この手に掴んだ幸せを(短編) | ナノ

▽ 奴良家への道のり(たつや君side)

今日はボクの6歳の誕生日。
前から欲しかった新しい自転車をパパとママに買ってもらい、沢山漕いで色んな所に行った。


「〜♪」


大好きなアニメの曲を歌いながら、ただただ漕ぐ。最近毎晩のように見る謎の夢に疲れていたのだが…その疲れが一気に吹き飛ぶようで気持ちがいい。


「…にしても、何の夢なんだろう」


毎晩見るのに、何故か起きたら全くと言って覚えてないのだ。何か…とても大事なことのように感じるのだが、思い出せなくてもどかしい。


「……ッ…?」


突如襲ってきた激しい頭痛に、慌てて自転車を止めて様子を見る。辺りには人が全くおらず、田舎の公園にただ一人佇むボク。
 

「…うっ…」


徐々に激しくなっていく痛みに…意識が朦朧とし始める。そして次の瞬間、頭の中に一気に流れ始める映像。


「うわあああああああああああぁっっっ!!!!」


脳裏に映ったのは…
夢で見ていたものと全く同じ光景だった。
一生懸命、教育免許を取るために勉強する男…
その男を囲む制服姿の男女…
数学を教える男…
胸に刀が突き刺さった男…

そしてー


「…ぬ…ら…?」


涙を流している…妖怪の血を持つ女の子。



行かなければならないー


「会いにいかねぇと…っ」


きっと変に真面目なアイツの事だ。
オレを殺したことを…気に病んでいるかもしれない。
新しい自転車に跨り、再び漕ぎ始める。
向かう先は…今の家。家に着き、慌ててパソコンに電源を入れて検索すればー


「…〈浮世絵町〉…あった…!!」


出てきた浮世絵町の情報に、自分が前世と同じ世界にまた生まれたのだと確信する。
あの日からどれくらいの年月が経ったのか…
どうやってここから奴良の元へ行くか…
最初の挨拶は何にしようか…
色々な事を考えに考えて、あっという間に1週間が過ぎようとしていた。

そしてー


「…懐かしいな…」


久しぶりの浮世絵町に、ドキドキとワクワクで心が満ち溢れる。新しいお店が建っているのもあれば、昔からのお店も建ち並んでいるその光景に浮き立つ心。


「えっと…確かこっちだったよな?」


誰に聞くでもなく、地図を見ながら奴良の家へと向かうオレは…はたから見ると家出っ子かもしれない。途中で何回も「迷子?」「おじさんと一緒に来ない?」とか言われた。
だが流石奴良組…!!
寄って来た人に「奴良家ってこっちで合ってますよね?」と聞いた時の反応と言ったら…素晴らしい!
青ざめて逃げる者もいれば、関わりたくないのか頬を引き攣らせる者が多くいた。


「まぁ…ヤクザ者だし仕方ねぇか。
おっ、着いたどぉー!!」


そんなこんなでようやく着いた奴良組の屋敷。
傍に落ちてあった棒でインターホンを鳴らせば、マフラーをした金髪イケ面男が出てきた。


「えっと…こんにちは。
どうしたのかな? ボク…もしかして迷子かい?」

「ううん!
鯉菜お姉ちゃんに会いに来たんだー!!
鯉菜お姉ちゃんはいますか?」

「(鯉菜様のお知り合いか…?)
…ちょっと待っててね、今呼んでくるから。」

「はぁーい!!」


ニコニコとして去っていくイケ面男…確か首無だったか…?
そいつの後ろ姿が見えなくなるのを確認してコッソリ中に入る。


「ガキの知り合いなんかいねぇとか言われて会えなかったら洒落になんねぇわ…」


1人ブツブツ言いながらも、うろ覚えでアイツの部屋へと向かっていれば…前方に奴良姉らしき人物を発見!
イタズラ魂が疼くオレは…大きく息を吸う。
そしてー


「あっ…鯉菜お姉ちゃんだぁー!!」

『…え?』


子供らしく装って再会を果たすオレ達。
この後奴良に叱られることになるが…
そのことをまだ知らないオレは、オレの正体に気付いた時の奴良の反応を楽しみにしていたのだった。




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