この手に掴んだ幸せを(短編) | ナノ

▽ 蛸と変態

『〜♪』

どうもどうもこんばんニャー!
ただ今超ご機嫌な鯉菜ちゃんです。ご機嫌過ぎてノリノリな音楽をハイボリュームで聴いております!!
え? 耳が遠いだけだろって?
ちゃいまんがな…雨が酷くて音が聴こえにくいとです!!


『まさ〜か私が数学のテストを90取るとは!!
こりゃあ明日爆弾が降ってくるぜ!!にょほほほほほほー』


そう、これが私のご機嫌な理由でござる!
いやぁ…私もやる時はやりますなぁなんて自画自賛していればー


『…あーら…誰かしら。
女の子1人に随分と大人数で集るのねぇ…』

「お前が奴良鯉菜だな…」


はい、そうです。私が鯉菜です。


「へぇー結構美人じゃん、俺タイプかもー!」

わぁーありがとう、アンタは私のタイプじゃないけど!

「こいつが治癒の力を持つ者か」

お前の怪我は治さねぇど☆

「こいつとヤったら不老不死になるんだろ?」

それは違う。

「………………。」

何か言えよ!!


取り敢えず…


『売られた喧嘩は高値で買取らせていただきまーす!』


人間に負けるほどオイラァ弱くねぇど!!
というわけで…雨に濡れるけど番傘を閉じ、ソレで殴って蹴って大暴れ。あっという間に4人の男が地べたとキッス。


『ん、アンタはいいのー?
相手してやらんでもないけど?』


私が声を掛けたのは、先程何も言わなかった男。殴りかかるわけでもなく、ただずっとボーッと突っ立っている。
…あれ? コイツ、もしかして…。


『……君、本当に人間…?』


私の言葉にピクリと反応する男。
だが、反応しただけで一言も言葉を発さない。警戒心MAXで男を見ていれば…


「キュー」

『……蛸…?』


後ろから聴こえた音に振り返ると、そこにあったのは蛸。
雨だからここまで歩いてきたのか?
蛸を見つめる私の脳内には既に男の事が消えており、そして、目の前に落ちる大きな影に…
ようやく男の存在を思い出した。


『…!? な、に…っ』 


振り向けば大きな巨体。
逃げるにも、抜刀するにも間に合わず… 


        バフッ!!


大人しく食われるしかなかった。





ーーーーーーーーーー



『んぅ…毛倡妓ぉ〜…擽ったいよぉ…』


今日は毛倡妓か。
私がなかなか起きないと、毛倡妓は時々私を襲っ…ゲフンゲフン、擽ってくるのだ。


『分かったからぁ…もう起き…ふぐっ!?』


突如口に入ってきた謎の物体。
気持ち悪いソレについ反射で噛んでしまえば…


「ぎゃぁぁぁああ!! イッテェェェェ!!」

『オエッ…!?』 


口からズルッと抜ける変な物…謎の奇声…。
声のした方を見ると…人間の体に、背中から出ている8本の足。


『…蛸…人間…?』

「誰が蛸人間じゃ!!ワシぁ蛸と人間の半妖じゃわい!!」

『じゃあ蛸人間で合ってるじゃん。』

「…ホンマじゃ。」


びっくりしたようにこっちを見てるけど、私の方がびっくりだわ!! 何だお前は!!


「ワシが産まれてもう600年は経った…
幾度も幾度も、惚れた女に愛の言葉を囁けども…この姿を見てはふられた」


…その姿じゃぁ…うん、ご愁傷様です。
いくら外見的に若くてもねぇ? そんな気持ち悪い蛸足を背中からヌルヌル出してきたら…愛が深い人じゃないと嫌がられるだろうねぇ。
 

「ワシももう長くはない…
だが子孫を残さないことには、死んでも死にきれぬ!!
しかもお主は噂によると…治癒の力を持つ女子だと言うではないか。お主の血肉を喰えば不老不死に…お主と交われば子孫繁え…」 

『しねーから!!喰っても交わっても何も起こらねーから!!ただの戯れ言だから!!』

「なぬぅ!?」


なぬぅじゃねーよバカヤロー!


