▽ お礼
「鯉菜先輩!
私…あのお坊さんにどうしてもお礼をしたいんです!!今度会わせてくれませんか!?」
…お坊さん?
突如、そう言ってきたのは清十字団の1人である鳥居夏実。晴明との戦いが終わり…久しぶりに学校に登校してみれば鳥居に偶然会った。やぁ久しぶり!なんて爽やかに挨拶した私に、物凄い形相で詰め寄ってきたかと思いきや…鳥居から出てきた言葉が冒頭のセリフ。
…いったい誰のことだ。
「私っ、あの人に千羽様の祠の近くで襲われた時助けられたんです!!地下鉄に閉じ込められた時も…先輩の家で屋根が潰された時も!!いつもあの人が助けてくれたんです!!
だから、お礼をさせて下さい!!」
『あぁ、黒田坊のことか! 勿論いいよ。』
「ほ、本当ですか!? ありがとうございます!」
嬉しそうに頬を染めてお礼を言う鳥居…その姿はまさに…
『恋する乙女だね!!』
「えっ…えええ!!? そ、そんなんじゃないです!!」
ええじゃないかええじゃないか。
私は君たちを応援するぜ☆
『それで、お礼って何をする予定なの?』
「そ、それはー」
「…お嬢、変じゃないですか?」
『変じゃないよ、むしろイケ面でゴチになります』
どうもどうも。皆さんこんにちは。
ただいま土曜の午前10時です!!今私は何をしてるかと言うとー
「か、髪はどうしますか…?」
『髪はねぇ……うん、一つに括った方がエロカッコいいわ!!』
「エロ!? それ結ばない方がいいのでは!?」
『いや、結ぶべきよ。…そして空気を読んで自然に髪を解くんだ!!サラサラっと!!いいね!?』
「拙僧に空気を読むなんて無理です!!」
『黒ならできる!!イエスユーキャン!!』
…そうなんです。私は今黒の現代風デートコーディネートをしています!!鳥居が現代私服なのに、黒が和服なのはちょっと…目立ち過ぎだろ?
かと言って黒に任せっきりだとスーツを着ていきそうだったので、こうして私がコーディネートしてるなう。
『よっし! できたー!!』
「ありがとうございます、鯉菜様! それでは拙僧はそろそろ行って参ります」
『うん!楽しんで来てね♪』
私服を着こなしたイケ面黒田坊を玄関まで見送り、そして小さくガッツポーズ!! 今迄の流れからして言うまでもないかもしれないが…今から黒は鳥居とデートなのだ! デートと言っても、別に二人はまだ付き合っていない。
ただ、鳥居が…
「お礼はもちろんだけど…あの人のこと…もっと知りたいなぁ〜…なんて」
って照れながら言ったらもう…可愛過ぎてひと肌脱ぐしかねぇべ!!
だから
『じゃあ…黒に1日付き合ってもらってさ、感謝の気持ちを伝えればいいんじゃない? そんで仲良くなればゴールはもう直ぐそこだぜ!!』
って親指を立てて言った私はグッジョブだと思う。さぁ、誰か私のことを褒めてくれ!!
そのような流れで現在に至るのだがー
『…ふっ…まだまだこれからだよ!』
向かう先は大きな庭。皆の注目が1番集まりやすい場所だ。そこにドンッと仁王立ちして…大きく息を吸う。
『聴けっ!!皆の者!!
妾は…恋のキューピット・鯉菜りんである!!
この者とこの者の…恋の行方を見守る、重大な役目を果たしきる者はおらぬか!!
もしその役目を果たせる自信があるならば、ここに集え!!』
黒田坊と鳥居の写真を皆が見えるように高く持ち上げ、大きな声で呼びかける。
するとー
ダダダダダダダ……
『…フッ…どうやら決まったようじゃな…。
よくぞ集まってくれた!! それでは、奴良組特攻隊長が一人…黒田坊の恋の行方を見守りにゆくぞ!!』
「「「「「「「ラジャー!!!」」」」」」」
集まった者は主に7名。
鯉伴、烏天狗、青田坊、毛倡妓、氷麗、首無、河童だ。だが実際には、三の口などの小妖怪が結構いる。しかし小さくて多く面倒なため、決して数えることはしない。
『…!! なんてこった!!』
「どうした!?」
ところ変わり駅。鳥居を待つ黒田坊を皆で見守っていれば、ついに鳥居が現れる。
『メッチャ可愛ええやん!!!黒ズルい!!』
「ズルいってお前…レズにでもなるつもりか」
そんな事はない。
だが…女の私からしてもアレは超可愛い!!黒の野郎…羨ましいぜっ!!
