友達


沢田に手を引かれて連れていかれた先には、
お決まりの皆がいた。
リボーン、獄寺、山本、了平さん…
それにランボとイーピンに、京子ちゃんとハルちゃん、10年後のフゥ太とかその他諸々。中には私の知らない人もいる。


「10代目! ご無事でしたか!!」

「随分と話長かったな!」

「はひっ 菜也ちゃん大丈夫ですか!? 目が赤いですよ!?」


京子ちゃんとハルちゃんは…何も知らないって言ってたな。この時代で今起きてることも、沢田達がボンゴレマフィアだということも…そして勿論、私が妖怪であることも。


「落ち着いたか? 菜也」

『リボーン……、私…』

「ニッ
どうやら腹は決まったみたいだな。どうする、京子とハルには少し空けて貰うか?」

『…んーん…言うよ。こういうのって、いずれはバレちゃうもんだし。』

「言っとくがオレはバラしてねーぞ。犯人はそこにいるラル・ミルチだ。」

「…いずれは嫌でも話さなくてはならなかったんだ。手間が省けて良かったと思え。」


ラルと呼ばれたその女性は、ばつの悪そうな顔でそう言った。口では開き直ってるけど、顔はちょっと罪悪感を帯びている。


『はい、むしろ感謝しています。多分だけど、私じゃ自分から打ち明けられなかったと思うので…
だから、ありがとうございます。』


ペコッとお辞儀をして、皆に囲まれている沢田のところへ向かった。もう何もかもが整ってるんだ。偶然とは言え、ラルさんのおかげで私の正体を皆に知らせることができた。そして沢田のおかげで、皆に自ら打ち明ける場を貰えた。
…きっと、自分だけじゃ出来なかったと思う。


『…あのっ!』

「……あ! そ、その、ゴメンけど今から大事な話があるからさ! 悪いんだけど京子ちゃんとハルは…」

『ううん、いいよ沢田。気を遣ってくれてありがとう。…でも、2人にも聞いてほしい話なんだ。』


何だろうって不思議そうにする人もいれば、私が何を話すつもりなのか何となく察してる人もいる。取り敢えず、皆こちらを見てるから、もう戻ることはできない。
…あぁ、緊張する。
嫌にバクバクと鳴る心臓が煩わしい。



『もう知ってる人もいるし…知らない人もいると思うけど…、私、皆に今まで隠してることがある。』


(ー 小さい頃より、"妖怪の血を持つこと"と"家がヤクザ者であること"は他言するなと言われてきた。)


『もし言ったら…皆に嫌われるんじゃないかって、拒絶されるんじゃないかって…不安で、こわくて…』


(理由を問えば、
私が"妖怪任侠者"だとバレたら、リクおじさんや凍夜兄ちゃんのように、いじめられるかもしれないー
そう皆から言われてきたのだ。)


『だから言えなかったし、距離も置いてた。
万が一バレて嫌われても傷付かないように、いつも皆と距離を置いてた。壁を立ててたんだ。』


(きっと無意識だったんだと思う…
そして、そうすることで、自分を守っていた。
でもそれはあまりに、寂しかったんだ。)


『皆と一緒にいる筈なのに…勝手に疎外感を感じて、胸も空っぽで…。でも同情されたくないから虚勢はっては、仲のいい皆を1人羨ましいなって見てたり…』


(どこか非凡な沢田達を見て、仲間かなって嬉しくなったりしたけれど…違うことにガッカリもした。
今なら分かる。私も、仲間に入りたかったんだってー…)


『…もうね、自分で自分の首を締めるようなバカな真似止めようと思うんだ。拒絶されたり嫌われたら、それはそれで諦めがつくし。
だから…


……明鏡止水』

「えっ!?」

「わあっ!?」

「……っ、あり? …奴良が消えた…」


畏れを発動して、明鏡止水で姿を消す。
ワアッと驚く皆の反応を見ながら…コッソリと京子ちゃんとハルちゃんの後ろに回った。
そして業を解けば…


「きゃあっ!?」

「は、はひっ! いつここに来たんですか!?」


2人とも驚きのあまり興奮してて、ハルちゃんなんか「マジシャンだったんですね!」って自己完結させてる。マジシャンなんて可愛いモンじゃないんだけどね。


『改めまして。
私、妖怪任侠一家奴良組傘下藤組、奴良菜也は…妖怪と人間の血をひく任侠者でごぜぇます。』

「にんきょーもの?」

「…て、何ですかぁ?」

『せっかく今カッコつけて自己紹介したのに?』


京子ちゃんとハルちゃんは容赦がない。
そして沢田達はやっぱり知ってたからか、さほど驚いてない。強いて言うなら、獄寺はなんかソワソワしてるし、了平さんはちんぷんかんぷんなようだ。


