棒倒し


「…なぁ菜也。」
『なに? 凍夜兄ちゃん。』
「棒倒しってさ…こんなサバイバルでデンジャラスなものだったっけ?」
『……少なくとも棒は使う競技だね。』



どぉも。菜也の従兄の奴良凍夜です。
今日は菜也の体育祭ということで、わざわざ東京から京都に遊びに来ています。
そして並盛のトリらしい棒倒しが先程ようやく始まったのだが…


「オレの知ってる棒倒しじゃさ…
爆弾なんて使わないし、こんな殴り合いしないし、というかちゃんと棒を使ってるんだけど。」


目の前で繰り広げられてるのは最早棒倒しとは言えないもの。組とか関係なく、最早ただの殴り合いになっている。

何故こんなことになったのか…それは、会議の結果A組対B、C組になったのがきっかけである。
大将が地面に落ちなければOKという勝負なのだが…あまりの数の多さにA組は不利に。一時はA組が反撃に出て優勢に立ったかと思いきや…
「お前今俺の足踏んだだろー!」
「お前こそ足を引っ掛けたなー!?」
というようなまるで小学生みたいな喧嘩に仲間割れする。結果、あっという間にA組の大将は地に落ちた。


「…なんつーかさ、皆ただ暴れたいだけじゃね?」
『……それはあるかも。』


落ちて、はい終わり☆B、C組みの勝利です!

ーとなれば良かったのだが、勝手に喧嘩して負けたA組にB、C組は余計腹を立てたようで…殴り合いが一斉に始まったのだ。


「…んで? ダイナマイトが使われてるのも凄ぇ変だけど、お前のA組の大将何者よ。」

『……沢田綱吉、謎の男です。』

「何で途中全裸になったんだ? てか途中頭を撃たれてなかったか?」

『全裸になったのは…さぁ、気合入れるためにじゃないかな(適当)。頭は…うん、気のせいっしょ。普通撃たれたら死ぬもん!』


オレとじいちゃんの質問に、目を逸らして答える菜也。
……これは嘘ついてるな。コイツ嘘つく時目ェ合わせねぇし。何を隠してるんだ?

叔母さんは叔母さんで「なぁんか違和感を感じるなぁ」なんて1人ボヤいてるし、叔父さんは「あれが沢田綱吉君か。見た目に反してキレると怖いんだなぁ、ハハハ! どっかの嫁さんみたいだ…いだぁっ!?」って殴られてるし。痛そう。


「……確かにいないなぁ。」


昨日の叔母さんが言っていた通り、妖怪は1匹たりともいない。
いや、いるけどね?
藤組の奴らに加えて、何故か京妖怪の奴らまでいるけどね?
でも…学生に扮している妖怪を見かけないのだ。学校の職員も全員普通に人間だし…更に言えば、あのパンツマンもバクダンマンも人間なのだ。
妖怪の血筋は全く感じられない。


「(二本足で歩く赤ん坊は見かけてないから何ともいえないが…あいつらは人間だし、放っておくか?)」


過保護な叔母さんが放っておいてるなんて珍しい…そう思っていたが、今では納得だ。
これは対処にとても困る…。


「……菜也さ、」
『んー?』


未だにドカン、ドカーン…と爆発が多発している棒倒し(仮)。
その光景から目を離さずに、オレは隣にいる菜也に話しかけた。


「菜也が何を隠してるかは知らないけど、でももし助けが必要になった時は誰かに言えよ。
叔母さんは藤組を継いでるし、オレ達だって東京から直ぐに駆け付けられる。もっと言えば…牛鬼のオジサンだってお前の為なら駆け付けてくれるさ。
だから、助けが欲しくなったら絶対に言え。
それだけは、約束だ。」

『…アハハ! 相変わらず凍夜兄ちゃんも過保護だよね! でも大丈夫。ちゃんと助けがいる時は遠慮せずに呼ぶから!!
だからその時はすぐ来てね!!』

「任せとけって!」


頬を緩ませ、少し恥ずかしそうにしながらも笑う菜也。
叔母さん達だけじゃなく、オレまでも少し過保護になってしまうのにはちゃんと理由がある。
それはー


『あーあ! 私も凍夜兄ちゃんみたいに、早く覚醒できるようにならないかなぁ〜。』

「…そのうち来るって、そんな日が!」


菜也がまだ覚醒したことないからだ。
明鏡止水などの技は人間の姿のまま使えるのだが…オレや叔母さん、親父みたいに妖に覚醒しないから未だ不安なのである。


「(…人間のまま技が使えるのも逆に凄いけどなぁ。)」


そんな事を思っていれば、棒倒し(仮)が終わったことでようやく始まる閉会式。その閉会式の為にグラウンドに集まる全生徒…男は全員ボロボロなのは言うまでもない。


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