「!
お嬢…あの2人、どうやら電車に乗るようですよ」
『なに!?』
「しかももう切符買い終わって…改札通っちゃいましたよ!?」
『…速いっ!!クソッ、私の目でも追えないとは!』
「早くワシらも買って行きましょう!!」
『あぁ! 分かってる!!ぇーっと…7人、イヤ私含めて8人分ね!!』
「…あの2人どこの駅で降りるのかな〜。それを知らないと切符買えないんじゃないですか〜?」
『!!』
河童の言う通りだ…
あの2人の行き先を知らない! ということは切符を買えないではないか!!
「…鯉菜、早速オレ達の出番のようだぜ」
『!! くっ…できれば使いたくなかった!!』
お父さんとアイコンタクトして頷く。
そして大きく息を吸いー
『「明鏡止水〈無賃乗車〉!!」』
(※良い子も悪い子も真似しないでね☆)
『………ここは』
「…水族館…ですな」
電車を降りた黒と鳥居をコッソリつけていれば、水族館に辿り着いた。なるほど…静か過ぎず、煩すぎず、綺麗で楽しめる場所だ…。
『…うむ。なんて素敵なデートプランだ!』
「いいねぇ」
「隊長!!あれを見てくだせェ!!」
「あの女の子…黒の手をとったわ!!」
『なぬぅ!?』
バッと振り返って見れば、そこにはテンション上がった鳥居が黒の手を引っ張ってイルカショーを見に行こうとしているではありませんか!!
鳥居、グッジョブ!!
その後、
イルカショーを黒と鳥居の後ろで皆で満喫し…
マンボウやサメなどを黒と鳥居の後ろで眺め…
お昼ご飯を黒と鳥居の近くでコッソリ食べ…
黒と鳥居を黒と鳥居の後ろで黒と鳥居し…
「隊長最後なんか変です!!」
『…本当だ、いかんいかん』
「お前ぶっちゃけ飽きてきたんだろ…」
遂に、デートに終わりが来た。
「今日は有意義な時間を過ごせた…ありがとう。」
「い、いえ…! こちらこそお忙しい中…わざわざ来てくれてありがとうございます!!黒田坊さん!」
と、鳥居が「黒田坊さん」って…!!
頬を染めて「黒田坊さん」って!!可愛い!!
「そうだ!
これ…作ったので良かったら貰ってくれませんか…?」
「…これは…」
「御守りです…その、安倍晴明との戦いは終わったけれど…奴良組の特攻隊長なんですよね? だから少しでも怪我しないようにって…安全祈願です!!」
「…夏実殿…」
鳥居ぃぃぃぃ!!
アンタはなんていい子なんだぁぁぁあ!!!
…ん? …ちょっと待て…
「ありがとう、確かに特攻隊長なだけあって怪我をする事も多いしな…助かる。肌身離さず持とう…。
ーそうだ夏実殿、家は何処だ? もう逢魔が時だ、危ないから拙僧が家まで送ろう。」
「夏実殿」…!!
「鳥居殿」でも大きな一歩なのに…それをすっ飛ばして「夏実殿」…!!
『…お前ら…帰るぞ』
「えっ、今から家まで送るそうですよ?」
「ついて行かないんですかい?」
『あぁ、もう充分成果は出た。これ以上見守る必要はないだろう。』
「…そうですね!
鳥居さんも凄い幸せそうでしたし♪」
「私たちも帰りましょうか」
そんなわけで…
私のプチ百鬼夜行〈恋のキューピット〉は終わり、皆でニヤニヤしながら帰路についた。
(「ただいま帰りました」)
(『黒!! お帰りなさい、楽しかった?』)
(「えぇ、鳥居殿と水族館に行って参りました。久方ぶりに行ったこともあり大変楽しかったです!」)
(『そう!それは良かった♪(家では鳥居殿…鳥居には夏実殿…!!萌えっ!!)』)
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