『つまりね、私のお家はヤクザなの。』

「「ヤクザ!?」」

『そう、ヤクザ。でも人間のヤクザとは違ってて…
妖怪のヤクザ。』

「「よーかい!?」」

『そう、妖怪。昔ね、ぬらりひょんっていう妖怪と人間が結婚して…そのひ孫が私なの。だから、妖怪の血を8分の1引き継いでるの。』


なんだろう…この感じ。まるで幼稚園児に丁寧に説明する保育園の先生みたいな気分だ。そんなことを思ってたら了平さんが、ぬらりひょんとは何の妖怪だ、と聞いてきた。
だからその質問に答えようとしたのだけれど…


「この芝生頭! てめぇそんなことも知らねぇのか! ぬらりひょんは妖怪の総大将と言われてる有名な妖怪なんだぞ!!」

「なぬっ!? そうなのか奴良!!」

『まぁ…そうですけど、何で獄寺がんなこと知ってるのか私は不思議でたまらない。』

「菜也、アイツはオカルト大好き人間だからな。気を付けろ。」


忠告をくれたリボーンのおかげで、納得。
時々いるんだよね、あーゆーの。リクおじさんの知り合いにも妖怪博士の清継さんがいるしね。
そんなことを考えていれば、扉の開く音が聞こえてきた。


「邪魔するよーん。
…おっ、何々。もしかして菜也カミングアウトしたの?」

『うん、妖怪の血を継いでること言ったよ。』

「そかそか。じゃあここでオレからもサプラ〜イズ! 菜也の従兄であるオレは、人間の血は勿論、妖怪ぬらりひょんと雪女の血を継いでるんだぜ。ほら。」

「わぁ…っ! 雪だ!」

「イケメン雪男さんなのですか!?」

「そうだよ〜。こんなこともできるよ?
let it go〜♪ let it…」

『やめて、こんな狭い部屋で氷の城建てるとか迷惑この上ないから。やめて。』


パキパキと氷ができて部屋が寒い。
でも、その様子を見て、皆は本当に私達が妖怪の血を継いでることに実感が湧いたようだ。


「ハル…妖怪はもっと、デンジャラスなものだと思ってました。」

『デンジャラスな奴も、ホラーな見た目な奴もいるから気を付けなよ。』

「菜也ちゃんはずっと…この事を言えなくて苦しんでたの?」

『…そこまで苦しんでた訳じゃないけど…でも、言いたくても言えなくて悩んではいたかな…』


ハルちゃんも京子ちゃんも、本当優しい。
2人共、まるで自分のことのように悲しそうな顔して言ったんだ。妖怪でも人間でも動物でも何でも、菜也ちゃんは私の友達だって。2人共そう言ってくれて…
それに続いて沢田や山本達も、私のことを"仲間だ"って言ってくれて…

嬉しくて、泣きそうで、


『じゃあ皆…私がゴキブリの姿になっても友達でいてくれる?』


って冗談で言ったら、「ゴキブリにだけは変化しないで」「奴良だって気づく前に殺してしまうかも」なんて返された。
そうやってケラケラと皆で笑ってたら、凍夜兄ちゃんが氷で作ったゴキブリを大量発生させて…


『…アハハッ!
もう…こんなことなら、もっと早くから勇気だしとけば良かった!』

「?」

『そしたらさ、もっと皆と心から一緒に楽しく過ごせたのになぁって。』

「…うん…
でもこれからはもう仲良くできるだろ?」

『…うん…。多分?』

「多分かよっ!!」


凍夜兄ちゃんがリボーンとラルさんに懲らしめられてるのを見ながら、沢田に『ありがとう』って、満面の笑みを浮かべて言ってやった。
意味あり気な笑みでも、貼り付けたような笑みでもない。
家族以外の人と心から笑ったのは、久しぶりだった。



(「ツナ、お前の家庭教師がオレをいじめるんだが。」)

(「こ、こらリボー…げふっ!?」)

(『…凍夜兄ちゃん、沢田のことツナって呼んでんの?』)

(「ん? そうだけど…お前もツナって呼んでみれば?」)

(『……ツナ、大丈夫?』)

(「う、うん…大丈……ぇええっ!? 今何て!?」)

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