転校生


「皆、今日は転校生を紹介するぞ。
イタリアに留学していた獄寺隼人君だ。」


朝礼なう。
いつも通りに起きて、いつも通りに学校に来て、いつも通りに朝礼が行われる…
そう思っていれば、今日はいつもとは違い、転校生が来たようだ。

「ねぇ、カッコよくな〜い?」
「帰国子女だって! すごーい!」

キャーキャーと黄色い声をあげるクラスの女子達に、改めて転校生の獄寺隼人を見る。容姿は悪くないが…はっきり言って不良っぽい。銀髪にネックレス2つ…目付き悪いし服装もだらしがない…。いつか風紀委員にコテンパンにされるのではないだろうか。
そんな事を思っていると…

「(ギロッ…!)」
「ひっ! な、何だ!?」
『(…あれ? 今沢田を睨んだ…?)』

私の気のせいでなければ、獄寺隼人が沢田を睨む。沢田は沢田で顔が青ざめているし…あいつ何かしたのか?
そして、先生が獄寺の席を伝えるも…


「獄寺君。君の席はアソコ…獄寺君?」

ガッ!!

「うわぁっ!!」


沢田のことが気にくわないのだろう…
沢田の机を軽く蹴って、先生に指示された席に座る獄寺。一方、沢田と沢田の周りの男子達は「お前、あいつの知り合いか?」「知らないよ!」「あいつ絶対不良だぜ!」などとコソコソ話をしている。
ちなみに女子は「そこがいい!」「しびれるわ〜!」「ファンクラブ結成ね!」とか言っているが…

『意味が分からない…』
「私としては急に変な事を言うアンタのが意味分からないわ。」
『…私は私のことを以心伝心で理解出来ない花ちゃんのことが意味分からないわ。』
「私は以心伝心とか馬鹿な事を言うアンタの脳味噌の方が理解出来ないわ。」
『私は…』
「おーい、奴良ぁ、黒川ぁ、黙らんか。」
『「すいませーん。」』

先生に不本意にも注意されて黙る私達。
そしてようやく朝礼が終わり、いつも通りに今日も授業が行われる。
1限、2限、3限と…刻々と時間は過ぎて行き、昼休みになるのはあっという間である。これまたいつも通りに教室でご飯を花ちゃんと京子ちゃんの3人で食べ、次の移動教室のために理科室へと移動するのだがー

『あ、しまった…
忘れ物したから先に教室行ってて!』
「うん! 分かった!」
「本当ドジねー。」
『花ちゃんは一言多い!』

教科書を忘れたため、理科室から教室へと踵を戻す私。

『(もうすぐチャイムが鳴っちゃう…早くしないと。)
……ん?』

教室に戻って教科書をゲットし、再び理科室へと向かおうとすれば…

『あれは…沢田と獄寺?』

窓から見えたのは、怯えた様子の沢田と…煙草を吸っている獄寺だった。つぅか中学でタバコ吸うって…本当に不良じゃん。

『……助けるべきか? いや、でもなぁ…授業始まるしなぁ…ぶっちゃけグランドに出るの面倒だしなぁ…』

どうしたものかと、そう悩んでいればー


ドン! ドドン!!


『…?』


突如グランドから響き渡る大きな音と振動。
何が起こっているんだ、ともう一度窓の外を覗けば…

『…………煙?』
「…嘘ぉ!? 行き止まりっ!?」
『…の中から沢田が出てきた……』

真っ黒で大きな煙が立ちこもるグランド。
そんな煙の中から出てきたのは焦ったような沢田で、立ち塞がる壁に「どうしよう!」と青ざめている。
一体何をやっているんだ…
そう訝しげに見る私だが、黒煙が晴れた次の瞬間、驚きの光景が目に入る。


「これで終わりだ。」
『…はっ!? ダイナマイトぉ!?』


見えたのは…
沢山のダイナマイトを沢田に向かって投げる獄寺隼人の姿だった。


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