「ぬぅ〜…しかし、万が一ということもある!!
ワシの子を孕んで貰うぞ娘ぇぇえ!!!」

『わ、わわわ私エイズぅぅぅぅ!!
エイズですけどいいんですかぁぁぁ!!?(嘘)』

「? …えいず?
…何だそれは。知らんからよい!」

『良くねぇぇええええ
保健体育勉強しやがれこのエロジジィぃぃぃ!!!』


私の必死の説得も虚しく…8本の足がこっちに目掛けて来る。なんとかそれをぶった斬る、が…


   ニョキニョキニョキ
 

『生えたァァァ!!
物凄いスピードで生えたァァァ!!』


なにこれ勝ち目なくね!? 刀でいくら足をぶった斬っても直ぐ生えてくるし…足の数多いし!!
燃やしてみるか…っ
一か八かで杯を取り出し、明鏡止水〈桜〉をしようとするが、
 

「させんぞ…小娘!」

『…ぁッ!?』


目の前に降りかかるのは黒い液体…墨だ。


『くっそ…!』


目に入った墨が取れない…つぅか痛い!
目が開けられないほど痛いけど、目を開けても真っ暗で見えない!!
あぁ…失明した人ってこんな感じなのかな。それとも逆に真っ白なんかな…。
なんて違うこと考えていれば、勿論スキが出来る訳でー
 

『アダぁっ!! てんめぇ……!?』


あっという間に足を取られ、ビターンと痛々しい音を立てて床に倒れる私。慌てて立とうとするも、これまたあっという間に手足を縛られる。
そうでした…こいつ足が8本もあるんでした。


『ちょっ…ちょっと! どこまさぐってんのよ!!』


私の警戒信号が青から黄色に変わる。


「…危ない娘っ子じゃなぁ、せっかくの美脚が台無しじゃぞ。」

『あっ! ちょ、返しなさい!!』


太股に隠し持っていた銃をこれみよがしにプラプラと見せてくる。次いでー


『やめっ…!』

「…鉄扇まで隠し持ってるとはのぅ…用心深い娘じゃ。」


胸元に隠しておいた扇まで取られてしまった。
刀も遠くに落ちてあるし…もう駄目かもしれない。


「こんなに若く可愛い娘を嫁にできるとは…幸運な限りだわい!」

『な、何でヌメってるの!? キモイ!!』

「濡れておいた方が痛くなかろう?」

『発言もキモイ!!』


ヌルヌルとした蛸足が次々と服の下を潜り、全身を這いずり回る。もちろん、警戒信号は黄色ではなく赤だ。


『…ッ』

「…何じゃお主…もしや不感症か?」


しばらくして、そう口を開いた爺。
…ちげぇよ!!
ちなみにその誤解を与えるような言い方やめてくんない!?まだ入ってないからね!? 前戯段階だからね!? 詳しくは描写しねぇけど!!


「鳴かぬなら鳴かせてみせよう…ホトトギス」


ホトトギスじゃないから! 諦めろこの変態蛸!!
ゾクゾクと襲いかかる感覚に、絶対に声出さねぇと一人誓って唇を噛む。
…つぅか何で誰も助け来ないの!?
1人くらい来てもよくない!? もうこの際奴良組じゃなくてもいいから誰かヘルプミー!!


「…ふむ…作戦変更じゃ。
鳴かぬなら鳴くまで待とう、にしようかの!」

『待て。言動と行動が真逆になってるぞ。』


待つって言ったよね。
じゃあ何で現在進行形で脱いでんの? 日本語分かんないの? 馬鹿なの?


