10代目
『えっえっえっ、何なの!?』
沢山のダイナマイトを沢田に向かって投げる獄寺隼人。
…いや、あれ偽物か? 本物のダイナマイトを普通の中学生が持っているわけがない。でも獄寺は一見不良だし…もしかしたらヤクザと関わりがあるのかもしれない。ヤクザ者だったら武器の一つや二つ持っていてもおかしくはない…かもしれない。
そんな事を思っていればー
ズガンッ
『……ぇ…ぅぇええっ!!?』
う、撃たれた!?
沢田が何処からか急に撃たれたぞ!? しかも脳天に見事に命中している!!
『(きゅ…救急車!? いや、警察!?)』
ポケットから慌てて取り出したのはスマホ。救急車よりも先に警察を呼ぼう…そう思ってダイヤルを押そうとするもー
「リ・ボーン!!
死ぬ気で消火活動!!」
『………………は……?』
わけがわからない……
脳天を撃たれた筈の沢田が、何故か全裸で立ち上がった。
『しかも消火活動って……
……あぁ、本当に消火活動だ。痛そう。』
何をするのかと思いきや、ダイナマイトの火を物凄いスピードで消し始める沢田。
しかも素手でだ。
絶対に火傷する。絶対に痛い。氷麗とか凍夜兄ちゃんだったら絶対にブチ切れてる。
「ハァっ!? …二倍ボムっ!!」
そして獄寺も別の意味でブチ切れている。
大量のタバコを口に加え、同じく大量のダイナマイトに火をつけ…そしてまたもやそれを沢田へと投げつけてる獄寺。
『ありゃあ…肺ガンで早死するな。』
つぅか何処にあんな大量のタバコとダイナマイトを隠し持ち歩いてるんだ。あいつのポッケはドラえもん仕様か。
そしてー
再び大量のダイナマイトを消火する沢田に「三倍ボム」を繰り出そうとする獄寺だったが…
「!! しまっ……」
『!!』
あまりの量に、導火線の付いたダイナマイトを1つ落とし…次いでボロボロと全てのダイナマイトを己自信の周りに落としてしまう。
本人ももう「終わり」だと諦めたのだろう…
逃げることもせず、ただただその場に呆然と立ち尽くす。
しかしー
「消火!」
「!!」
「消火消火消火ぁー!!」
『……動き早っ!!』
獄寺の周りに散らばる全てのダイナマイトを、当たり前のように消しまくる沢田。そして全てのダイナマイトが消されるや否や…「はっ!!」と意識(?)を沢田は取り戻す。
ーあれ? 無意識にやってたの!?
「はぁ〜っ よかった、何とか助かったー!」
さっきまでの恐い勢いはどこへ行ったのやら…
いつも通りの雰囲気で胸をなで下ろす沢田に、突如土下座をして大声を出す者が1人。
「おみそれしました!! 貴方こそボスにふさわしい!!
10代目、一生ついて行きます!! 何でもお申し付け下さい!!」
「はっ!?」
『(……10代目?)』
あの目付きの悪かったあくどい顔は何処にいったのやら…今度は超笑顔で沢田にそう言う獄寺。
てゆうか10代目って…何の10代目!?
♪ キーンコーンカーンコーン……
『! げっ…チャイム鳴った、急がないと!
あの先生五月蝿いんだよな〜!』
チャイムの音に、一気に現実へと引き戻される。
慌てて教科書を握りなおし、理科室へと走るが…
『(…沢田は妖怪……そして「10代目」……
もしかして、沢田も私と一緒で…
家が妖怪任侠一家なのかもしれない…!!)』
私の頭を占めるのは、獄寺の言う「10代目」という言葉と沢田が妖怪であるという素性(勘違い)の繋がり。
『家はまだ凍夜兄ちゃんで4代目なのに…10代目ってどんだけ古いのよ。やっぱここ京都だし、沢田も古の妖怪なのかな…
ーあれ? じゃあ獄寺は…なんだ?』
結局、私は理科室に2分くらい遅れて着き…
その15分後くらいに遅れてやって来た獄寺と沢田から…私は目を離せなくなっていた。
そして今日、
沢田と沢田を取り巻く愉快な仲間達の観察日記が始まった。
(『…ってことが今日はあったの。どう思う?』)
(「菜也…パパは反対だぞ。そんな不良と付き合うのは!」)
(『そんな事話してないから。何を聞いてたの? その耳は飾りなの? 切り落とせば?』)
(「…10代目…か。」)
(『! お母さんは何か知ってるの!?』)
(「いや、そんなに古くから続いてるなら何か偉そうじゃない? コネでも作っとこうかなって…
あ、でも奴良組が日本一になるんだったらいつかその沢田も屈服させなくちゃいけないし…コネ作ってる場合じゃ…うーん…スパイでも送っちゃおうかしら…」)
(『お母さん、平和って言葉知ってる?』)
(「そうだぞ鯉菜。戦わずして従わせる方法もきっとある筈だぞ。」)
(『だから何で2人とも沢田家を奴良組の傘下にしようとしてるの!?』)
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