれぞれ目に当たったため、あまりの痛みに膝をついている。
『逆に目だけを狙うなんてすごいな…』
「何を感心してんのー!?
てかディーノさん、部下がいないと運動音痴になるんだったー!!」
『(ナンダソレ……)』
沢田の意味分からない発言に内心突っ込みながらも現状整理。ディーノさんの攻撃?で戦力がなくなった今、動けるのは私と沢田しかいない。そしてそんな私達に敵は「勝手に自滅しやがった」と大爆笑している。
でもそんなことより…
『(…リボーンはどこだ?)』
彼ならきっといつものように沢田に死ぬ気弾を撃つだろう。そう思いつつも赤ん坊の姿を探していると、突如ブーブーと鳴るスマホのバイブレーション。
こんな時に誰だよ、なんて思いながらもそれを開けば…
From クソガキ
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今回ツナには死ぬ気弾を撃たねえぞ。
自分でその場を切り抜けてみろ。
『…あいつマジで一度絞めたいわ。』
リボーンから送られてきたそのメールが本当だとすると、この状況は非常にやばい。
というか、何でこんな事を?
そう考える私に、ふと先程のリボーンとのやりとりを思い出す。
((『行かないよ。だって、桃巨会が沢田を攫う理由がないもの。』))
((「理由はそれだけか?」))
理由はそれだけか?
それは裏返すと、他にも理由があるんじゃないのか、と言ってるのと同じ事。そしてリボーンがそれを言うということは、つまりー
『本当の理由を知ってる…ってことか、』
「え?」
私の呟きに沢田が首を傾げる。
それに、何でもないと適当に返し、私は敵を見た。
未だに何人かは笑っているものの、もうほとんどは笑いが治まっている。
「…さてと、
2度と口をきけなくしてやらぁ!!」
「ひ、ひいっ!! 誰か助けてー!!」
刀やバットなどを手に襲いかかってくる敵に、沢田は涙目になりながら悲鳴を上げる。
それでも死ぬ気モードにならない彼に、私はリボーンが本気なのだと悟った。
そして、同時に諦めた。
『 動くなっっ!!!! 』
私の大声にピタッと動きを止める一同。
それを確認した後、私はゆっくりと口を紡ぐ…
『桃巨会…
あなた達、随分と行儀の悪い連中ね。』
「んだと!?」
「生意気な口ききやがって、この女!」
『…紹介が遅れたわ。
私は藤組初代奴良鯉菜が娘、奴良菜也よ。
初めまして…以後見知りおきを。』
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