「む? お主が鳴くのを突いて気長に待つつもりじゃが?」

『すいません。
ここpassないんで発言には注意してくれませんか。』

「ワシには関係ないことじゃ」

『コイツうっぜぇぇぇえええ!!!』


警戒信号に遂にサイレン機能まで加わり、頭の中は赤一色と煩いサイレン音でいっぱいになる。


『…〜ッ』

「どおした?
何をそんな震えておる…恐れずともワシに身を任せときゃあ直ぐによくなる」

『…ふっ…ぅ…もし…』

「むっ?」


私の言葉に耳を貸す変態蛸…だが、私はお前に話しかけてるんじゃない。




『もしっ…
もしこのまま私がこの変態糞蛸ジジイに犯されたら…!! 私、全国の百鬼の協力を得て…奴良組を潰しにかかるからな!!! 花開院にも協力してもらうからな!!
私を助けに来なかったことを…! 死ぬ程後悔させてやっからなぁーーー!!! 特にリクオとお父さんとおじいちゃんには死ぬまで嫌がらせしてやるんだからーーー!!!』




届け、この声!!
ぶっちゃけ諦めモード全開だが、お腹に力を込めて思いっきり大きな声を出して叫ぶ。
するとー


「かかか! そりゃあおっかねぇなぁ…」

「鯉菜が言うと…冗談に聴こえねぇのが怖ぇな」

「姉貴の嫌がらせも怖そうだな…」


目は墨で見えないが…聞き慣れた声に安心して涙が出る。


「な、何奴じゃー!?」


突如現れた3人に、慌てふためく蛸人間。


「何奴かじゃと? 初代ぬらりひょん様じゃ!」

「そこの娘のパパで…二代目奴良鯉伴だ!」 

「現奴良組総大将の奴良リクオだ!!
姉貴は返してもらうぜ、タコ野郎!!」


あっという間に足を斬り落とし、本体を消滅させる3人。乱れた服と息を整えながら、こちらに来る3人に…いつからいたのかを尋ねる。
1番最初に答えたのはおじいちゃんでー


「『コイツうっぜぇぇぇえええ』ってお前が叫んだところからじゃ!」 


…ふーん…? つまりは直前ってことか。
ーこれは100%嘘だな。


『…本当はいつからなの? お父さん』

「……た、タコ野郎が作戦変更したところからかねぇ?」

『へぇ…そう。
…オカシイなぁ…どうして皆、目ェ合わせないのかなぁ。ねぇリクオ?
リクオは正直者だから…もう1回聞くわね?
本当は…い・つ・か・ら…居たの?』


ギリギリとリクオの手を握りながら問えば、冷や汗を流しながら…


「『どこまさぐってんのよ』…からです。」 

『…それ…結構最初の方よねぇ?
…おじいちゃん、お父さん? 何処に行くの? ちゃんと説明してもらいましょうか…』


ニコニコと笑う私とは逆に、リクオやお父さん、おじいちゃんの顔は真っ青で…頬が引き攣っている。


『何でもっと早く助け出してくれなかったのかなぁ? おじいちゃん』

「…お前がどこまでやれるかと思って、のぅ…」

『あっそう、上っ面の回答どうも。
リクオは?』

「………つ、つい見入ってた。悪い。」

『…思春期だからねぇ…今回は許すが次はもぐ!』

「何を!?」


さてと…最後は、汗を滝のように流してる怪しい男だねぇ。


『…それで、お父さんは?』

「………ど、どんな……」 

『どんな?』

「……ど、どんな声で鳴くのかなって興味が湧きました☆
てへぺろっ♪」

『…フフ…
助けてくれたお礼に…お父さんを鳴かせてあげるわね!』

「えっ………ぎゃぁあああああああああ!!!!」



この後、何とか無事帰宅した4人を出迎えた奴良組だが…
ヌメヌメな鯉菜、顔色が物凄く悪く…鯉菜に怯えた初代と三代目、そして…ボロボロになった二代目、
気まずい空気が流れている4人に…誰も何があったのか問えなかったというー。





(「な、なぁ姉貴…」)
(『なあに、変態』)

(「そ、そうじゃ鯉菜! 美味しい菓子…」)
(『気安く名を呼ばないで、色ボケ爺。』)

(「り…鯉菜、明日…」)
(『気安く触らないでくれるかしら、このド色ボケ変態。』)
(「オレだけ1番酷くね!?」)




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