この手に掴んだ幸せを(短編) | ナノ

▽ 先生と屋上

『……夏になったらどこで食べようかしらねぇ』


そう呟いて、玉子焼きをひょいと口の中に入れる。
今は桜が満開の時期…春だ。
そして皆大好き美味しい昼休みの時間だ。


『春と秋は屋上が最高なんだけど…夏と冬は辛いよな』


ポカポカとよく陽が当たる屋上にて、お弁当を1人で食べているのだが…うん、春なのに少し暑い!
やっぱ日陰がないとキツイな…。
春の陽気にやられた頭で、ボーッとしながらご飯を食べる。
そして私の脳はだいぶやられていたようだー


「奴良〜お前またここで食ってんのか?」


坂本先生が目の前に来るまで全く気付かなかった。
いつ屋上に来たのだろうか…


「まだクラスに馴染めねぇのか?」

『別に…馴染めてないわけじゃありません』

「じゃあ何で1人でこんな所で食べてんだよ」

『…あんまり深く付き合いたくないんですよ。
グループって面倒じゃあないですか。』

「…小学生ん時に何かあったのか?」

『いえ、特に何も。(前世ならあったけど)』

「でもよぉ…どっかに入らねぇとお前いじめられたりしねぇか? てか既にいじめられてる!?」

『まさか!
私はそう簡単にいじめられませんよ…いじめられそうになったら先にいじめます。』

「…イジメはいかんぞ奴良」

『はい先生』


パクパクとお弁当を食べ続ける私の一方、先生は…3分経ったのだろう…カップラーメンの蓋を開けてようやく食べ始める。


「お前さ…もしかしてクラスのヤツ嫌い?」

『嫌いではありませんよ。
でも子供過ぎてついていけません。』

「あれ〜?もしかして大人ぶりたい年頃〜?」

『…ムッ…そう言う先生は年の割に精神年齢低いですよね。あっ、だから彼女できないんですね、ゴメンナサイ。』

「…お前だけ数学の宿題を倍にしてやる」

『えっ』


ズルズルと麺を食べる先生を見て思う。
心配したりからかったり、イジけたり…忙しい人だ。
…あれ…そういえば、


『…私、先生みたいにコロコロ気分が変わる人が面倒で嫌いなんですけど…』

「ええっ!?ちょっ、オレ泣いていい!?」

『最後まで聞けよ。
…本来なら嫌いなタイプだけど、先生は好きですよ』

「…なぁ…奴良」

『はい』

「それ愛の告白?」

『んなわけねぇだろ、うつけ。』

「すいませんでした」


食べては会話…それを何回繰り返しただろうか。ようやく私も先生もだいたい同じくらいに食べ終わる。…つうか先生食べるの早くね?


「お前食べるの遅くね?」

『先生が早すぎるんですよ。ちゃんと味わってますか?』

「味わってるよ、失礼な。
…そういえば奴良、お前確か弟がいるって言ってたよな。浮世絵中に入学するのか?」

『…多分そうですね。
私が今厨二なので…来年に入学してきますよ。
めっちゃ可愛いんですよ、私の弟!!』

「奴良、字が違うように感じたのは気のせいか?」

『…さぁ?
それより弟は少々変わったやつですけど、良い奴なので可愛がってあげてくださいね。…BL的な意味で可愛がるのはやめてください。』

「そうか、じゃあ弟に決して女装してオレの前に現れるなと事前に伝えといてくれ。」

『了解です。しかと伝えます。』


空のお弁当やカップ麺などを互いに片付けて、屋上を去る準備をする。次は数学だ…眠りそう。でも寝たら坂本先生のことだ、きっと当ててくるぞ。
寝ないように気を付けようと気を引き締めて、屋上のドアを開ける。


「来年からはじゃあ…昼ご飯も賑やかになるかもな!」

『…うーん…それは弟次第ですかねぇ?』


氷麗や青達と皆一緒に屋上で食べるかもしれないし、清十字団の皆と部室で食べるかもしれない。
今の時点じゃ何とも言えないな…


「ふーん?
まぁでも…取り敢えずそれまではオレがご相伴にあずかりましょうかねぇ。」

『…相変わらずモノ好きな人ね』


ニタリと笑う先生に、ついプッと笑ってしまう。
どこまでお人好しなんだか…。


『…だからこそ皆に好かれるんでしょうけど』

「何か言ったか?」

『何も。』


リクオが中学にあがるのはとても楽しみだ。
だが、先生とのこのお昼時タイムがなくなるのは…少し残念かもしれない。




(『………』)
(「…奴良、問7解いてみろ〜」)
(『……ぇ…?(寝ていた)』)




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