相談


「はぁー、遅刻遅刻!
……ん!? (何やってんだあの2人!?)」


朝起きてビックリ。
時計の針が指す時刻は、本来ならオレがもう家を出る時間。慌てて飛び起きて身支度をし、朝食も食べずに学校へと走る。
そしてようやく着いたかと思いきや、獄寺君は山本の胸倉を掴んでおり…2人とも険しい顔をして睨み合っていた。


「な、どうしたの!? 喧嘩!?」
「じゅ…10代目!」
「ツナ…! な、何でもないぜ!?」


険悪なその雰囲気にちょっと圧されながらも、慌てて声をかければ喧嘩をやめる2人。
そして、山本は「部室の掃除をしなくちゃな」と去り、獄寺君は「授業の準備、準備…」とそそくさと去っていった。

『……山本はともかくさ、獄寺は絶対に授業の準備をするタイプじゃないよね。』
「うわぁっ!!? いつからそこに!?」
『結構前から君の後ろを歩いてたよ。私も遅刻したから。にしても沢田、走るの遅いね。』
「うっ…それより、居たなら声かけてくれればいいのに!」
『えー、だって特に話す用ないし。』

話す用がないからって…。
何というか…はっきり言ってオレは少し奴良さんが苦手だ。というのも、山本の自殺未遂の1件があったからなんだけど…
でもそれより、何だか彼女に一線引かれているような気がするのだ。他の皆は普通に楽しく一緒にいるのに対して、奴良さんだけは自らその輪に入ろうとしない…それどころかその輪に入ることを拒絶している気がする。

『沢田、何かしたの? あの獄寺が君を避けるなんて…気持ち悪いんだけど。』
「き、気持ち悪いって…(獄寺君に怒られるぞ)」

思い出すのは先程の2人の様子。明らかに2人ともオレを避けていた…。

「…そういえば、あの2人だけじゃなくて他の皆もオレを避けてる気がする。」
『他の皆?』
「うん。
ハルは…話しかけてもいないのに、オレを見たら‘あー忙しい、忙しい!’って言いながら慌てて何処かへ行くし。
ランボに関しては…‘馬鹿め、分かるまい!’ってオレから隠れて一人隠れんぼしてるし。
ビアンキは…オレが話しかけると、電池が切れたように無言になって動かなくなるんだよな。」

気が付いたらオレは自分の周りの事を彼女に話していて…
そして彼女は、

『…取り敢えず、ハルって人はあの川で君に襲いかかった変な女の子だよね?
そしてランボは変な牛柄の服を着た5歳児。
……ビアンキって誰。』

首を傾げながらそうオレに聞いてきた。
ーあれ? そういえば…
獄寺君や山本、ハルはオレの家によく来るけど、奴良さんってオレの家に来たことないから…知る筈ないよな。

「ビアンキは…獄寺君の姉でもあり、リボーンの4番目の愛人…でもある人。」
『……会ってみたいような、会いたくないような。』
「ビアンキが作るご飯は全て毒だから、絶対に食べちゃダメだよ!? 倒れるから!!」
『……あれ? それってさ…もしかしてこの間体育祭に来てた外国人美女? あの人が差し入れしたら、大量に食中毒の生徒が出てたけど…。』
「そ、そうそう! その人!! てか見てたの!?」

ランボやハルのことも…ちゃんと自己紹介したことないのに。よく見てるなぁ…今度ちゃんと紹介しよう。

「オレ何かしたっけー!? 嫌われるようなこと!」
『まぁ…君が皆に何故か避けられてるのはよく分かった。…で? 何でそれを私に相談するの?』
「…え? それはー」
『…別にいいけど。
仮に君が嫌われるようなことをしたとしても、それで君を避けるのは、君が嫌な事をした相手だけだ。
皆が君を避けるってことは、皆が共有している君への隠し事があるってことじゃない?』
「……オレへの…隠し事?」

オレへの隠し事…
オレにだけ教えられないこと……


「ーあっ! 思い出した!!
明日オレの誕生日だ。」
『…………え?』
「皆誕生日パーティの準備をしているんだぞ。」


突如現れたのは、奴良さんの肩に乗ったオレの家庭教師のリボーン。
うわぁ…家族以外の人達から祝ってもらうなんて、初めてだ!!

「つぅかお前、それオレに言っていいのかよ!」
「あぁ、お前にだけ言うの忘れてたからな。」
「? 忘れてた?」
『…………。』

この時、
リボーンの「忘れてた」という言葉と、リボーンに何か耳打ちされて苦い顔をする奴良さんに…オレはもっと疑問を持つべきだったんだ。
でも、オレの頭は完璧にお花畑になっており、そんな事を全く気にしなかったのだ。

「まっ! オレはいいんだけどさ!!
オレも今まで通り何も気付いてないふりするし!」
「嬉しそうだな。」
「そ、そりゃあ……(オレの誕生日を皆祝ってくれるんだからな。)」
『………………。』


そしてチャイムが鳴る。
オレはその音で一気に遅刻していたことを思い出し、慌てて奴良さんと一緒に教室へと向かった。

教室へウキウキ向かうオレを、可哀相なものをみるような目で見てくる奴良さん…
オレはその事にすら気付かないで、ただただ浮かれていた。



(『ねぇ、リボーン……もしかして、』)
(「(ニッ)」)
(『可哀想だよ…あまりに。』)
(「あいつが勝手に勘違いしてるだけだからな。放っておけ。それに…」)
(『……それに?』)
(「おもしれーだろ?」)
(『…こっちが痛いし辛いよ!』)

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