この手に掴んだ幸せを(短編) | ナノ

▽ どっちもどっち

「もしリクオ様と鯉菜様が戦ったらどちらの方が強ぇと思う?」


キッカケは些細なもしも話だった。
小妖怪らがそんな会話をし、「やっぱリクオ様だろ!」「いや、鯉菜様の方が意外と勝つのでは!?」なんて盛り上がっていたのは知っていた。
知っていたのだがー


「…フッ、やっぱオレの方が多いな(ボソッ)」


夜リクオが鼻で笑い、カッコつけて酒を飲んでいるのを見たら…プチイラしてしまったのだよ。
そしてついー


『…祢々切丸に頼り過ぎな気もするけどね(ボソッ)』


言い返した私も大人気ないのは百も承知!!
だが、大人気ないのは私だけでなく…リクオもそうであり、


「…誰が祢々切丸に頼り過ぎだって?」

『……私は妖刀なんて使ってないし』

「…姉貴は鬼纏出来ねぇじゃねーか」

『…出来ないんじゃなくて、しないんだよ』

「そんなの出来ねぇ事への言い訳だろ?」

『はぁ? 逆に…鬼纏や祢々切丸がない時のリクオはどうなのよ』

「…どういう意味だよ」

『私はオリジナル技をいくつか持ってっけど、アンタは大丈夫なのかってことよ。…戦えんの?』

「…試してみるか?」

『上等よ…』


…だなんて短気姉弟の喧嘩が勃発し、
そして現在…


「オルルァァァァァァ!!!!」

『おっせー!! 蚊が止まって見えるぜ!!
スキありぃぃぃぃ!!』

「しゃらくせー!! 赤子に蹴られたような軽さだなぁぁ!!?」


絶賛バトル中である。
互いに持つのは普通の真剣であり、鬼纏や鬼襲など一切しない…ガチな真剣勝負である。リクオは攻めの畏バージョンになっているが、私は普通に夜の姿で戦っている。ぬらりひょんの特技が使えなくなるからね…攻めの畏だと。


「考え事か!? 随分と余裕じゃねーか!!
明鏡止水〈斬〉!!」

『…おっと、それならこっちは…
明鏡止水〈花ふぶき〉!!』


ちなみに場所は奴良組本家の庭…
よって、


「ひぃぃぃぃっっ!!!!」

「じ、地面がっ…!!」

「おいっ!? 花びらがコッチにまでとんできてるぞ!?」

「にっ逃げろぉぉぉ!!!!」


徐々に広がる被害に、大きくなる数々の悲鳴。
それらを全てガン無視して尚も戦い続けること10分…


『アンタなんかキザで、でも時々お父さんみたいな軽い感じの性格になって…キャラブレブレじゃん!! 明鏡止水〈桜火龍〉!!』

「それ言うなら姉貴だってそーだろ!!かなりの気分屋で、その時の気分で性格がコロコロ変わってんじゃねーか!!明鏡止水〈桜〉!!」


河童もお手上げな火の燃え上がり具合の中…20分経過…


「いざとなったら、嫌なことを嫌ってハッキリ断れねぇくせに!!」

『アンタなんか、ずっとパシリで腹黒なくせに!!』


そして30分経過し、何度目かわからないが…
再び私とリクオの刀がぶつかる時ー



ガキィィィィィィィン!!



「んなっ!?」

『…げっ………』



間に入って来たのはお父さんとおじいちゃんで…
私の刀はお父さんが、リクオの刀はおじいちゃんが受け止める。
これはー まずい。
キレてはないが…怒っている、かも。


「てめぇら…いい加減にしろよ」

「ここを焼け野原にでもするつもりか?」


前言撤回。
激おこでいらっしゃる…!!


「下らねぇことで喧嘩しやがって…ちっとは周りの迷惑も考えろ!!」

「…ジジイだってたまに親父と喧嘩し…イッテェ!!?」


口ごたえして拳骨を貰うリクオを見て内心ほくそ笑む。ふっ…ザマァ!!


「…お前もだぞ鯉菜」


ニヤニヤとしていれば、ゴンっという音と共にやって来た痛み。それを涙目になってさすっていれば、「フッ…」とザマァ顔でこちらを見るリクオ。そんなリクオに「聞いとるのか!?」と第二の鉄槌をおろすおじいちゃん。
…ザマァとは思うけど、ザマァ顔はしない!!
したらまた拳骨が降ってきそうだっ!!
そんなことを考えていれば、お父さんとおじいちゃんの説教が始まった。


「強いってのは、戦うことが全てじゃねぇぞ」

「戦い方ってのは各自の自由だろ…だから周りと見比べんな」

「それぞれが得意なことに特化すればいいだけだ」

「性格についても、短所ばかりじゃなくて長所を探せ」


リクオと並んで正座し、お父さんとおじいちゃんの話をひたすら聞き続ける。だが流石年寄り…両者とも各自の昔の話をし始めて、「ワシの方がカッコ良かった」「オレの方がモテてた」と口喧嘩を始め出す2人。終いには真剣を構えてバトルを始めるので、今度は私とリクオが2人を止めることとなる…。





(「姉貴…一時休戦だ」)
(『そうね…まずはあの親子を止めよう』)




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