不良番長


『今日のお弁当は何が入ってるかなー♪』

午前の授業が終わり、ようやく来たお昼休み。トイレに行って教室へ戻りながら考えるのはお弁当の中身。あぁ…お腹空いて死にそうだよ。早く食べたい。

「菜也」
『? リボー………火災が起きてそこ開けられたらアウトだね。』
「大丈夫だぞ。鍵かかってるしな。」
『最早消火器の意味無い。』

私を呼び止めたのは、消火器が収納されている所から出てきたリボーン。中をちらっと覗けば、住み心地の良さそうな立派な部屋に変わっていた。借りぐらしのアリエッテ〇かよお前は。

「昼ご飯食べ終わったら屋上へ来い。」
『何……で…って、最後まで人の話聞けよ。』

要件を言い終わると直ぐに部屋(?)へと戻るリボーン。追求するのも面倒だし、他にする事もないから言う通りにするか…。何より今は…

『お昼ご飯が私を待っている…!!』









『……わぁ、またまた全員お揃いで。嫌な予感しかしないわ。』

昼食後、言われた通りに屋上へと来れば、そこにはお馴染みのメンバーである沢田、獄寺、山本がいた。

「遅ぇぞ。今から応接室に向かう。」
『応接室?』
「そうだぞ。そこは普段使われてない部屋でな、ソファとかもあって充実しているんだ。だからそこをボンゴレのアジトにするぞ。」
「オレは10代目から見て右側に座るからな!!」
『いや滅茶苦茶どうでもいいわ』

そんなこんなで、皆で応接室に向かう事になったのだが…なにか引っ掛かる。応接室って本当に使われてなかったっけ?

「ここだぞ。入ってみろ。」
「へぇー…こんないい部屋あったんだな、知らなかったぜ。」
「誰?」
『あ。』

思い出した。
そういえば応接室って風紀委員が占領したって花ちゃんが言ってたなぁ。

「誰だこいつ…」
「獄寺、待て…」
「僕の前ではタバコを消してくれる? まぁ、どの道…たたでは返さないけどね。」

訪れた応接室にいたのは風紀委員委員長の雲雀恭弥。並盛が大好き故に、並盛の秩序を乱すものを徹底的に叩き潰し…そして群れている軍団も許さないという変な不良番長みたいな人だ。


「消せ」
「な、何だこいつっ……!?」


獄寺のタバコが気に食わなかったのだろう。トンファーで瞬時に獄寺の火を消した雲雀。
てゆうか武器持ち込みは正に並盛の秩序を乱しているように思えるけど…?


「僕は草食動物が嫌いでね…彼らを見ると
咬み殺したくなる。」

『(変な人間もいたものだ…)』

「へぇー、応接室なんて初めて入ったよ。」


獄寺や山本が雲雀を警戒する中、沢田は暢気にも2人の間をすり抜けて応接室へと入る。
あぁ…沢田小さいもんね。山本達の背で何が起こったか見えなかったんだろうね、うん、可哀想に。
勿論、そんな沢田はあっという間に雲雀のトンファーの餌食になり…ついで獄寺や山本も直ぐに倒された。


「…さて、残るは君だけど、覚悟はいいかい?」

『……。』


ハッキリ言おう。

逃げたい !!

三代目補佐の娘だし、妖怪の血が混ざってるから戦えるだろうって? そんな事ない。確かに動体視力とか反射神経はいいけど、戦闘技術なんかからっきしである。
そんな私に出来ることと言ったら…明鏡止水で逃げることだけだ。


「いつつ…一体何が……って、
ご、獄寺君!! 山本!? 何で!?」
「彼らは起きないよ。起きられないように攻撃したからね。」
「ぇ…ぇええ!? そんな…って、奴良さん!?」
「まだ先客が一人残ってるからね。こっちを咬み殺すまで、そこで待ってるといいよ。」


そう言うや否や、トンファーを持って襲いかかってきた雲雀。それを何とか避けるが…徐々に攻撃のスピードが早くなってくるそれに、冷や汗が伝う。

これはもう…使うしかない。

唯一、妖怪の血を継ぐ母や祖父から習った護身術…



『(明鏡止水…鬼發!)』

「!」

「…あれ……奴良、さん…!? 消えた!?」



キョロキョロと当たりを見渡す沢田に対して、雲雀は眉を寄せてその場から微動だにしない。その様子にこっちも不思議に思っていれば…


ビュッ

『!!?』

「……残念、外れたか。」


飛んできたトンファーに、慌ててしゃがんでそれを躱す。見えてるのかと思いきや…投げたトンファーを拾って辺りをキョロキョロとする雲雀の様子から、ちゃんと明鏡止水が機能してることが分かる。

…動物の感ってやつ…?

ドクドクと早鳴る心臓を押さえながらもそう思っていれば、雲雀は沢田に標的を変えたようで沢田へと歩み寄る。
一方の沢田は…


「うぉぉおおお! 死ぬ気でお前を倒す!!」

「何それ、ギャグ?」


リボーンによって死ぬ気モードに突入した沢田。雲雀はそんな彼をいとも簡単にトンファーで倒し…「あの2人も、救急車に乗れるくらいぐちゃぐちゃにしないとね」と山本達の方へ振り向く。
だがー


「……いない?」

『…………っ』


明鏡止水の状態で獄寺と山本の2人に触れているため、雲雀には2人の姿が見えてない。突如見えなくなった2人に雲雀は訝しげな様子を見せるが…


「まだまだぁ!! この、たわけが!!」


起き上がってきた沢田に頬を殴られ、そして…トイレのスリッパで頭を叩かれる雲雀。
なんというか…トイレのスリッパて…
死ぬ気モードの沢田はKYなのか怖いもの知らずなのか…うん、取り敢えず助かりました。


「ねぇ…殺していい?」


あ、キレた。
流石に雲雀がキレたらやばいんじゃ…?
そう危惧していると、「そこまでだぞ」とリボーンが仲裁に入る。無論、雲雀が大人しく言う事を聞く筈もないが…


「お開きだぞ。」


雲雀の攻撃を防いだまま、リボーンが取り出したのは爆弾。
………は? 爆弾?

「菜也、いるんだろ? 退散するぞ。」

『あ、はい。』

見えてるのか見えてないのか分からないが…「お前はツナと一緒に獄寺を担げ」と言う指示に大人しく従う。ちなみに山本はリボーンが引き摺っている。どんだけ力持ちなんだよ。



爆発に乗じて退散した後、雲雀にわざと会わせたと言うリボーン。勿論そんなリボーンに沢田は怒るものの…リボーンは「このくらいの怪我で済んでラッキーだったぞ」とか反省の色なしでマジでうざい。こっちは滅茶苦茶肝が冷えたのに…


『雪ん子ぉ…あの見た目も中身も真っ黒な赤ん坊妖怪を凍らしてくれない?』

「ボーッ??」


本日、身をもって学習したこと。

(沢田も被害者だが…)コイツらに関わるとろくな事がない。

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