この手に掴んだ幸せを(短編) | ナノ

▽ お便り17

【お嬢、今だけプライドを捨ててお父さんに抱きついて「パパ」って言ってください。辛いかもしれませんがお願いします!】

「姉ちゃん…何してるの?」

『(ビクッ)な、何でもないよ…!!』

「…今何か隠したよね。」

『気のせい、気のせ…あっ。』

「…………今証拠隠滅しようとしてたでしょ」

『……すいません。』

「ほら、〈辛いかもしれませんがお願いします〉って書いてるんだから…頑張って。
あ、父さんがちょうど今庭にいるよ。行っといでよ。ボクここでこっそり見守っとくから!」

『見守るな!見らんでよし!!』





『お…お父さん、庭で何してるの?』

「ん? あぁ…この木も大きくなったなぁって思ってな。」

『…これって何の木なの?桜の木ほどじゃないけど、これも結構大きいよね。』

「これか?これは…何だったかなぁ。オレがガキん時…何かの果物を食べて、その種を庭に埋めたんだよ。何の果物か忘れちまったぜ。」

『実がなってるの見たことないけど…』

「ハハッ、オレもだ。肥料とか何もやってなかったしなぁ…手を加えなかったし仕方ねぇよ」

『そっか…』

「おう」

『……………。』

「…………………。」

『…………………………。』

「……おぃ、オレに用があったんじゃねぇのか」

『え、…あ…うん…そうなんだけど…』

「? 何だい?」

『……えっとぉ………(チラッ)』

「d('0' )(頑張って姉ちゃん!)」

「…? 話しにくい事なら場所を変えるか?」

『え…っ、ちょ、……待って!!(ギュッ)』

「!?」

『…パ……パパっ……!』

「……り…鯉菜…?」

『……………』

「……………」

『(あれ…。パパって言ったけど、この後は何言えばいいの!?)』

「(……こいつ…具合でも悪いのか…!?)」

『(てかいつまで抱きつけばいいの!?)』

「(待て…もしかしたら何かを企んでいるかもしれねぇ……いやしかし、具合が悪いのやも…)」

『(ど、どうしよう…何で何も言わないの!?)』

「(何故だ…何で何も話さねぇ…!!)」

『(な、何を、何を言えば…!?)』

「…ぁーっと、…話って何だ?」

『…へっ? と、特にない…』

「…は?」

『ちょ、ちょっと…その…ぱ、ぱぱぱ…パパって…』

「(パが多い…)」

『…(こなクソー!!)ぱ…パパって呼んでみたかっただけですぅーーー!!
さ、さらばじゃ!!ドロン!!』

「……は…? えぇっ!?」





「お帰り姉ちゃん!」

『リクオ〜!!池に飛び込みたいくらい恥ずかしくて熱い!!』

「うん!そう言うと思って氷持ってきてたよ!!ハグが長かったからね!!」

『あ、ありがとう!冷たくて気持ちィけどすぐ溶ける…!!てかどうしよう!!恥ずかしくて顔見せできないよ!!』

「あはは…余程衝撃だったみたいだね。父さんまだ呆然と立ち尽くしてるよ。」

『…ううっ…恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい
私旅に出てくる!!』

「…鴆くん家?」

『牛鬼のところ!!牛鬼のところでクールダウンしてくる!!』

「…消えちゃった、速いな。」

「おう、リクオ…」

「!? 父さん…どうしたの?間抜け顔してるよ」

「今さっき鯉菜が…あの鯉菜がだぞ!!」

「うん」←面倒臭い

「オレに抱き着いて、パパって言ったんだ!!」

「良かったね!」←早く終わらそうとしてる

「最初は、具合が悪いのかとか…何かを企んでいるかもしれねぇって思っちゃいたんだが…」

「ふぅん(信用ないな姉ちゃん)」

「どう思う!?リクオ」

「どうもこうも…良かったね父さん!」

「おう♪…ところで鯉菜は?」

「恥ずかしくて牛鬼の所に逃げてったよ」

「! ククッ…じゃあパパが姫さんのお迎えにでも行くとしようかねぇ」

「…速っ!もう行ったよ…にしても牛鬼も大変だなぁ…。
それじゃぁ、姉に代わって閉幕でーす!」




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