この手に掴んだ幸せを(短編) | ナノ

▽ ケーキバイキング

「おいしい!!」

「本当美味ぇな」

「ん〜頬がとろけそう〜♪」

「美味しいのう〜」

『美味だわ〜』


はいどうもどうも、皆さんこんにちは!
ただいま奴良家でケーキバイキングに来ております!!きっかけは…おつかいに行ったリクオとお父さんがゲットしてきたチラシ。
そのチラシには《60分1000円☆ケーキ食べ放題》とデカデカと書いてあり…勿論甘党なリクオとお父さんを筆頭に皆で行くことに決まった。


『…にしても皆甘いの好きよね』

「姉ちゃん!そんなに喋ってたら沢山食べれないよ!?」

『リクオよ…沢山食べるのはいいが、その前に味わえ』

「鯉菜!60分しかないんだ!腹に詰め込め!!」

『お父さん…貧乏臭いからそんな発言を大きい声で言わないで恥ずかしい』

「鯉菜ちゃんのそのケーキ美味しそうね〜私もそれ食べようかしら♪」

『ちなみにこれも美味しかったよ!』

「こりゃ鯉菜!お前まだ二個目じゃねぇか…飲み込め!!」

『おじいちゃんこそちゃんと噛んで食べないと、喉に詰まらせて死ぬよ』


何だこの家族…恥ずかしい、恥ずかし過ぎる!!
元値取ろうとするのはいいけどさ!もう少しおしとやかに食べません!?


「リクオ、あ〜ん」

「え、いいよ自分で食べるから!」

『りっ君、あーん♪』


お父さんがリクオにチョコケーキを1口あげようとするが、リクオはそれを断る。そして私がブルーベリーケーキを1口あげたら…小鳥のようにパクッと食べてくれました☆ コノー可愛いやつめ!!


「…オレは負けねぇ! 鯉菜、あ〜ん」

『それさっき食べたから要らない』


またもや断られてショックなお父さんはチラッと横を見るがー


「次はこれとこれと〜悩んじゃ〜う!!」


…残念。


『お母さんはまだケーキ選びのようだ』


もしここにお母さんがいたら、お父さんのあ〜んを素直に受けてただろうなぁ。
…いや、待てよ。


『お父さん、まだあ〜んしてない人ここにいるよ』

「む?」

「……………。」


私がポンッと肩を叩いたのはケーキを貪り食うおじいちゃん。一方のおじいちゃんはケーキに夢中だったようで、なんの話をしているのか分かってない様子。


「…親父…あーん… 」

「………何じゃ気持ち悪い奴じゃのう…あ〜ん」

『んな事言っといて食ってるじゃん!』

「つぅかその父さんの嫌そうな顔!!」


リクオの言う通り、さっきまでの笑顔はどこへ行ったのやら…遠い目をしておじいちゃんにあ〜んをするお父さん。露骨に顔に出し過ぎだぞ。


『…ちなみにお父さん、残りもう5分だからね』

「…………はあっ!?ちょ、オレまだ7個しか食ってねぇぞ!!」

「勝ったね、ボク今9個目だもん」

『リクオぉぉおお!!??』

「ワシは6個目じゃ」

「お母さんは今から4個目に入りまーす♪」


皆すげぇな…
今更だけど、このケーキバイキングのケーキは普通サイズなんだよ。ケーキバイキングでよくあるミニケーキじゃなくて、本当に普通のケーキ屋さんで売ってるケーキと同じサイズなんだよ。
あのサイズのを皆ひょいぱくと食べてんだぞ。


「鯉菜はどうなんだ?」

『えっと…3個食べたかな』


そう答えれば、
お母さんとおじいちゃんが「鯉菜ちゃん甘い物そこまで大好物ってわけじゃないものねー」「そもそもオメーは食べるのが遅いんじゃ」と言うのに対し、お父さんとリクオは…


「たったの…」

「3…個…!?」

「有り得ねぇぞ鯉菜!!おまっ…ケーキバイキングをなめてんのか!!」

「3個って…ボクの3分の1じゃん!!何で!?ダイエットしてるの!?」


グイッと身を乗り出し、私に目の色を変えて質問してくる。…え、何ですかこの…私が悪いことしたかのような空気。散々私を問い詰めるようなことを言い、最終的に…


「「お前っ/姉ちゃん…味覚大丈夫!?」」

『お前らの方がおかしいわ!!!』


…と、お父さん・リクオvs私の〈お前の味覚が変だぜ〉バトルが繰り広げられるのだった。






帰り際
(「うっ…食べ過ぎた…」)
(「気持ち悪い…」)
(『…馬鹿だこの親子』)
(「さて、今日の夕飯は何にしようかしら」)
(「若菜さん、鯖の塩焼きはどうかのぅ?」)
(「そうですね、じゃあ鯖にしましょう♪」)




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