根津


「栗原。」
「はい。」
「近藤。」
「…はい。」

午後の授業。
お昼ご飯の後で自然と眠くなる時間帯の今…
晴れ晴れとした外の天気とは逆に、重い空気がこの教室を占める。

『…花ちゃん、どだった?』
「良くも悪くもないわね。」
『言い方を変えよう。ぶっちゃけ何点だった?』
「何でアンタにそんなことぶっちゃけなくちゃいけないのよ。」

原因は理科のテストの結果。
返却されたテストの結果に落ち込む者も入ればニヤニヤしている者もいる。そして花ちゃんのようにポーカーフェイスする者もいる。何点なんだよ、吐けよこのやろー。

「沢田。」
「はい…」
「ちっ…例えばの話だが、クラスの平均よりも20点下回る生徒が一人いたとしよう。」
『(あぁ、またか…。)』

根津先生は我らが理科の先生であり、東大卒だけど性格はこの上なく残念な人である。人を見下してるのがモロ分かり…そして何かと例え話をして嫌いな生徒をいじめるのだ。

「そういう奴は大抵何事においても足でまといになる…そんな奴に生きる価値はあるのかね?」
「うわぁぁあっ!!?」

嫌な笑みを浮かべながらそう言った根津は、わざと沢田の点数が皆に見せるように、テストを返却する。

「見えた! 26点だってー!」
「あはは やっぱダメツナだなー!!」
「…次、鈴木。」
「はい。」

本当、イヤな先生だ。
テストの点数が悪いからって何でそこで生きる価値を否定されなきゃなんないのさ。

『…勉強が全てって思ってる時点でテメェのが人間的にクズだっての。』
「次、奴良。」
『…(チッ)…はい。』

名前を呼ばれ、テストを受け取りに行こうと椅子を引けばー


ガララッ


「おいっ! 遅刻だぞ!! 今まで何してたんだ!!」
「あぁっ!?」
「ひっ!!」


堂々と教室に遅れて入ってきたのは獄寺隼人。そんなふてぶてしい態度の彼に、勿論根津は怒るのだが…睨まれただけで怖気ついてしまった。ダサい。
一方、
根津を睨んだ獄寺は「10代目、おはようございます!!」と沢田に満面の笑みとクソ煩い声で挨拶する。たった1日にして怖い不良を従えさせている沢田に、クラスの場が一気に騒然もするものの…


「ふん…これはあくまでも自論だが、不良は大抵クラスの落ちこぼれと行動する。何故なら類は友を呼ぶからな。」
「……おい、おっさん。」
「!?」
「10代目への侮辱はオレが一切許さねぇ!!」
『わーぉ……』

怒った獄寺に根津は胸倉を掴まれる。
そしてニカッと超笑顔で沢田に振り返ると、「10代目、こいつ落とします?」と指示を煽る獄寺。既に根津の意識は落ちていますけどね?









結局、理科の授業は根津が気絶したことで自習になり…沢田と獄寺は校長室へと呼び出しを食らっているなぅ。

「そういえばアンタ何点だったの?」
『花ちゃんが教えてくれるなら私も教えてあげるよ。』

自習と言われても見張りの先生がいないため、おしゃべりや何やら好きな事をする皆。勿論私もそのうちの1人なのだが…そんな私の手に握られているのは理科のテスト。

『根津マジうぜぇ……』
「今更なによ。」
『「被子植物」の「被」の字。ころもへんが1本足りなくて、ネになっちゃってたの…それでピンされた。』
「細かいわねー。まぁ、生徒イジメが好きな根津のことだから仕方ないわね。」

私の解答用紙を見ながらそう返す花ちゃんは、「本当根津って東大卒だからってウザイわよね」なんて言い…

「……はぁ!? 98点!? アンタこの漢字一つで満点逃したの!? バカじゃないの!?」
『いや、何勝手に点数見とるねん! バカ言うな!!』

ちゃんと点数のところは三角折にして隠していたのに…勝手に人の点数を見るとは何事だ。

『ちょっと、私の見たんだから花ちゃんも見せなさいよ。』
「いやよ。アンタより遥か下だから! 見る必要ないでしょ。」
『いやいやいや…ぶっちゃけ花ちゃんの点数なんかどうでもいいけど、一方的に見られて終わるのはなんか気に食わない!!』
「めんどくせ! いいじゃない、どうせ点数良いんだ……か、……ら?」

花ちゃんだけじゃない。
ザワザワと騒いでいたクラスの皆も「ナニゴトだ」と動きを止める。
その原因はー



ドカアアアアアアン
ドオオオオオオオオオン



突如グラウンドが大爆発をし始めたからだ。


「な、何だ!? 何が起こってるんだ!?」
「地震か!?」
「いや、煙が出てるし…火事じゃねぇか!?」
「待て…じ、地面が! 割れたぞ!?」

授業なんか放っておいて、全校生徒がグラウンドに注目する。そしてグラウンドにしばらくしてやって来たのは根津であり、「何してるんだ」と怒り狂う。
だがー

「!! それはー!?」
「タイムカプセルなんてのは出てこなかったが…代わりにテメェの昔のテストなら出てきたぞ。しかも何だァ、この点数は? 0点…7点…
ふざけてんのか?」
「な、なな、なん…で…」

獄寺が根津に突き出したのは…根津の昔のテスト。
その後の調査で分かったことなのだが、根津の現役東大生卒業というのは偽りだったことが発覚。てか何で学校側もちゃんも調べて雇わないんだよ。

グラウンドの爆発と地面真っ二つは沢田と獄寺の仕業だったらしいが…何故そんな事をする羽目になったのかは分からない。
ただ一つ分かることは…


『獄寺はダイナマイトで…
そして沢田は素手で地面を割った…!
もしかすると…沢田は青田坊と同種の妖怪…!?』


獄寺も沢田も、
やはり只者ではないということである。




(『ねぇ、お母さん』)
(「なぁに?」)
(『青田坊って家族いるの? 子供とか…』)
(「……いない、筈……。」)
(『そっかー。』)
(「え、何…まさか青が恋しいの?」)
(『…はぁ!? や、そういうのじゃないから!』)

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