この手に掴んだ幸せを(短編) | ナノ

▽ 学校見学(鯉伴side)

「ねぇ鯉伴、鯉菜ちゃんとリクオちゃんの学校に案内しなさいよ」


晴明との戦いが終わり、鯉菜とリクオが再び学校へと通い出した頃…それは起きた。


「いいけど…何か話でもあるのか?」

「別に? ただ学校で何をしてるのか見たいだけよ。ついでに娘の仕事ぶりをね。」


クスッと笑う雪麗さんに苦笑いしながらも、「雪麗さんのお願いなら仕方ねぇ…」と言って案内する。
本当はただ単に氷麗ちゃんがちゃんとやってるのか見たいだけだろう…しかしこの人は素直じゃない。だから遠回しにあんな言い方になるのだ。…そう思うと…鯉菜は雪麗さんに似てるかもしれない。


「着いたぜ、ここが浮世絵中だ。」

「ふぅん…案外綺麗なのね。」

「…えっ!? お母様!?」


校門のところで学校を眺めていれば、こちらに気付いて駆けてきた氷麗ちゃん。そしてどうしてココに居るのかという問いに、「学校見学会だ」と適当に答える。


「氷麗、鯉菜ちゃんとリクオちゃんの元に案内なさい」

「えっ? でも今授業を受けておられ…」

「大丈夫だって! 明鏡止水でなんとかならぁ」


そんなこんなで始まった学校見学…まず最初のターゲットは鯉菜だ。校内に入り、氷麗ちゃんの案内を頼りに鯉菜の元へと向かう。
だがー


『……あ?』

「……およ?」


階段でこれまた偶然にも鉢合わせするオレ達。驚いた顔をしていることから、オレ達がきていたことには気づいていなかったようだ…


「よぉ、何してんだい?」

『…校内見学?』

「奇遇だな。オレ達も学校見学してる途中なんだよ。」

『それは凄い偶然ね。ご一緒してもいいかしら?』

「勿論。かわいこちゃんは大歓迎だぜ?」

「…この親にしてこの子あり…ね。」


普通の親は怒るもんなのよ、と雪麗さんは言うが…むしろオレはよくやったと褒めてやりたい。
『「授業なんざ面倒臭くて適わんわ。」』
そうハモるオレ達に、雪麗さんも首を横に振ってため息を吐く。そして1人加わって新しくなったパーティで、リクオの元へ向かう。


「ここがリクオ様のクラスです」

「ふぅん…あ、リクオちゃんだ。」

「どれどれ…。…普通に授業受けてんな、お前も見習え鯉菜。」

『お父さんこそリクオを見習って仕事終わらしたら?』


そんなことを言いつつも…明鏡止水を使ってリクオに近づくのは忘れない。


「…うわぁ…数字だらけじゃねーか。」

『数学だからね…にしても計算速いねリクオ』

「そう? 普通だと思っ……うをわぁっ!!?」


…ドッキリ大成功!
問題を解くリクオの隣にぬっと現れて囁けば、オレの予想以上に驚くリクオ。


「どうかしたの? 奴良くん」

「いっいえ…何でもないです、アハハハハ」

「そう? じゃあ…
ついでに次の問題解いてくれる?」


これは面白いことになった…。
黒板に書いてある問題を指差す先生に、リクオが返事をして解きに行く。
そしてその黒板までの道をー


「こちら異常なし! どーぞ」

『コチラも異常…むっ!足元に教壇がっ!!』

「なにっ…それはいかん! リクオ、前方の足元注意だ!!」

「(ちょっ…何コレー!?)」


脚を進めるリクオの周りを、チョロチョロと動き回るオレと鯉菜。そんなオレ達にリクオはげんなりとするものの、表立って注意することは出来ない。
明鏡止水…なんていい技なんだ…!!
結局オレ達の邪魔により、リクオは不審な動きをしながらもなんとか問題を解いた。

そして今の授業が終わり、『次は国語を受けに行く』と教室に向かう鯉菜の後を追って…やはりここでも朗読などの邪魔をする。鯉菜が授業を受けてる時は鯉菜を、逆に
サボっている時はリクオの邪魔をして過ごした今日一日は…オレの予想を遥かに超えて楽しかった。
そして最後には、
相変わらずパシられてるリクオとサボリまくりな鯉菜が帰る支度を終えるのを待ち…雪麗さんと氷麗ちゃんと一緒に仲良く皆で帰る。


「鯉菜ちゃんもリクオちゃんも大変ね…鯉伴が親なんて。」

『「全くです。」』

「おいおい…そりゃねーだろ2人共」

「…あれだけ邪魔すればそうなりますよ、二代目」


そんなことを言いながらも歩を進めていれば、奴良組本家に到着する。


「さて、と…これからご飯の支度をしなくちゃね。氷麗、行くわよ」

「はい! お母様!」

『私も微力ながら手伝いまーす』


ご飯を作るという雪麗さんに、氷麗と鯉菜は手伝うと言う。じゃあオレ達は夜ご飯まで話そうか…そう思ったものの、


「あっ! 見つけましたぞ鯉伴様!! いい加減お仕事をして下され!! お前達、やってしまえ!!」

「「へい/はいっ!!」」


運悪く烏天狗に見つかってしまい、仕事部屋へと青と黒に連行される。
そして結局、見張りをつけられて…仕事が終わるまで夕飯が食べられなくなってしまったオレ。そんなオレを邪魔してくれる者は誰一人おらず…今日見たリクオの姿を参考にして、結局黙々と仕事をこなす羽目になったのだった。




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