この手に掴んだ幸せを(短編) | ナノ

▽ 大人になったね!

『・・・・・・・・・はぁ。』


どーもー、最近イライラMAXな鯉菜です。今小6です。


『・・・・・・っ・・・』


最近イライラするのは他でもない、何故かお腹が痛むからだ。お腹を壊したわけでも、下痢をしたわけでも、便秘なわけでもない。
変なもの食べた覚えはないのだけど・・・


『お腹痛い、気持ち悪い、頭痛い、イライラする、ダルイ、体が熱い・・・』


熱もないし、風邪をひいたわけでもない。
いったいどうしたんだろうと疑問に思ったまま、取り敢えずトイレに向かう。


『・・・えっ、嘘、ちょっと待って、切れた?まさか切れたの?小6でまだ若いのに・・・ボラギノールの出番来た??』


落ち着け自分! 切れたって・・・その前に私は大をしていないぞ!!だから血が出ることはない・・・はず!!


『・・・! もしやこれって・・・生理?』


体が石のように固まる。
生理だ。100%生理だ。忘れていたこの感覚・・・。様々な痛みが連動して引き起こされるこの感じ、そうだよ、生理じゃないか。


『(前世でも)酷かったのに・・・今回もか。』


しまった、完璧に油断していた。ナプキンはあるけど、生理用ショーツがないから買いに行かなければならない。面倒くさいな。




トイレを出て、取り敢えず台所に向かう。


『あ、いたいた。
お母さん、私ちょっと買い物行ってくる。』


ネギを切るお母さんに後ろから声をかければ、不思議そうな顔をする。


「あら、いいけど・・・何かあったの?」

『生理なったけど、生理用ショーツ持ってないから買いに行く。』


私の言葉に、ネギを切っていた手が止まるお母さん。そして・・・


「生理!? わぁーっおめでとう!! 今日はお祝いにしなくちゃ!!」

『ちょっ!お母さん、包丁持ったまま騒がないでっ!? 怖い怖い!!』

「今日は赤飯ね!」

『いいよ。別に、痛いし嬉しくないからお祝いなんて。それに赤飯嫌いだし。』


だめよお祝いしなくちゃ!と張り切っているお母さんを止めることはもう完璧に不可能だ。


『・・・まぁ・・・買い物行ってくる。』






『結構時間かかったな・・・』

生理用ショーツを数枚買い、痛み止めの薬も買った。
忘れ物は多分ないはずだと思いながら、家の門をくぐる。


『・・・? えらい静かだな。』


いつもだったらお帰りと出迎えやらなんやら来る筈なのに・・・。いつも元気に走り回っている小妖怪達の姿も見えない。


『・・・・・・出入り?』


出入りなんて久しぶりだなと思いながらも、取り敢えず買った物をしまいに行く。


『・・・痛てぇ・・・薬飲もう。』


生理用ショーツも装備したし、今度は痛み止めだ。
自室やトイレ、台所への道を歩くが・・・誰も見かけない。やはり出入りなのだろう。全員が出かける時は出入りがある時だけだ。


『・・・あれ、ご飯出来てるじゃん。』


薬を飲むために台所に向かったが、そこにもやはり誰もいない。しかしご飯を作った形跡がある。
お母さんがここにも居ないとなると・・・ご飯の用意を居間でしているとかかもしれない。


『・・・居間に行くか』


薬を飲み終え、居間に向かう。
すると襖に貼り紙がついているのを見つけた。


『・・・「広間に来てね!」か・・・広間?』


何故に広間・・・出入り後に何か話し合いでもあるのかな。

頭にはてなマークを浮かべながら広間に取り敢えず向かう。


『・・・真っ暗じゃん』


隙間から光が漏れてないのを見る限り、おそらく明かりを付けてない。本当にお母さんはここにいるのだろうか。


『取り敢えず・・・入るか。』


ガラッと戸を開いた瞬間、


「鯉菜様、おめでとうございます!!」

『・・・は?』


急に電気がつき、クラッカーが一斉になる。部屋の中には溢れんばかりの大量の妖怪がいた。しかもご馳走がたくさん並んでいる。


「おめでとさん。いやぁ・・・成長したんだなぁ」


ウンウンと頷きながら、私の肩をポンポン叩くお父さん。・・・まさかっ・・・!?


『お祝いって・・・こんな事で皆でお祝いしなくてもいいでしょお母さん!! 恥ずかしいわっ!!』


生理で皆にお祝いされるとか・・・穴があったら今すぐ入りたい!!


「こんな事じゃないわよ〜! 初めてだからこそ、お祝いする意味があるのよ♪」


にっこーと笑うお母さんにはきっと何を言っても勝てない。


『・・・つぅか・・・お祝いっていうより、お祝いする理由が欲しかっただけでしょ。』


既に好き勝手呑み食いしている妖怪達。お前らもう酔ってるじゃねーか。


「まぁ・・・確かにそれもあるが」

『むしろそれしかないっしょ』

「そんな事ねぇぞ。むしろお前は何でそんなにダルそうなんだ。」

『生理で頭痛いしお腹痛いし気分悪いしダルいし暑いんだよ』

「・・・そうか。お前が最近イライラしていたのは生理のせいだったんだな。皆心配してたぞ?」

『え、そんなにイライラしてた?』

「あぁ、雰囲気からしてイライラしてるのが伝わってきてたぜ」


あぁ、だから皆私を少し遠巻きに見てたのか。話す時もソワソワしてたし・・・申し訳ない!


「いやぁ・・・反抗期が遂に来たのかってオレも不安になってたんだぜ?」

『知らんがな。
でも他の皆には申し訳ないことしたな・・・』

「・・・やっぱお前反抗期だろ。」


生理が始まったのは嫌だけど、
こうやって賑やかで楽しい光景が見れるのなら
生理も悪くないのかもしれない・・・。



(『ただし、初潮に限る。』)
(「これからは鯉菜がイライラしてる時は生理の合図だな。」)
(『・・・・・・・・・。』)




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